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お芋さん太郎
2025-11-16 19:06:21
1590文字
Public
ONEPIECE
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麦わらオーケストラ
サニー号の日
#麦わらの一味 #ほのぼの
サンジが朝食を作りはじめて間もなく、ダイニングにブルックが入ってきた。
「朝メシはまだだぞ」
「ええ。じつはセッションしてたのですが、サンジさんもいかがかと思いまして」
ブルックがご機嫌な様子で、カウンター席に座った。
この時間に起きているのは、ゾロが寝るのと入れ違いで起きるサンジとブルックの2人である。
サンジはずっとキッチンにいた。それなのに『セッションしていた』とは、どういうことか。
「そうか、お前もう90歳だからな」
「ボケてません! 失礼ですよ! あ、作業はそのまま続けてください。気にしないで」
コックの朝は忙しい。
サンジは心の中で首をかしげて、彼の言う通り作業に戻った。
食材を切って、フライパンを振る。
戸棚から取り出したスパイスの瓶を台に置く。
その間、ブルックは気まぐれにバイオリンの弦をピンピン弾いていた。
お箸でボウルの中身をかき混ぜる。
そろそろ起きてくるロビンのためにコーヒーを淹れ。
控えめな足音とともに、ちょうどロビンが扉を開いた。
「おはようロビンちゃん、コーヒー飲むかい?」
「おはよう。いただくわ、ありがとう」
彼女は椅子に腰かけ、読みかけの本のページをピラリとめくる。
コーヒーを飲みながら数ページほど読み進め、ふとブルックに目を向けた。
「素敵ね。それ」
「ヨホッ、ありがとうございます」
サンジの頭に、いっそうハテナが浮かんだ。
ブルックは先ほどまでと同じように、曲を弾くでもなんでもなく、ただ弦をはじいていただけだった。
作曲でもしているのかと、サンジはずっと思っていた。
しかし、ロビンは何か違うものを感じたらしい。
なんとなく疎外感が悔しいサンジは、うふふアハハな雰囲気の2人に割って入る。
「ロビンちゃん、ブルックのやつ何かしてたのか?」
「あら。気づいてなかったのね、サンジ」
「いったい何が
――
」
「シー。手を止めないで、よく聞いて」
ロビンの言うことはいつも絶対的に正しいので、おおせのままに作業を中断せずに耳を澄ます。
始めはまったくわからなかった。
だけどだんだん、耳の奥で形になる。
トントントン、ピラ、ぽろポン、カチャ、こつん。
ブルックを見る。
ぐつぐつ、ポぽポン、コン、とん、ピラ、ピン、じゅわ。
ロビンを見る。彼女は「ね」とほほ笑んだ。
なるほど、これがセッション。
サンジが出す調理音や、ロビンの本をめくる音。
ブルックはそれらに合わせて音をあて、心地よいリズムを奏でていたのだ。
おそらく、彼がここに来てからずっと。
そうと分かれば、ムダに靴を鳴らしてみる。包丁を鳴らす。
ブルックはそれをムダにせず、ぜんぶ拾って曲にした。
ちょっと楽しい。
ナミと、ゾロと、チョッパーが起きてきた。
椅子の音、コップの音、会話が増える。
ブルックの骨の指が躍る。
ルフィとウソップが起きてきた。
カトラリーを並べる音、謎の雄叫び、笑い声が増える。
ブルックは無い身を揺らし、アフロを揺らし、愉快に引き鳴らす。
フランキーとジンベエが起きてきた。
重たい足音が席につく。
料理の皿を次々並べる。
喜びの声が聞こえる。
いつの間にかブルックは演奏を止めていて、それでもダイニングには楽しい音が満ちていた。
「オーケストラだな」
「ですね」
船長が全部の皿を空にする前に、サンジとブルックも席に着く。
そして、ふと、サンジはひとつの疑問を思い出した。
ブルックは誰かとのセッションにサンジもと、ダイニングへ来たのだ。
「そういやお前、はじめ誰かと『セッションしてた』って言ってなかったか?」
ブルックがヨホホと小さく笑う。
「もう一人いるでしょう。私たちには、仲間が」
船が一度、グンと揺れた。
まるで、頷いたみたいに。
おわり
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