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水井白羽
2025-11-16 20:47:50
1456文字
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中央暦 3050年 4月 ヰ王国某所
乱文
中央暦 3050年 4月 ヰ王国某所
セントール軍 第2軍団の某部隊による「旧皇帝派組織の研究所制圧作戦」にて、軍はとある男を保護した。男は「ペリュート・リュリュ・ネ」と名乗った。彼は赤子を抱いており、自らを保護するよう迫ってきたのだ。
軍は組織の関係者と見て事情聴取を行うことにした。
尋問を取り行った書記は頭を抱えていた。ペリュートは研究者だと言い張るのだが、彼の存在は組織に残された書類には一切記載されておらず、更に「32年後から来た」と宣うのだ。彼の様子から嘘を言ってるわけではなさそうだが、何を言ってるか訳がわからない。
(この時の記録は長らく隠蔽され、ニクラウス帝の崩御を期に漸く日の目を見ることになる)
ペリュートの不可解さも大概だったのだが、彼が抱いていた赤子もまた、とんでもない問題を抱えていた。腕がなんと丁度イソギンチャクのような滑らかな触手になっており、更にそれに触れた鼠が石化したのだ。
兵隊は慄くばかり。そこに尋問から戻ってきたペリュートがやってきて、赤子を抱えてこう言い放ってきた。
「こいつは化け物だ。そして俺だけがこの化け物を扱える」
他にも色々揉めたが、その後ペリュートと赤子は第1軍団の生体兵器科の研究所兼収容施設に移送することが決まった。
セントール軍 第1軍団 第1師団 第1生体兵器科旅団
……
同軍の数多ある生体兵器科の本部とも言えるこの旅団は、大規模な収容施設を所有している。この施設には数多くの獰猛な生体兵器が収容され、世界各国に送られたり逆に送り込まれてきたりしており、常に奇怪な生き物の唸り声が響いた。
同時に未知の生物の生態や軍事的な有用性なども調査する研究施設も兼ねており、施設内は軍人や飼育員だけでなく研究者も多く出歩いている。
ペリュートは赤子と共にこの施設に運び込まれ、彼の飼育員兼研究者としての生活が始まった。
とはいえ、赤子は「触れると石になる触手」さえ目を瞑ればほぼ人間と同じ見た目をしていた。
かの施設に収容される生物兵器はどいつもこいつもとりあえずは「動物」にカテゴライズされる生き物ばかり。人型は猿系の生体兵器を除いて存在しない。
セントールでは、ニクラウス帝が帝位を簒奪する前の時代に人外種族の類が生体兵器としてこき使われてきた。その反動で、彼が即位した後ではその人外種族も「ヒト」として立場が保証されるようになった。
……
つまり、この国では人型の生命体を兵器扱いすることに、強い忌避感を抱く人割合がそこそこ高い。(もちろん躊躇いがない人もいるのだが
……
)
そのせいかペリュートがこの施設に連れてこられた初日、職員全員がどよめいた。「触れると石になる触手」とだけ聞かされ、イソギンチャクか毛むくじゃらなナニカを想像してた彼らは面食らい、混乱が起きた。
「「「どうみても人間の赤子ッ!!!!」」」
更に物議を醸したのは、赤子が拘束ベルトでぐるぐる巻きの状態であったこと。「人間だったら虐待じゃないか」職員の1人が思わず言ってしまう。するとペリュートはその職員の方を向いて、
「『人間』、だったらな。こいつはガワが人間だが『化け物』だ。こうでもしねえと俺もお前も石にされちまうぜ?」
赤子とペリュートが放り込まれた場所は、観察室を改造した居住スペース。ペリュートのデスク一式、机と椅子、カウチソファ、そして赤子用のベッド。以上。
監督することになった軍人曰く「研究に必要なものがあれば手配はする」ということらしい。
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