春野ツバサ
2025-11-15 22:19:28
6809文字
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神様は決して独りじゃない【ゴジュウの小話】

また書いてしま(以下略
というわけでゴジュウの小話第3弾となります。
そろそろいや、お前どんだけ書くねんとツッコミが来そうな予感がしております。いや、自分でもほんとにびっくりしているのですまさかコロナからの復帰第1弾がこれになるだなんて。予想もしておりませんでしたよっ
それも全て遠野吠って奴の――と、思いきや。なななんと今回のお話はゴッドネスのお話ですっ。
いや、まさか自称神様にコロリするだなんて。いやいやでも最新話のあれで堕ちないわけがないっなんなんですかこの神はっほんとたち悪いっっあんなかわいいけしからんもっとやr(強制終了
てなわけで。今回も溢れるパッションを形にしました。
見ようによってはちょっと矢印が成立しているように見えなくも、ない、かもしれない。ので、ちょいご注意を。
色々なトラブルに見舞われて大変そうなゴジュウジャーではありますが、いちファンとして最後までしっかりと見届けさせていただきますっ。
駆け抜けろっ突っ走れっ頑張れゴジュウジャー!!

 探偵において。人探しのスキルというのは基本中の基本、いわばマストスキルである。
 なんせ、私達に助けを乞う依頼人というのは大抵が何かを探し求め彷徨うものであり、それを見つけて欲しいと願う――つまりは失せもの探しが大半だからだ。そして、その願いを叶えるためにゼンリョクを尽くすのである。
 とはいえ、今私が探している人物は見つけるのにそれほど苦労はしない。むしろ見つけやすい方といっていいだろう。なんせ、自身を神と称し、世直しの名のもとにところ構わず人助けをしまくっているのだから。結果、高額なお救い料を要求するところまでがワンセットで、だ。
 よって、ターゲットを見つけるのであればトラブルが発生している場所をしらみ潰しに当たっていくのが確実で早い。そう判断して街中をぶらぶらと歩き回っていたのですが。
『ホッパーっ』
「ありがとうホパちゃん」
 手分けして探していたホッパー1(私が頼んだわけではなく自発的に手伝ってくださいました)こと、ホパちゃんがカードに入った状態のままでひらりと舞い戻ってきた。本来、この世界に存在していないケミーを自由に彷徨かせて大丈夫なのかとツッコミが入れられそうなのは十分承知しております。けど、元くまのおもちゃがなんの違和感もなくふっつーにあっちへびゅんびゅんこっちへびゅんびゅん飛び回っている世界である。カードが1枚ひらひら飛んでいても誰も気にすることはないだろう……タブンネ。
 ホパちゃん案内のもと、とある場所へとやってくる。そこにはもはや見慣れた白と金のローブをまとった後ろ姿があった。
 見つけた瞬間思わず苦笑を漏らす。やはりというか案の定というか。どうやら今日もせっせと世直しを敢行していたらしく、見知らぬ人と目当ての人物と肩に乗った元くまのおもちゃが何やら話をしていた。
 ……こういうところはまめだなーと感心する。
 高額な世直し料も、利益目的というより、己への戒めの側面が強いし。かつての彼の仲間が彼を想って進言したように。

