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望月 鏡翠
2025-11-18 11:25:57
964文字
Public
日課
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#1910 リュネストの領地で、ある日のこと10
#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作
話がまとまったのであれば、早速書面で証拠を残す。口約束など信用ならない。手書きの署名が残った文書だけが、拘束力を発揮する。
トルガが契約書を用意するのを、商人は押し留めた。
「それで肝心の情報というのは? 何を制限するつもりなんです。嗜好品ですか。それとも宝飾品」
トルガが貴族になる前、リュネストの領主は港を封じた。よくある措置だ。誰も戦火に巻き込まれたくはない。この地で築き上げた財産が減ったとしても、命あっての物種だ。
迫り来る戦から逃げるななどと、直接は言えない。外からの物資を持ち込みたいから、港を閉ざすわけにはいかない。
代わりに別の理由をつけて、規制するのだ。宝飾品や嗜好品の規制はその手段の一つで、人間に伴う物資を規制することで人が出ていくのを防ぐのだ。
しかし、今回は違う。
「傭兵と奴隷の流入を規制する」
商人は、しばし言葉を失った。
「
……
今、なんと」
戦に慣れば人と食糧の需要が増える。トルガもそれはわかっているはずだ。だから穀物を買い入れたいという話をしていたのだから。
その上で、戦力となるレシーの傭兵を拒む理由などあるはずがない。商人はそう思ったに違いない。自国で運用しなくとも、他の国で需要が高まるはずだ。
「傭兵が今この国に流れ込むのは避けたいのさ」
「むしろ本国の傭兵を呼び寄せるなら、このタイミングをおいて他にないと思いますが」
それは質問の形をとった批判だった。商人として統治者としてのトルガの手腕に疑問符をつけたに違いない。この契約を後悔しているかもしれない。
ともあれ、今のリュネストの差配はトルガに任せられていて、傭兵を規制することは確定している。商人の役にたつ情報であることに違いはない。
「無論、戦力は欲しい。だがそれでは、いかにも戦争を起こそうとしているように見えるだろう。ディルストーン家のお歴々の機嫌を損ねる。根回しにもう少しかかるだろうが、令を出すのは近々に。一月以内だろうな」
「なるほど、よく分かりました」
商人は契約書にサインをした。
内心ではトルガの差配に納得してはいないだろうが、見えない部分のことはトルガには関係がない。必要な情報は、約束通りに手渡した。向こうも約束を守ってもらわねば。
この紙が、トルガには必要だったのだ。
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