お芋さん太郎
2025-11-16 19:15:22
1259文字
Public ONEPIECE
 

もずく畑で会いましょう

ジンベエ誕生祭2025
#アラディン


もうちょっとだけ、いたらいい。
そうやって彼を引き留めて数時間。
さすがにそろそろ行かねばと、ジンベエが麦わらの一味の元へと出発した。

アラディンは小さくなる彼の背中を、名残惜しく見送った。

ビッグ・マム海賊団の猛攻から無事に逃げのび、少しだけ療養してからおこなったジンベエの送別会は大いに盛り上がった。
なにしろジンベエはこれからワノ国に乗り込むのだ。
長いあいだ四皇としてこの海に君臨している、カイドウのお膝元。
きっと大きな戦いになるだろう。

ヘタをすると、もう会えないかもしれない。
それが彼の望みとはいえ、付き合いの長いアラディンにとっては身を切られるほどに苦しい別れである。

だから彼とは、ひとつ約束をした。
渡したのは一枚の地図。

『アラディン、これは……
『ずっとお前に秘密にしていた、とっておきの場所だ。ほんの少しでいい。次の4月2日、ここに来てほしい』

地図が示す場所は、小さな夏島付近の海だ。
浅くて、温かくて、珊瑚やイソギンチャクが美しい海域。
その海では、バツグンに美味しいもずくが採れる。

毎年ジンベエの誕生日になるとその海域から、彼の大好物のもずくを採ってくる。
陸の酸っぱい調味料を仕入れて、ささやかながら宴の席に並べるのだ。

今年はその場所で、本当に最後の宴をしたい。
それがアラディンの望みだ。

他船のクルーを祝うだなんて、おかしなことを言っている自覚はある。
でも今年だけ、許してほしい。
去年の宴のとき、それが最後になるなんて思ってもみなかったのだ。

それに生きて戦いを終えてほしいという願いもある。
これから立ち向かう相手は、計り知れない強さを持つ。
また会えるはずだという、希望と確信がほしかった。

『ぬう……船長しだいじゃが……
『もちろん、それでいい。これはおれの一方的な約束だ』

それでも義理堅いジンベエのことだ。
約束を果たすためにきっと力を尽くしてくれるだろう。


そして4月2日当日。
タイヨウの海賊団は一人も欠けずに約束の場所へと集合した。

ジンベエの姿は見えない。

太陽はてっぺんを過ぎ、あとは沈むばかり。
それでも根気強く待っていると、青い空に白い鳥が見えた。
ニュース・クーだ。

クーが落とした新聞はうねり始めた世界を語り、しかしアラディンたちは一枚の手配書に釘付けになる。
〝麦わらの一味 操舵手〟として報じられた見知った顔に、思わずみんなで笑いをこぼした。

ジンベエは約束を守ったのだ。

「よーし、お前ら! 宴だ!」
「よしきた~!」
「宴の準備をー!」

それは友の生存と更新された賞金額、そして誕生を祝う宴。
ご本人はいないのに、かつてないほど盛大だった。

声をそろえて歌をうたう。
日が暮れて、月が昇って、次の夜明けを迎えるまで。
彼を慕う人数ぶんの歌声が、大きく美しく響いた。

沖を賑わす笑い声や歌声は近くの夏島まで届き、住民たちはそれを子守歌に心地よく眠りについたという。



おわり