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望月 鏡翠
2025-11-16 01:02:16
984文字
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日課
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#1907 リュネストの領地で、ある日のこと7
#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作
貴族の収入は領地の運営と、領民からの税、あるいは投資のような資産運用や功績によって君主から拝領する財産などから成り立っている。
人や物が行き交うならば関を儲けるだろうし、港町であれば大型船が停泊できるような整備された港は、停泊料を取る。
トルガは突然、リュネストという大きな領地の裁量権を得たわけだが、それを喜ぶことができるような純朴な性格はしていなかった。
今日、面談の予定が入っているのはこの街に屋敷を構える商人である。かつてのトルガの商売敵だった相手であり、トルガも己の家業を手放していない今は、互いに微妙な顔をして顔を突き合わす相手だ。
経済活動を盛り上げる商人というのは、領地の血液に近い。これから戦が起こるのなら、それがどことどこの勢力の争いであれ、商人をうまく使って物資と金を回さなければ、すぐに物価の高騰と治安の悪化が伝播してくる。
リュネストの出身だが、彼にはバンデイアの血が入っているのだろう。浅黒い肌の色は同じだが、髪の色は薄く顔立ちもトルガとは違っていた。
「お久しぶりです。少しお見かけしない間に、雲の上の方になってしまいましたね」
にこやかに笑い、手を差し出してくる。
「あなたにそんな態度を取られると、面映いな。以前の刺々しい物言いが恋しくなる」
「ご冗談を。私も自分の首は惜しいですよ」
彼の受け答えには以前のような張り合いがない。
同じ商人がいきなり出世して、面白く思われていないのではと思っていた。しかし、相手の言葉には嫌味よりも、かつての日々を惜しむような一抹の寂しさが感じ取れた。
トルガがそう思っているから、そう感じられるだけなのかもしれない。
かつてこの街で鎬を削った相手が、雌雄を決する前に勝負から下されてしまった。まだトルガも商売をやめてはいないが、その活動には〝領主の〟という枕詞がついてしまう。そこに生じる忖度を己の実力のように錯覚して振る舞えば、リュネストが傾きかねない。
彼らはトルガが貴族の席を拒めば、なんのかのと理由をつけて財産を取り上げて、自分たちの資金にしたのだろう。
それはつまらないし、気に入らない。
代わりに彼ら商人に、うまく動いてもらわなくてはならなかった。
ともあれ、それも簡単なことではないのだ。
もてなしのために供された茶は、もう少し北の国の好みだ。
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