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らぎ
2025-11-15 23:51:32
586文字
Public
モノノ怪
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離坤ドロライ第十回「口は災いの元」
出られない部屋ってやつです
ふと気がつけば、見知らぬ部屋にひとり座していた。
こう言った事態は然程珍しくはない。一言で言えば妖の仕業、というやつだ。ヒトの負の情念と結びつけばモノノ怪と成り果ててしまう妖たちは、普段は悪戯好きの無邪気な隣人のような存在で、十翼に滞在する薬売りたちと付かず離れずの関係を構築していた。
(
……
さて、この部屋の主は)
坤の薬売りは猛禽のようにぐるりと視線を巡らせて、黒幕を探る。しかしざっと部屋中を検分しても異変や妖の姿は見えず。はたと首を捻り、今度は視座を変えて部屋にあるもの一つひとつを観察する。
白い布団の敷かれた床はよくある畳敷き。襖はあるものの締め切られており、触れても押しても動く気配はない。その他には
……
空の衣桁。窓も行燈も無いが、室内は仄かに明るい。
殺風景と言う程でもないが、さりとて誰かが生活しているふうでも無い。布団と謎の衣桁を見比べる坤の薬売りの脳裏には令和あたりの現世で聞き齧った文言が嫌な予感と共にじわじわと蘇ってきたが、それらをつとめて追い払うべく首を振った。
「いや
……
しかし、アレならば二人要る筈で、」
「アレ、とは」
──不意に背後から聞こえてきた声は、聞きたかったけれど今最も聞きたくなかった、恋人の声。口は災いの元、という言葉をすんでで呑み込み、ひとつ息をする間になけなしの覚悟を掻き集めてゆっくりと、坤の薬売りは振り返った。
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