「やぁーどうもー。今日も人助けご苦労さまでーす。
 自称"神様"?」

 にこやかに呼んでやれば。話を中座して自称神こと、熊手真白はなんだと言わんばかりに振り向いたのでした。

「お前か。今日は2代目は一緒じゃねーぞ?」
「む。その言い回しだと私が常に吠くんとつるんでるみたいではありませんか」
「違わねーだろ。お前は随分と2代目のことを気にかけているようだからな」
 ふふん、と得意気に腕を組む自称神様にむむ、と渋い顔になる。
 まぁ、吠くんは吠くんで抱えているものが厄介だからなるだけ目を離さないようにはしていますが。どうにも弱いのですよね弟属性の子って。どっかの邪悪の王様しかりどっかの検索ヲタクしかり。ちょっと目を離した隙に何しでかすかわからんといいますか。あくまでお姉さんとしてですけどねっ。
「今日は吠くんに用があって来たんじゃないですよ」
 そうなのです。今日は吠くんが目当てじゃない。私の今日の目当ては――
「ならなんだ。もしかして。俺様に世直しの依頼でもしに来たのか?」
「んー。当たらずしも遠からず、といった感じですかね」
「え。」
 肯定して差し上げれば。ぽかんとした表情を浮かべる自称神様です。その表情があまりにレアで思わず笑ってしまいます。衝撃で固まる自称神様に対して。世直し、というワードに反応したのか、肩に乗っていたくまのおもちゃ、もといベアックマがきらりん、と目を光らせたのには、気付かないでおきます。
「実はですねぇ。私の知り合いに普段は俺様は神だ崇めるがいいとオラついている割にその実独りが苦手ではちみつを摂取しすぎるとぐねぐねしちゃうとんでもないさびしんぼうさんがいまして」
「む。」
「あまりにさびしいさびしいと泣くものですからもう見ていられないんですよ」
 困ったものですねーと付け加えやれやれと頭を振る。
「んんっ。それは、また、随分と厄介な奴だな」
 咳払いで誤魔化そうと試みる自称神様ですが、無意味ですからねそれ。私に働いた不逞を忘れたとは言わせませんよっ。明後日の方向みないっ。
「あまりに見てられなすぎるんで。その泣き虫な知り合いさんを労って差し上げよーかなーと」
「ほ、ほう。そうか。それは随分と殊勝な心がけだな」
「その知り合い、なんだか熊手みたいなやつクマね――むぐっ」
 ベアックマの口を塞ぎ黙らせた。誰がやったのかはいわずもがな。
「それで。その知り合いって奴をどうやって労るって?」
「簡単ですよ」
 にっと笑って一歩前に出る。距離が狭まり見上げる形で自称神様と目を合わせた。

「デートしましょう。自称神様?」

「はっ、で、なんっ!?」
 ぱちぱちと。2度3度とまばたきを繰り返してそのままフリーズしてしまった自称神様でしたが、再起動した瞬間に発火されておもきし動揺されておりました。わーわかりやすい。つか、神様モードだしある程度耐性あると踏んでいたのですが、この反応を見る限りどうやらそうではなかったようです。
「クマーっ。熊手とデートだなんて10000年早いクマーーっ」
 依然発火したままフリーズする自称神様に代わって早速噛みついてきたのはやはり神様の運命共同体であります。まぁ、想定内でありますけどね。
「勘違いなさっちゃあいけませんよベアックマくん。
 私は真白くんとデートするとはひと言も言っておりません。
 自称神様ことゴッドネス熊手様に世直しの依頼としてデートしてくださいとお願いしているわけです」
 荒ぶる相棒くんを舌先三寸でどーにか黙らせます。言い切ったと同時にむぐぐ、と唸っていたかと思うと、あーいえばこーいうクマとかってぼやきが聞こえてきましたが、聞かなかったことに致します。
 ……ここにグーデバーンくんがいなくて良かった。いたらさらに面倒なことになってた。
…………な、なるほど? つつつまりはよよ世直しのいい一環といいいうわけだななななるほど」
 動揺しすぎでしょ。修学旅行の恋バナのあれはガチ目に素だったってことですかね? ピュアっ子か。
「んじゃーりょーかいも取れたということで早速行きましょーか」
「今か!?」
「もちろん今からですよーほら早く早く」
 くるりと後ろに回って背中をぐいぐいと押し出します。前からちょ、押すなとか。クマもとーぜん一緒に行くクマっとか聞こえてきましたが、もちろんスルーでございますっ。

