ひよこ
2025-11-17 20:22:56
6173文字
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兄弟ごっこするショタサン(弟)ルシ(兄)が見たかったから書きました

・ゴリ押しストーリーを初心者なりにとり繕いました
・グブの設定うろ覚え状態
・ルシフェル復活時空
・天司の力を捏造
・過去作を想起させる箇所あり
・名無しのオリジナルほしけも登場。元ネタは犬◯叉です

 いつもよりも音程が数段高い、俺の声が聞こえた。

「ルシフェル様、もうすぐ着きますね。子ども達が失踪している町に」

続く声も普段とは異なり、とても可愛らしい音色をしている。少し前に俺の恋人になった方の声だった。

「ああ。団長達が昨日、町を捜索したが何の手掛かりも見つからなかったと言っていた」

今回の件はルシフェル様のお心当たりのある星晶獣が関わっているようだ。その星晶獣の性質を聞くに成果が得られなかったのも無理はないだろう。

「今回の作戦が成功するか否かは君の演技力に掛かっている。期待しているぞ」
……貴方の期待に応えられるよう、全力を尽くします」

 そう答えるとルシフェル様は口を僅かに綻ばせ、手を握ってきた。その指もいつもと異なり細くて小さく可愛らしいものであった。


俺達はルーマシー群島のとある町に来ていた。他に団員はおらず二人だけ。側から見たら町に遊びに来た仲の良い小さな兄弟にしか見えないだろう。何故なら俺達は天司の力で子どもの姿を取っているからである。

* * *

 サンダルフォンとルシフェルが失踪事件の起きている町に来た日の前日のことである。ジータ率いる騎空団は、失踪事件が起きた町の隣街の港に船を停泊させた。一刻も早い事件解決を、と依頼主たっての希望で船の中で話を聞く事になった。

「どうか、捜索のご協力をよろしくお願いします……!」

 ルシフェルは話をするハーヴィンの男性商人を見つめる。顔面は蒼白だ。当然だろう、彼の子どもも一ヶ月前に失踪してしまったのだから。隣町に出掛けた後、行方をくらましてしまったようだ。

「隣町の警備兵達が捜索に当たっているのですが痕跡が何も見つからないとのことで……。そこで街に来ていたシェロカルテ殿に相談したところ、星晶獣の仕業ではないかとあなた方をご紹介頂いたのです」

この一ヶ月で失踪した子どもは五人に増えてしまったとのこと。原因を早期解明し、子ども達を救出する必要があるだろう。

「そうでしたか……。ルリア、何か星晶獣の気配を感じる?」

 とジータが聞くとルリアが答えた。

「はい。微かに星晶獣の気配が……。位置の特定は難しそうですが」
「そっか、なら町に出て状況を探るしかないね」
「サンダルフォンさんが居てくれたら心強かったんですが……

ルリアの言葉にルシフェルが口を挟む。

「今は四大との定期報告会を行っている頃だろう。今日の夜には戻ってくるはずだよ」
「本当ですか!」
「なるべく今日解決したいけど、ダメだったら相談してみよう」

 それを聞いたルシフェルは道中気を付けてと声を掛けてから退室した。この後、洗濯物を干さなければいけないからだ。ルシフェルは戦闘可能な程度の力を取り戻していない為、グランサイファー内の雑用係を務めている。

