ペナルティの毒煙が少しずつ消えて画面がクリアになっていく。血に塗れて意思をなくした身体が重力に逆らえず水で満たされた筒状の閉鎖空間内にゆっくりと沈んでいく様をモニターは遠巻きに写している。太陽を思わせるオレンジ色の髪は水とガラスとモニター越しで見ても鮮やかで、だからそれが水底に沈む姿が目に焼き付いて、離れない。そんな、どうして。
「真経津晨の死亡により、デビルズマイン・ツインズ、三角誉の勝利が決まりました!」
*
「……夢、だよな」
自室のベッドで目を覚まして一人呟いた。だって、あの日仲間たちとモニター越しに見た解任戦は真経津の勝利で終わったはずだ。血反吐を吐いて水底に沈んだのは対戦相手で、そうだ、真経津は今日も、オレの隣で子どものように穏やかな表情で眠っていて。
「……真経津?」
ゲストルームを用意しているというのにオレと一緒に寝たいという真経津が入れるように半分空けていたベッドの空間が、空いたままになっている。慌てて空いた空間に手を添えればほんの少しの温もりが伝わってくる。そうだよな、だって真経津はあの試合の後、自分の家に帰らず連日オレの家に居座っている。真経津があの試合で死んだわけがないのに。
真経津の死なんて、悪い夢に決まっているのに。
「呼んだ?獅子神さん」
どうして、ベッドルームの入口から顔を覗かせる真経津の姿を見ても幻なんじゃないかという思いが消えないのだろう。真経津は確かにそこにいるというのに。
「……トイレなら、言えよ。急にいなくなるのはビビるだろうが」
かろうじて絞り出した言葉に真経津が子ども扱いしないでよ、と口を尖らせながらベッドに忍び込んでくる。一緒に寝る為に捲られた布団と沈み込むスプリングが真経津が今この場に存在していることを無理矢理にでも実感させてくる。それでもいまいち実感が持てずにいれば、もぞもぞと真経津が近付いて、そっとオレの腰に腕を回す。
「獅子神さん起きてるなら、くっついていいよね」
「さっき子ども扱いすんなっつったのはどこのどいつだよ……」
オレの胸の中に真経津が収まる形になって、触れた箇所からじんわりと体温が伝わってくる。しょうがねえな、と呟いて収まりのいい場所を探すふりをしながら、真経津の輪郭をそっとなぞっていく。子ども体温とでも言うのだろうか、さっきまで布団の外に出ていたはずなのにどこに触れても真経津は温かくて、じわじわとさっきまでの不安な気持ちが溶け出していくのを感じる。
ああ、きっとあやされているのはオレのほうなんだろうな。それでもいいか、真経津が生きているのなら、それで。
とく、とくと一定の感覚で刻まれる鼓動と感触、触れた箇所から伝わる体温を確かめながら、オレは意識を手放した。
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