lymlco
2025-11-16 06:24:45
2598文字
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いっそお前っぽいと俺は思う

小説とは呼べない場面設定の壁打ち長文
とどちが3年でクラスが別れちゃったIF 藤堂くん視点の(途中まで無自覚な)片思い
進路の方向性は以前書いたイマジナリー千早の話とおおむね一緒だけど こういうパターンもアリかなと思って……

3年生のクラス分け。
清峰・要
藤堂・山田
千早(特進クラス)

クラス発表を見て驚く4人と平然とする千早。昨年の段階で特進クラスを希望してたらしい。誰にも言わずに。
動揺してつい「離れて清々するわ」と憎まれ口を叩いてしまう藤堂と、「ゆっくり寝れてよかったですね」と言い返す千早。軽口なのにひどくズキズキする。

「なんで黙ってこういうことすんだよ」
「まあ、俺の人生史上一番俺らしくないことするって決めたんで」
どこがだ。千早らしさ全開じゃねーか。

千早はクラスの人と無難に仲良くできるタイプ。移動教室や体育でも、それなりに新しいクラスで馴染んでいた。
藤堂はそれを遠目に見てた。
修学旅行も三日目の自由行動しか一緒にいれなかった。バスも新幹線も部屋も、本当は隣がよかったのにな。

藤堂は、ずっと隣で世話を焼いてくれた千早がいないことに焦燥感を抱きつつ、まあ部活行きゃ会えるし、一緒に帰るし、と過ごしていた。
でも夏に引退して二学期の始業日、あれ、一緒に帰るって約束してねえな、と気づく。
千早のクラスに行き、緊張しながら声をかける。なるべく自然に、自然に
「千早、帰んぞ」
千早は一瞬きょとんとして、すぐにカバンを持って廊下に出てきた。一緒に帰ってくれるらしい。よっしゃああ!と内心ガッツポーズ。
次の日もそんなふうに帰ってた。

二学期始業後3日目。
「帰ろ」
声をかけに行くと、千早が申し訳なさそうな顔で「すみません、勉強して帰ります」と言う。特進コースは補習が始まったらしい。
「あっそ……まーがんばれよ」
そう言いつつ、あ、千早と過ごせる時間もうないのか、と心がぽっかりする藤堂。

卒業したらそうなるだろうなって漠然と思ってたけど、こんなタイミングでこうなるのか。心の準備がなかった。
俺、千早のことめっちゃ好きじゃん。
なんか失恋したみたいな気持ちになった。

10月末にはドラフト会議がある。プロを目指す以上は体を動かし続けなくてはならない。千早と帰れなくなったのを機に、藤堂は毎日部活に参加するようになった。野球してたら頭はすっきりした。帰る時間が千早と同じにならないかな、と少し期待したが、程なくして千早は塾に通い始めた。顔を合わす時間は格段に減った。
9月28日は千早の誕生日だったが、会うことはなかった。LINEでメッセージしただけ。

10月の中旬。千早が珍しく声をかけてきた。「藤堂くん、明日一緒に帰りません?」たまには体動かしたくて、バッセン行きたいなって思って、だそう。
そういう息抜きの時間に、俺を選んでくれんのか、と思うと藤堂は胸がいっぱいになった。
久々に行ったバッセンは楽しくて、そのあとに行ったご飯も楽しくて、これが明日はもうないんだと思ったら名残惜しくて、自分から解散を切り出せなかった。
「うわ、もう9時」
スマホの時計を見た千早が驚いている。あ、もう帰ろうって合図だこれは。
帰りたくない。
「いいじゃん。塾だったらもっと遅いんだろ」
「そらそうなんですけど」
こんなに動いたの夏ぶりなんでちょっと疲れました、と千早が笑う。
「お前も部活来ればいいのに。そんなガツガツ勉強しなくたって大学から声かかるだろ」
「そうですね、ぶっちゃけもういくつか声かけられてるんですけど」
「そうなん!?」
「まあでも、一般で受かって野球部入った方がいろいろ身動き取りやすいですし。それに俺みたいなのが推薦枠使ったら学力ない人が可哀想ですよ」
「は〜?考えらんねえ。なにそれ」
君と違っていろいろ考えてるんですよ、と千早は言う。
「プロ入りするだろう藤堂くんには関係ない話です」
その、ちょっと突き放したような言い方がさみしくて、言葉に詰まった。関係ない。関係ないか。今日1日、千早の特別に選ばれたつもりでいたから、刺さってしまった。俺は千早のこれからに関係のない人間。
黙ってしまった藤堂を見て、千早が取り繕うように言う。
「嫌味を言ったつもりじゃなかったんですが」
「わーってるよ」
嫌味の方がマシだった。
「帰るか」
「はい」
「帰りたくねーな」
ついぽろっとこぼれた本音に藤堂は自分でびっくりしてとっさに、今日楽しかったし、と付け足した。それが恥ずかしさを増長させた。今日千早と一緒で楽しかったから、帰りたくない。帰ったら、明日からまたつまらない。本人に言うつもりなんてなかった。
「遠回りしますか」
意外にも千早は藤堂の恥ずかしい感性を冷やかすことなくそんな提案をしてきた。藤堂は、する、と即答した。千早、まだ一緒にいてくれるらしい。
ゆっくり歩いた。
ほとんど歩いたことのない道を、地図アプリで方角だけ確かめて、とろとろと進む。学校の、お互いの知らない話をした。授業で当てられて珍しく正解したら教室ざわついた話をしたら、千早が笑って、見たかったなと悔しがった。
千早が隣の席で笑っているところを思い浮かべる。
「なんで千早がうちのクラスいねーのか未だに謎」
「えー、春は離れて清々するって言ってましたよね」
「え!?俺そんなこと言った?」
「根に持ってます」
最悪だ。
「撤回撤回」
「一緒のクラスがよかったですか」
今日は街灯が本心を照らして、隠させてくれない。
「千早がいないとつまらん」
素直な弱音が口から溢れて、こんなん千早に笑われるだけだろと思わず顔を覆ったが、
「藤堂くん、それ、後悔しますよ」
真顔の千早から返ってきたのは物騒な言葉だった。
「え、怖」
「俺ずっと覚えてるんで」
「何を?」
「藤堂くんの不用意な発言を」
自分らしくなさすぎてまだちょっと迷ってたんですけどね、決めました。背中を押したのは藤堂くんなの忘れないでください。
千早はこちらを見ずに言った。

藤堂のドラフトが終わり、所属する球団が関西に決まった。その球団がホームとする地域の大学に千早が出願した、と知ったのは、3月に千早が合格通知の画像を送ってきてからだった。キャンプ入りしていた藤堂はそのメッセージを読んでひっくり返った。
千早が「いろいろ考えてるんですよ」って言ってたのこれのことだった?
俺の進路に合わせて大学決めたってことで合ってる?
俺がいないとつまらないですもんね、来てあげましたよ、と千早が笑う。これ俺の気持ちもバレてるな。敵わんわ。