れり2777/花珊瑚
2025-11-16 22:55:22
1154文字
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大団円の夢

地獄みたいな話を思いついたので書きました

 気付いたら、高明はダイニングに座っていた。
 目につく調度品や間取りは記憶の中の『生家』と一致しており、座っているのも高明の定位置。隣は弟の、向かいと斜向かいは両親の席。家の中に自分以外の気配はないが、家族の生活の痕跡は多数見て取れた。
 見下ろせば、高明は詰襟の学生服を着ていて、目の前にはホクホクと湯気が立ち上るオムライスがある。スプーンを手に取り口に含むと、懐かしい母の味がした。
 何故、自分は一人で食事をしているのだろう。
 ぼんやりと霧がかったように、記憶の糸を手繰ることができない。また一口食べ進め、考える。

 ピンポーン

 思考を断ち切るように、玄関のチャイムが鳴った。驚いてスプーンを取り落とすと、ガチャンと大袈裟な音が鳴って床に転がった。

 ピンポーン、ピンポンピンポンピンポンピンポン

 なかなか出てこない家人に痺れを切らしたのか、チャイムの音が激しくなる。高明は慌てて立ち上がり、床に落ちたスプーンもそのままに玄関へ向かった。
 鍵を開け、扉を開ける。

「どちら様ですか?」

 ドンッ

 訪問客を視認するより早く、身体に衝撃が走った。腹が燃えるように熱くて、見下ろすと、銀色の何かが学生服を突き破り、深々と刺さっている。

「──はどこだ!?」

 ぐるりと回転した視界いっぱいに、訪問客の草臥れた運動靴が映った。タイルの冷たい感触が頬に伝わってきて、高明はようやく、自身の身体が玄関に横たわっていることに気付いた。
 上がり込んだ男は何かを叫びながら室内を物色している。何もない、誰もいない、家を。
 ──そうか、理解した。これは夢だ。僕が林間学校に行かなくて、家族が出掛けている、存在しない世界。
 高明は真っ赤な染みがタイルの目地を侵食していくのを眺めながら、ゆっくりと目を閉じた。




 ──メイ! コー、イ! コーメイ!

 意識が浮上する。
 霞む視界の中で、色黒の幼馴染と、珍しく髪を下ろした幼馴染が、高明の顔を覗き込みながら叫んでいる。
 二人は高明がしっかりと目を開いたのを視認し、安堵のため息を零した。

「もう!心配したんだから!」
「はーー……ったくお前はなあ!」

 泣きそうな顔をした由衣が一転、怪訝そうに尋ねる。

「あら、諸伏警部、笑ってる?」

 高明は答えた。

「ええ。とても……幸せな夢を、見ていました」


fin.



あのとき自分が〇んでいれば、と思わなかったわけではなかった、高の心のやわい部分を書きたかったです。
このあと敢が「あ?三〇志の夢でも見てたのかよ?」などと言うので、高はジト目しながら「君の乱暴な推理で迷宮入り事件が増えても困りますから、何としても生き抜かないと……」と決意するなどします。