三毛田
2025-11-19 09:39:35
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80 080. 数式では解けない感情

80日目
この恋心は解けない


 次々と黒板に羅列される数式。
 説明されても、あまり理解できないのは俺の頭が悪いからなのか、それとも別のことを考えてしまうからなのか。
『お前も星も、地頭は悪くない。つまり、己が興味があること以外、理解しようとしないのだろうな。やる気がないとも言えるだろう』
 これは、恋人が呆れたように言っていた言葉。
 まあ、彼の言う通りやる気はない。
 覚えるのが面倒だという気持ちが、ムクムクと心の隙間から出てきているため。
 あくびを噛み殺しつつ、教科書をパラパラ捲る。
「ん?」
 そして、違和感に気づく。
「丹恒。ノート見せて」
 お前は。と、口パクであきれを見せるが、今は一大事。
 丹恒のノートと教科書を見比べれば。うん、やっぱり。
「センセー! うちのクラス、まだそれの前提になる数字に教わってない!」
「本当か?」
「ほら、このノート見てよ」
「こら」
 手にしたままのノートを、先生に店に行く。
「あー……本当だな」
「多分、別のクラスと間違えてるんだ」
「時間が微妙だから、やれるところまでしか教えられないな。それでもいいか?」
 と、生徒たちへ視線を向けて。みんな困惑しつつ、頷く。
 そして、時間ギリギリまでまだ習っていなかった数式を丁寧に教えてくれた。
「お前、本当に」
「痛い痛いって!」
 休み時間になり、俺の頭へと手を伸ばしたかと思えばヘッドロックをかけてくる丹恒。
「で、でも結果オーライだっただろ?」
「それは結果論だ。俺のノートを見せるやつがあるか」
「痛い痛い! 降参降参!」
 ヘッドロックじゃ飽き足らず、拳で頭頂部をぐりぐりしてきた。
 降参だと叫ぶと、ようやく離してくれて。
 そんな彼の心情も、彼へ抱く感情も。きっと今まで教わった数式なんかじゃ解けない。それだけはわかる。
「本当に、興味関心がない分野には真剣に対応しないな」
「そう? まあ、確かにそうかも。俺、丹恒以外には興味ないし」
「お前は、どうしてそんな恥ずかしげもなく……
 呆れた声を出し、俺を離す。
「だって、丹恒が好きだからな!」
 笑顔で抱き着こうとしたら、グッと顔を押された。
 酷い。
 チラッと見たら、顔が赤く染まっていたから恥ずかしいのだろう。
 そういうところが可愛いんだよ。最高だ。
「好きだとか、そういうことは……
「は?」
「こういう場所じゃなく、別のところで、言うべきだ」
「じゃあ、家に帰ったら好きなだけアピールしていいってことだな!」
「いや、そうじゃなくて」
 ここじゃ駄目ってことはそういうことだろ。