 デートしましょう。
 とは言ったものの。別に特段特別なことはしていない。
 ちょっとレトロな喫茶店でホットケーキとお茶を嗜んだりゲーセン(店ごと買い取ろうとした自称神様を慌てて黙らせました)でクレーンゲーム荒らしをやったり(やったのは主に自称神様ですが)と。あっちへぶらぶらこっちへぶらぶら程度のものである。
 なんせ、この自称神様ときたらいったいどういう経緯で結んだ縁なのか、海外のVIPともコネクションを持っているようなとんでも人物である。ちょっと小洒落た場所へと行こうものなら一体どこへ連行されるかわかったものではない。ので、本日はあくまで庶民らしい物見遊山であります。決して懐事情を考慮したわけではありません断じてっ。ちなみに余談ではありますが、腹ごしらえのためにおでん屋さんにでも足をのばそうかと思いましたが、自称神様に勘付かれて米俵担ぎされて逃走されてしまい失敗に終わりました。鋭いな流石に。

「んまっ」

 休憩がてらやってきた広場に停まっていたワゴンで売られていたクレープを買い1口かじって出た第一声がそれでした。
 甘すぎない生クリームと酸味の効いたいちごのマリアージュが最高で絶品でありますっ。
「クレープにははちみつをかけるともっと美味く――ふぐっ」
「人の食べるものにはちみつをかけるのは禁止だと言ったはずです」
 どこからともなく取り出したはちみつを容赦なくぶっかてきそうになったので脳天チョップをおみまいして黙らせました。
 むぅ、と頬を膨らませる真白くんに構わずクレープを再び頬張ります。うん、美味しい。
 クレープをかじりながらなんとはなしに周りを見渡す。
 設定されたテーブルで私達と同じようにクレープを食べながらいちゃいちゃもとい仲睦まじげな男女。広場を元気に走り回る子ども達とそれを見守るお父さんやお母さん。極々ありふれた日常のひと時が広がっている。
「平和ですねぇ」
 しみじみと漏れた感想がそれだった。
「表面上はな」
 ふん、と。鼻息を荒くつきながらがぶり、と勢いよくはちみつがたっぷりとかかったクレープに豪快に噛みつく自称神様に思わず苦笑いする。
 彼が願ったのは全ての人が幸福に生きる世界だ。残念なことに今のこの世界はお世辞にもその願いがかなったとは言い難い。そのことが不服なんだろう。だからこそ自らが神の座につくために再び戦う道を選んだわけだし。
「それでもです。人々が笑っていて。この世界が存続しているのは十分に幸福なことだと思いますよ?」
 納得がいっていないのか、自称神様の表情は歪んだままだ。
「20年前に。貴方とソーちゃんが厄災を祓ってくれたおかげですね」
 ひゅっ、と。息を飲む音がした。
 おや、と思い隣を見る。てっきり、このゴッドネス熊手に感謝するがいいっ――くらい言ってくるかと思っていた。でも、そうではなかった。
 映ったのは何やら俯く自称神様の絵。その瞳に宿るのはほんの少しの揺らぎ。
 ……嗚呼。
 自称神のゴッドネス熊手じゃない。熊手真白という1人の人間がそこにいた。
……まぁ、その代償が20年の封印となると、貴方としては不本意ではあるでしょうけど」
 厄災との争いは真白くんとテガソードの人神コンビの勝利に終わった。そこは素直に喜んでいいところだろう。
 けど、真白くんにもたらされたのは栄光だけでなく、影もだった。
 時空の狭間への封印。
 グーデバーンによって封印が解かれるまで、ざっと20年の歳月を費やした。
 20年。
 改めて言葉にすると途方もない時間だ。
 人がこの世に生まれ落ちて大人と呼ばれるようになるまでと同じ時間。どっかの人ならざるモノ達からしてみればほんのまばたきをするような時間だろう。けれど、人にとっては決して短くない時間だ。
 さらに。真白くんは時空が乱れる狭間の世界でプラス1万年の時を独りで過ごしている。吠くんがノーワンの世界に飛ばされて大切な家族を失くしたように。真白くんも大切な何かをなくているのは間違いない。孤独に苛まれて恐れるのは無理もない。私が現状唯一認める神様である彼だって、傍らには常に姉と呼ぶ存在がついていた。その神様だって、千年の時を得たときには色々荒みまくっていたし。