 ジータ達は子ども五名の失踪事件についての情報を商人から聞いた後、事件解決に向けに隣町に出掛けたのだった。



夕暮れ時にジータ達は帰還した。事件調査に参加したメンバーが皆、肩を落としている。ルシフェルが声を掛けたところ、手がかりは一切見つからなかったとの回答が得られた。

「商人のお子さんがよく遊びに行っていた公園とか孤児院とかを見回ったんだけど、全然ダメ。手強い星晶獣だね……
「孤児院?」

 とルシフェルが聞く。ジータは商人の子ども以外は両親を無くして孤児院で生活していたと告げた。

「おかしいんです。星晶獣の気配がする方向に進んで距離が近付くと、次の瞬間気配が一気に遠くなるんです」

悔しそうに呟くルリア。それを聞いたルシフェルは一つの推測を見出した。

……
「どうしたの?ルシフェル。何か気になる事があった?」
「確かめたい事があるのだが、サンダルフォンの協力が必要だ」


 夕食を終える頃、サンダルフォンは帰還した。

「お帰りなさい。サンダルフォン」
「ただいま戻りました。ルシフェル様」

 抱擁を交わす二人。いつもであればサンダルフォンの道中の出来事について珈琲を飲みつつ聞くところであったが、今回は急用があった。

「サンダルフォン。君の天司長の力を借りたい」

 それを聞いたサンダルフォンの顔が引き締まる。

「勿論です。この力は元々貴方のものですから」

 そう言ったサンダルフォンは白き羽を広げてルシフェルの身体全体を包んだ。そしておでこをくっつけ合い、指を交差する形で握り合った。

「あいつらまたやってるぜ……

 とビィが遠い目をしてぼやく。ルシフェルは限定的な状況下で天司長の力を行使する事ができる。その条件を満たすためにサンダルフォンは行動しただけだったが、側から見て大変目立つものだった。ちなみに団員達は慣れたため、軽く流した。

 団員達の気苦労と気遣いを他所にサンダルフォンとルシフェルは事を進め、やがてサンダルフォンは羽を仕舞った。

「ありがとう、サンダルフォン。やはり私の推測は間違っていなかったようだ」
「ルシフェル様。状況は把握できていませんが、俺の力が必要でしたら遠慮なく言ってください」

「るっ、ルシフェルさん。何か分かったのなら教えてください!」

 ルリアはかなり気まずかったが、一刻も早く事件を解決したかった為、声を掛けた。

 ルシフェルは今回の騒動の原因になっている星晶獣について語り出した。それは覇空戦争時代より少し前から存在している星晶獣であり、空の民の子ども達を攫って、あやし育てる役割を持っていると。

「空の民の子ども?何でそんな役割が必要なんだ?」

 ビィの問いにルシフェルが答える。

……とある星の民が空の民と星晶獣の融合体を作る研究をしていた。その研究の為に空の民の子ども達を調達・管理する星晶獣が必要だったのだろう」

悲惨な研究の為に造られた星晶獣の話を聞き、皆が息を呑んだ。

「「彼女」には一つ大きな特徴があってだな、姿を見たものの認知を変え、親に成りすますのだ」

それを聞いたジータが呟く。

「失踪した子ども達の共通点なんだけど、親が亡くなっちゃてるんだよね……

 商人の奥さんは数年前に不慮の事故で亡くなっていた。

「認知改変の影響の受けやすさは、対象者に依存する。失踪した子ども達は影響を受けやすかったのだろうな」
「ルシフェル様、今回の失踪事件が一ヶ月前というのはどういう経緯なのか気になっています。何かご存知ですか?」

 ルシフェルは答える。

「実験途中で脱走した際に深手を負ったようで休眠状態に入っていた。推測だが最近覚醒したのではないだろうか」

 ちなみに戦闘能力は殆ど無いため自力での脱走は不可能だったが、その星晶獣の造物主が裏で手引きしていたようだとルシフェルは語る。

「造物主が手引き?どんな心境の変化があったんだ?」
「すまない。事象の観測はしていたが対象者の心情把握までは……。今思うと、造物主は「彼女」に情が湧いたのではないだろうか」
「情……ですか」

サンダルフォンは呟き、過去に会った星の民達を振り返った。騎空団に入る前であれば星の民に情なんてあるものかと思っただろうが今は違う。


 暫く会話を続け、問題の星晶獣に辿り着く方法についての議論となった。

「先程も言った通り、彼女の認知改変の影響は対象者に依存する。調査メンバーには大人も混じっていたし、団長も親を探す子どもには違いないが攫う対象としては年齢が高すぎたのではないだろうか。結果、「彼女」は接触を避けたのだろう」
「どうやったら会えるんでしょうか?」

