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沙里
2025-11-23 20:00:00
1926文字
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なまえをよぶよ
綱紀の呼び方の話(11/23~24 サガパラ4展示)
「あの~
……
前々から思てたこと聞いてもいいですか?」
旅の合間の休息の時間。
優雅にお座りあらせられる闇の王さんに挙手を向ける。
「なんだ」
それぞれが思い思いに過ごしているので、いま自分らの周りには誰もおらん。ある種のツッコミ不在ではあるが、まぁそれはええとしよう。
「もしかして、王さんは自分のこと『御堂綱紀』やと思てません?」
自分の問いに、闇の王さんは首を傾げた。
……
かわいいな。
「違ったか?」
「ええと、違うわけやなくてですね
……
なんて説明したらええかな
……
」
うーんうーんと考え込む。闇の王さんは、王というだけあって頭が悪いわけではない。ただ、人間の常識の範囲外にいるので、時々すれ違いのような会話が発生するだけなんや。それがややこしいんですけど?
「ええとですね、自分の名前って『綱紀』のほうなんですね?」
表情の変化が乏しい相手を前にしていると、自分が正解を喋っているのかどうかが不安になる。いまがそれや。
「王さんは『御堂綱紀』やと思てますよね?」
そう、この王様はフルネームを個人名だと思っている気がするのだ。
確かに自己紹介をした時は当然のように「御堂綱紀」と名乗った。それが礼儀やし、そういうものやろうと。だが、いくらかの時を接していて思ったのだが、彼らにはセカンドネームや苗字という概念がないようで。なので、名前を呼ばれる時は常に「御堂綱紀」とフルネーム呼びされてしまう。別に悪いことやない
……
とは思うが、どうにも慣れ親しまない響きだ。名前欄に書く時ならまだしも、フルネームで呼ばれることなど、あまりあることではない。だいたいは苗字やし、両親や友達は名前で呼ぶ。フルネームで呼ぶんは、病院か怒髪天になった先生の呼び出しか? どっちにしろロクなもんやないので、やめてもらいのが本音だ。
「
……
何か違うのか?」
「やっぱり
……
」
しかしこの感覚を説明するのは難しい。少なくとも自分はそういう苗字と名前という文化圏で生きているから、そういうものだと思っている。だが、彼の世界は少なくともそういう文化圏ではない。
「ええと、自分の『御堂』は家の名前なんです。自分を識別する名前とは別。わかります?」
どうにもピンと来てなさそうな気はする。顔を見ても表情の変化に乏しいので、まったくわからん。クールなポーカーフェイスやのうて、表情筋がサボっとるんやないか?
「『戦士団』が自分の『御堂』で『伯爵』が『綱紀』の部分ですね」
ぽん、と手を打った。理解してもらえたらしい。っていうかそんなマンガみたいなリアクションするんや、この王様。
「そういうわけで、できることならどっちかに絞って呼んでもらえるとありがたいんですが」
毎回フルネームで名前を連呼されるのも、不便だと思うんよ。戦闘中とかの緊急時なんかは特に。
「どちらでも良いのか?」
「そうですね、どっちでも構いませんよ。同じ名前がおるわけやないですし」
ふむ、としばし考え込む王様。どんなポーズを取っていても、どんなに変なポーズであっても絵になる。いや、変なポーズ取ってるのはまだ見たことないけど。
目が合った。不思議な力を使わなくとも魅了されそうな気持ちもわからんでもない。
「ならば、綱紀」
思ったよりも優しい声色で呼ばれると、なんだか非常に照れ臭くなった。照れ? いや、羞恥心に近い。顔の造形が良い人間に微笑まれると、それだけでかなりの威力があると知った。たまにテレビ番組でイケメン俳優が語り掛ける企画があるが、なるほどこういう需要なんやね、知りたくなかったわ。
「ちょ、っと待ってもろてええですか? なんでそんな破壊力あるんです? 王様やからですか?」
「何を言っているのかわからんが」
「わからんでええんです。わからんといてください」
そのままの君でいて。そんなCMのキャッチコピーを思い出す。思い出さんでええんよ。
自分の耳が慣れるまで、三日ほどかかったことは、とりあえず忘れといて。
「ツナノリさん」
ガッショガッショと派手めな音を出している歌姫さんが名前を呼ぶ。
そう、名前だ。
「どうかしましたか?」
「
……
いや。メカの皆さんは普通に名前で呼ぶなぁ思て
……
」
「登録名に間違いがありましたか?」
「ああいや、合っとるよ」
なんだか、自分だけが無駄に恥をかいた気がする。気のせいやないとも思う。自分が勝手に大騒ぎしただけとか言われたら、穴を掘って埋まるしかあらへん。
「私にはよくわかりませんが、元気を出してください」
「
……
ありがとうなぁ」
思わず抱きしめたくなったが、物騒な武器がついているのでやめておいた。
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