「ラララ様、はい
…終わりました、とてもお綺麗ですよ」
化粧台からようやく解放されたのは煌びやかなウェディングドレスを着せられたラララだった
「ハァー
…やっとデスカって
…とっても動きにくい服デスネ」
「似合ってるからいいんじゃないの、それよりレオンの方も終わったって」
その横ではラララの衣装を手伝ったアニェラが慰めにもならない言葉を発しながらボーとしていた
「全く
…本当にめんどい事に巻き込まれタナ
……」
それは数刻前に精霊王の(わがまま)願いを引き受けた結果だった
数時間前
「レオン様、ラララ様ようこそシンフォニアへ」
フードを被ったスフィーの案内で始まったシンフォニアの観光、来てしまったのはしょうがないソレなりに楽しませて貰おうと足を歩んだ
しかし歓迎したのはスフィーだけではなかったようでその後ろには、綺麗な白髪の男が、立っていた。
その瞳は湖面のように静かで、しかし底が読めない。
「やぁ!レオン、ラララわたくしは精霊王」
スフィーは顔色を変えては無かったがどこか疲れた表情をしながら口を開く
「すみませんついて行くと聞かなくて、この方は精霊王、この世界の精霊を治める方です」
「わぁおスフィー紹介、感謝するぞ
……さて、レオン、ラララ」
精霊王は、にこりと満面の笑顔で二人に歩み寄った、風もないのに衣が揺れ、周囲の精霊たちがざわめく
「突然で恐縮だが
……どうか、我が国の“精霊婚”の儀に、参加していただけないだろうか」
レオンとラララは揃って固まり
スフィーは驚いていた
「何を?精霊王様この方達はジュピター様のお客様です、そんなこと
…」
どうやらスフィーは何も知らないようで精霊王の独断の行動らしい
ラララは眉を寄せた
「どうして私タチがソレを
……?」
精霊王はあっけらかんと言った感じで
「
——理由は二つ。
ひとつは、そなた達が“外界の加護”を持つ稀有な存在であるためだ、精霊の結びを安定させるため、外の気を借りたい」
「
……そして、もうひとつは?」
レオンが一歩前に出ると、精霊王はは微笑む
「相手がいないのだ」
「は?」
スフィーがため息をついた
「精霊婚は二柱の精霊が結ばれる儀式
……片方が突然、行方不明になったらしくて。代わりの新郎新婦を探してる最中に、お二人がちょうど来たから精霊王様としては
…その巻き込んでしまおうと
……」
「あぁもちろんジュピター様から許可も頂いているぞ♡この2人の結婚式してもいいーよっていう許可を」
「え」
ラララとレオンは同時に精霊王視線を向けたが
当の本人は口笛を吹きながら目を逸らすだけ
「
……そして“客人として参加”って言葉の意味」
「
……まさか」
「多分
…考えてる事で合ってると
…思われます」
精霊王は満面の笑みで
「安心してほしいぞ!儀式は形式だけだ。実際に婚姻関係になるわけではない。ただ、衣装を着て、手を取り、祝詞を捧げるだけだ」
ラララは叫んだ。
「それが一番めんどいんデスヨ!!」
レオンの表情はわからないがどこか諦めたのか
「
……断れない空気作りましたねこの王様
……」
と言って精霊王と共にその場所を後にする
「まぁ♡恋人のイチャコラする姿見たいって気持ちもあったり??〜」
「ソレが大きな狙いなのでは
…」
…そして、そんなこんなで始まった結婚式
重い足を動かし扉を開けるとそこにはふわりとファーに包まれ純白のタキシードに身を包んだレオンがいた
「へぇ〜?ずいぶんめかし込みましネ?馬子にも衣装というヤツですカ」
「わーラララさんは似合いますよ?ほらココとか♡」
「ハァッ!????ドコ触ってやがるんデスカ!!!」
レオンはラララの服の中に手を入れている
急なセクハラをするあたり格好は違えどレオンのようだった
スフィーはアニェラの目を手で隠しつつ
「なんで隠すの
…」
「
…秘密です
…」
恋人の戯れを微笑ましく思っていると精霊王もちょうど来たようで
精霊王は胸の前で手を叩いた。
「ほほー!やはり恋人のウェディング姿は良いものだ〜♡
…ゴホンッ
…では!花婿、花嫁、式場へ向かおうではないか!」
レオンはラララの腰に手を回したまま、涼しい顔で言う。
「さ、行きましょう。逃げてもいいですけど、追いかけますからね」
「ハッ
…ここまできて引きませんヨ、レオンサンこそ」
ラララ達は売り言葉に買い言葉をしながら一歩ずつ歩く
扉の向こうからは、無数の光の精霊が舞い踊り、風鈴のような澄んだ音が鳴っていた。
レオンが小声で囁く
「ラララさん、緊張してます?」
「冗談キツいデスよ、それよりもサッサとこの行事を終わらせまショウ」
「緊張してるなら手を握って差し上げますね、ほら」
ぎゅ
「!」
レオンは片目をつむった。
「いやぁ?こういうのは“楽しんだもん勝ち”じゃないですか」
なぜか余裕のあるこの隣の男に1発入れたくなったがその隣では精霊王の声明により、会場が一気に明るくなる
光の柱が立ち、精霊たちが左右に広がり、道を作っていた
精霊王が両手を広げると、風もないのに金色の花弁が舞い上がる
「では──精霊婚の儀、執り行う」
レオンは自然にラララの手をもう片方も取った、ラララは逃げられないことを悟るりながら
「
……レオンサン
……」
「ん?」
「もし
……変なことしたら
…」
「変なことって、それはフラグじゃない?」
「フラグじゃないデス!!!」
会場中の精霊が、ふわりと笑っているように見えた。
精霊王が祝詞を唱え始めたとき、レオンはそっとラララの耳元に顔を寄せた。
「でも──」
囁く声は、ラララにだけ届く甘さで。
「こうして隣に立ててるの、俺は案外
……悪くないと思ってますよ」
「ナニ言ってるんデスカ
……」
「本当のこと言ったんですけど」
「エ?」
「え?」
かくして、急遽巻き込まれたこの“精霊婚”は──
ふわりと舞う光と、精霊たちの暖かい祝福のもと、
どうにかこうにか執り行われていくのだった。
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