 ルリアは頭を抱える。

「それなのだが、私に任せて欲しい」
「ルシフェル様!何をすると言うのですか?御身を危険に晒す事になります!」

 サンダルフォンは慌てて口を開いた。しかしルシフェルは動じない。

「「彼女」は暴走状態なかかもしれないが元々は戦闘能力は持たない星晶獣だ。私一人でも対処できるだろう。何より、今回の件の解決に協力したい」
「どうしてですか?」
「以前の私は物事を観測するだけの傍観者だった。今の私は変わったのだ。君が路頭に迷う同胞を助けたいと行動を起こすようになった様に、私も「彼女」や子ども達を助けたいと思ったのだ」

 サンダルフォンは真剣な表情をするルシフェルを暫く見つめ、はぁとため息をつく。

……分かりました、ルシフェル様。ただ貴方に何かあってはいけない。俺もお供させてください」

ルシフェルも騎空団に来てから少し変わった、とサンダルフォンは思う。元々島を落とす行為に至るほどの並々ならぬ感情をルシフェルに抱いていたサンダルフォン。その想いは既に極限まで達していると思っていた。しかし、彼が復活し騎空団での生活を共にすることで彼の新しい一面を知る。ルシフェルへの想いが更に強くなる事に驚きながらも歓迎するサンダルフォンだった。

 ただ、ルシフェルの見せる新たな一面は稀に手放しで歓迎できない事もあった。本人は全く意図していないのだろうが、サンダルフォンにとっての試練を引き起こす。

「では、サンダルフォン。幼児化の措置を頼む。明日は隣町に向かい共に親を探そう」
「はい???」

 皆、目が点になる。言葉が足りなかったなとルシフェルは補足した。

「「彼女」の役割からすると、親を探し大泣きする子供は誘拐の対象になりやすいだろう。明日はそれを実行し「彼女」との接触を図る」
「なっ、なるほど……?」

 ルシフェルが普段と変わらない様子で淡々と話すためサンダルフォンは流されそうになる。他の団員は何を想像したのか、口を手で押さえ笑いを堪えていた。

* * *

 普段の腰の高さ程度に縮んだいつにも増して愛らしい恋人をチラリと見つつため息を漏らす。もう直ぐ町のゲートを潜るところだ。

「はぁ」
「サンダルフォン、何かあったか?」
……いいえ」

 本当は「はい」なのだが、惚れた弱みもあり本心を言うことはないだろう。ルシフェル様の爆弾発言には良く手を焼かされている。ちなみに俺達が恋人になった経緯もこの方の爆弾発言がきっかけだ。あの時も散々な目に遭ったが最後に甘い経験ができた為、結果的にとても満足している。

「サンダルフォン」
 
 ルシフェル様が目配せして合図する。遂にこの時が来てしまった。躊躇するな、俺。ルシフェル様の期待に応えるんだ。

「うえ〜〜〜〜〜ん!!おかあさ〜〜〜ん!!」

 俺は町中に響く様、大きな声で泣いた。嘘泣きを本物に近付けるため、水の元素から生成した水を目から流す。

「サンダルフォン。お母さんはきっとこの街にいるはずだ。一緒に探そう」

 ルシフェル様にはこんな役割をさせられないと弟役を引き受けた。ルシフェル様は兄役なので泣く必要はなかったのだがホロリと偽の涙をこぼす。内心この状況を楽しんでいないか?こんな所を四大や司教の天司に見られたら一生ネタにされるだろう。
 町の人達もどうしたのだろうとこちらを注目し始めた。ちなみに天司の力は感知されないよう制御している。傍目には親を求める子ども達にしか見えないだろう。頼む、今すぐ俺たちを攫ってくれ。


