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望月 鏡翠
2025-11-21 01:36:22
1141文字
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日課
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#1911 ジョアンの耐えがたい主人について
#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作
リュネストの居城は、海を背負う場所に立っている。
この地の貴族は、今でも防衛に優れた場所に居を構える。動乱の歴史がそうさせる。
バンデイアの地は柔らかい鉄だ。戦果は幾度もこの地を焼き、打ち付け、不純物を叩き出しながら、その勢力図を変えてきた。短い安寧を手に擦ることがあっても、流れる血の臭いが消えたことはない。
リュネスト家が海の見える場所に居を構えるのは、その出自を物語る。
バンデイアの諸侯を相手にするとき、海とは背中を預けるべき堅牢な壁なのだ。そこは、外界が敵が攻めてくる場所ではなく増援のために開かれた道である。
レシーは、血で血を洗う戦を繰り返す野蛮人たちとは違い、正統なる貴族の血筋である。その分家たるリュネストに名を連ねるものには、相応の格が求められる。
それなのに、この海を望む美しい館は、王位継承戦を前にして屋敷の主人が平民をいただくという由々しき事態を迎えていた。
バンデイアはレシーにとってはあくまで属領である。手中に収めたいと望んでも、そのために自らの血を流したいなどとは思わない。血生臭い戦いや政治的なやり取りに、現地に詳しく口のよく回る平民を身代わりに立てるというのは、賢く合理的な判断だ。
それに異論を唱えるつもりはない。
それでも、実際にその男を主人として遜らなければならないのは、腑が煮えくり変える心持ちがするものだ。
ジョアン・リュネストは、リュネスト家の正統な血筋である。力ある貴族や王族は、その使用人も並々ならぬ家柄から選ばれる。彼もまた直系の血筋ではないが、分家の五男に生まれた。今は家令として、リュネスト家の一切を取り仕切っていた。
今、リュネスト家を動かしているのはトルガ・ミノーフィッシュという男である。元は、この街を出入りしていた商人にすぎない。その前はどこで何をしていたのか、わかったものではない。レシーから渡ってきたことだけは記録からわかっている。ミノーフィッシュの名を持つからには、どこかの貴族の血筋なのかもしれないが、自称することもできる。
どこの馬の骨だか、わからない男だ。
そんな人間が、貴族の社会でやっていくことができるわけがない。
今の役職は家令だが、家の格式を保つために野良犬に最低限の礼儀作法と貴族社会での立ち居振る舞いを教え込むための教育係でもある。
リュネスト内の家督争いから完全に外された立場であり、完全なるはずれくじだ。しかし、もしトルガという男が守備よく玉座をとったなら、このはずれくじは黄金になる。
平民は玉座にふさわしくはない。その後を継ぐなら、彼の人脈を知りその動きを間近で見ていた人間が最も相応しい。
バンデイアの玉座を、ジョアンが取ることになるのだ。
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