お芋さん太郎
2025-11-16 19:19:42
1083文字
Public ONEPIECE
 

うわさのTD

ブルック誕生祭2025
#クロッカス #ラブーン


クロッカスは、最近の若者の流行だという『TD』というものを入手した。
南の海から来たという若い海賊が持っていて、グランドライン突入の記念にと置いて行ったのだ。

「おっさんの年代だと知らないだろうけど」「驚くかもしれないがこれで音楽が聴ける」「今まで無かった画期的なアイテム」「入ってる曲も激ヤバ」「おっさんは知らないだろうけど」などと得意げに説明された。
もの言いは失礼だったが、若さゆえだろう。それくらいの方が、骨があってむしろ良い。

問題は『TD』だ。
それはたしかに青い海では珍しいが、クロッカスにとってはよく見知ったもの。
空島名物の、トーンダイアルだった。

クロッカスは海賊王の船に乗っていたのだ。
ダイアルのことなら、むしろあの若者たちよりもよく知ってる。
20年以上前から知ってる。

そしてその中に記録されている、歌声も。

それは52年間、待ち望んだ声だった。
正直、彼らの声なんてほとんど忘れていた。
だけど不思議なことに、たったひとりの声を聞いただけで、彼ら全員の声をついさっき聞いたように思い出した。

若い海賊たちに、TDと一緒に押し付けられたパンフレットにはアフロ。
見間違えではない。勘違いでもない。

骨ばったどころか骨そのままな顔面に驚きはしたが、そんな姿になっても生きていて、音楽家として世界に名前を轟かせた。
これはきっと、彼から待ち人へのメッセージだ。

灯台の岸に、机をひとつと椅子を持ち出した。
今日はここで、二番目に良いワインを開ける。
酒の肴は友の歌声だ。

パンフレットに書かれてあったプロフィールによると、彼の誕生日が今日らしいので。
ラブーンとともに静かに祝う。

「私はショックだぞ、ラブーン。誕生日なんて本人の口から聞きたかった」
「ブォ!」
「あいつがお前を迎えに来たら、2人で文句を言ってやろう。こんな貝なんて待ってないってな」
「ブォブォ!!」
「52年分の情けない言いわけを聞かねばな。シラフじゃできんから、酒を開ける。とっておきの、一番のやつだ」
「ブォ~」
「そしたら、みんなで歌う」
「ブォ♪」
「ああ、楽しみだな」

TDに記録された歌は相変わらず素晴らしい。
だけどちょっと『らしくない』。
この歌声は、演奏は、気のいい仲間たちとガチャガチャ歌ってこそ輝くのに。

そんな悪態が、風に乗ってどこかの誰かに届いたのだろうか。
そっと目を閉じて、波とのデュエットに耳を傾けると、まどろみの中かすかに聞こえた気がした。

ブルックとルンバー海賊団の、楽しげ大合唱が。



おわり