 そんなささやかな願いを例の星晶獣は叶えてくれなかった。俺たちは親を探す兄弟ごっこを続けるため街の広場に来た。お昼時で出店があったため、カップスープを買ってベンチに座る。

 「サンダルフォン、スープ暑いよ。食べさせてあげよう」

 と、スプーンですくったスープを息で吹き、冷ました後

「ほら、あーん」

 と俺の口の前に持ってきた。これって兄弟のフリになるんですか?とツッコミを入れたかったが、大変可愛らしい恋人からの「あーん」に耐えきれず口を開いた。


 あーんタイム、もとい昼食を終えた俺たちは裏街道を進む。周りには誰もおらず静かだ。べそべそ嘘泣きする俺の手を繋ぎ、先を進むルシフェル様が突然闇に呑まれた。俺もすぐにその闇に包まれる。遂にこの時が来たと、歓喜の涙を溢した。

* * *

 視界が開けるとかつての中庭の様な雰囲気の空間に出た。例の認知改変の力の星晶獣の見た目を観測者の親に見せるというものだったはずだ。暴走の影響で認知改変が強まっている可能性もある。

 「ぼうや達、随分待たせてしまいましたね。もう、大丈夫ですよ」

 後方から声が聞こえたため振り返る。そこにはいつもの立ちポーズをして満面の笑みで微笑む「ルシフェル様」がいた。なるほど、やはり俺も認知改変の影響を受けているのだな。……うん?するとルシフェル様には何が見えているんだ?本物のルシフェル様をチラリと見るが、普段と変わらず落ち着いた様子だ。……これ以上考えるのはよそう。俺の思考の乱れを他所にルシフェル様の説得が始まった。
 
 「はじめまして。私はルシフェルという。単刀直入に言うが、誘拐した子ども達を解放して欲しい」

* * *

 グランサイファーに設けられた、俺たちの部屋。そこで俺はテーブルに腰掛け、物思いに耽ける。今日もルシフェル様の爆弾発言で散々な一日だった。町中を大声で泣きながら歩いて疲れた。精神的に……。ふと、窓の外を見ると星が輝いているのが見えた。

「サンダルフォン。お疲れ様」

 ルシフェル様が珈琲をテーブルに置かれた。今日は、リラックス効果の高い豆を選ばれた様だ。俺を気遣ってくださったのだろう。セットにチョコレートケーキも用意されている。

「今日は沢山泣いて疲れただろう。これで疲れを癒して欲しい」
……
「ふふっ。冗談だよ」

 良かった、冗談か。また可愛らしいがうるさい口を黙らせる必要があるかと思った。しかし、あのルシフェル様が冗談……。やはりここに来てルシフェル様は変わられた。それを肌で感じる事ができる今の状況に改めて嬉しくなる。

「今日は私のワガママを聞いてくれてありがとう。君のおかげで子ども達を無事保護し、「彼女」も最後に正気に戻す事ができた」

 それを聞き、俺は少しの間目を閉じた。

 「彼女」は役割を果たせば造物主が帰ってくると考えて誘拐騒動を起こしていた。役割を果たそうと認知改変能力を無理に高めたのだろう。暴走を終えた「彼女」は星晶状態となり再び休眠し、それをルリアが回収した。「彼女」の様な役割に翻弄される星晶獣を救いたい。かつての俺の様に苦しむ者を一人でも減らそうと心を新たにする。

 さて珈琲を飲むか、と目を開けると向かい側に座っていたはずの恋人がイスごと隣に移動していた。フォークを手に持ち俺の口に近付ける。フォークには少し大きめなケーキのかけらが刺さっている。

「サンダルフォン。あーん」

俺のルシフェル様は好奇心旺盛なところがあり、覚えたものをすぐ取り入れようとする。今回もそうだろう。あーんが大層気に入ったのかもしれない。困ったものだが大変可愛らしいので今回は素直に受け入れよう。

「あーん」

口いっぱいにチョコレートケーキの味が広がった。
 

終わり

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