三毛田
2025-11-17 21:17:32
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79 079. 体の内側を焼き焦がす炎のような

79日目
嫉妬の感情

『まるでこの世のすべてが敵。そんな顔をしてるわね、あんた』
……
『カフカはあんたたちを捨てたわけじゃないわ。ただ、巻き込みたくなかっただけ』
『何を、知ったように』
『私も彼女も、互いに嫌い合っているわ。でも、だからこそ信頼していると言ってもいい。何年かかるかわからないけれど、彼女はまたあんたたちの前に来るわ』
 そう言って、互いに抱き合う俺と星を抱きしめたのが姫子。
 本当の親の顔は覚えていない俺たちにとって、カフカは母親だった。
 けれど、彼女もまた俺たちの前から去って行って。
 捨てられた。
 その感情が、心の大部分を占めていたからすぐには信じられず。
 新しい環境になかなか慣れることはできなかった。
……
「なんだ」
「別に」
「そうか」
 子供部屋にいるのは、今は俺と丹恒だけ。
 彼もまた、複雑な環境から逃げた人。
 少し見つめていたら、俺の視線に気づいて本から顔を上げた。でも、用がないと知ると、また視線を戻す。
「丹恒は、本が好きなのか」
「知識は、いくらあっても困らないからな」
「ふうん」
 よくわからないけれど、そうなんだろうなって感想。
「丹恒。お前は何で、学校に行くんだ?」
 この家に来て、姫子への抗議でまだ学校には行っていない。でも、丹恒はなのと星と毎日のように行っていて。
「図書館の本が読みたいからな」
「そうなんだ」
 彼がいるのなら、一度くらい行ってみようかな。なんて。
……
 そして行った学校では、丹恒を見てはきゃあきゃあ騒ぐ人たち。
 本人は気にしていないけれど、何だか不快だ。
「穹?」
 体の奥底が熱い。炎に焼かれているような、嫌な感覚。
 幼いし、知識もなくて。
 その感覚が嫉妬だと知ったのは、数年後。
「丹恒。行こう」
「穹。だが」
「いいから」
 丹恒を好きな俺は、彼に向けられる好意に敏感になっていた。
 高校生になったのに大人げないと、女子二人には呆れられている。
「丹恒は、俺のこと嫌い?」
「嫌いじゃない」
「じゃあ、好き?」
 ズルい聞き方だ。でも、丹恒はいつもはっきりと答えてくれない。
……好きじゃなかったら、こんな横暴を許していない」
「じゃあ、恋人だ」
 ニコニコしながら告げると、何もかもを諦めたような表情。
「お前は、本当に趣味が悪いな」
「小学校に行くようになったきっかけは丹恒だし、ずっと一緒にいたいから同じ高校に行きたくて勉強も頑張ったんだ」
「知っている。他の人たちに、嫉妬していたことも」
「ぇ」
 知られてるとは思っていなかった。