「それくらいどうってことはねぇ。なんせ神だからなっ」
「どうとも思わない人はさびしいから誰か側にいてーと泣いたりしないと思いますがねぇ」
 カウンターパンチが効いたのかむぐ、と黙る自称神様です。それに対して、それにと続けて追撃をかける。
「貴方が生み出したその相棒くんが。そのなによりの証ではありませんか」
「クマーっ。熊手はクマにずーっと一緒にいて欲しいって言ってくれたクマー♪」
「ベアックマ!?」
 ぽっ、と。ほっぺたをいちごミルク色に染めてきゃっきゃするベアックマに慌てる真白くん。捕まえようと手を伸ばすけど余程動揺しているのかひらりひらりと飛び回るベアックマの動きを補足しきれておらず、はた目から見るとただじゃれついてるようにしか見えない。その仲睦まじさに笑いが零れる。
「寂しいと思うことが悪いとはいいませんよ」
 ようやくベアックマを捕まえた真白くんと目が合う。
「寂しいってことは。誰かと想い合えることを知っているということです。大切だと思える誰かがいたということです」
 そう告げれば。真白くんから目を逸らされてしまう。その脳裏に浮かべているのは誰なのか。私にはわからないし深追いするつもりもない。
「確かに。20年前の貴方を知る人はもういないのかもしれません」
 でも、と付け加える。
「今の真白くんを知ってる人達なら、もういるでしょ?」
 吠くんをはじめとした次代のゴジュウジャー。
 真白くんの後を追う者達。
 それぞれが望む願いはバラバラだけど。だからこそ、競い合う相手を見落とすことはない。
「熊手真白を知る人達はこの世界にちゃんといる。
 君は独りじゃない。だから。寂しくないよ。大丈夫」
 丸くなってしまった背中をぽん、と叩く。
「まぁ、今の君にはベアちゃんもグーちゃんもいるし孤独ではないでしょうけど」
 私の言葉にえへん、と胸を張るベアックマに笑いが零れる。だけど、真白くんの表情は晴れないままだった。
 ……これだけじゃまだ弱いか。
「真白くん」
 呼びかけるけど返事はない。ので――
「むぐっ」
 残っていたクレープを真白くんの口に突っ込みました。
 もぐもぐ。ごっくん。
「少なくとも。私の記憶から君の存在が消えることはないよ」
 クレープを飲み込みぽかんとする真白くんに、にっと笑った。
 例えこの世界の記録(コード)が再び書き換わることがあったとしても。その時に私はこの世界から離れているだろうから影響を受けることはない。
「熊手真白の存在は失われることはない。私がいる限りはね」
きっぱり言い切れば。真白くんの顔がぐしゃり、と歪む。
……どうして。そこまで気にかけてくれるの……
 それまで黙って話を聞いていた真白くんがようやく口を開いた。それも口調がさびしんぼモードで、だ。思わず面食らう私。
 え。酔った? 酔ったの? まだ今日そんなにはちみつ摂取してないですよね? ぐねぐねもしてないし。俺にゃんが出てないだけまだマシですがっ。
 うるうるとしたおめめで見つめてくる真白くんに思わずぐっ、と呻きそうになった。
 訂正。呻きました。
 いやいやこれは無理っ。なんですかこのヤバい生き物はっ。いつもの俺様調子はどこいったっ。神様モードじゃないと調子狂うなっ。
 ……いや。違うか。
 これが熊手真白という人間の素の顔なのか。なら――
「そうですねぇ。似てるからかもしれません」
 ほんのちょっとだけ。自分の胸の内をこぼしてもいいのかな、なんて思った。
「似てる?」
「独り、という点においては。私も貴方とそんなに変わりないので」
 首を傾げる真白くんを横目に空を見上げた。
 元いた世界を離れて。あっちへふらふらこっちをふらふら。いろんな世界を彷徨う身。別にそのことに不服はないし、投げ出すつもりも毛頭ない。
 けど。
 ふと、時々。懐かしくなる時はある。
 「彼等」は今どうしているだろう、とか。あの街を守りきれているだろうか、とか。全く気にならないわけじゃない。
 この旅に終着点があるのか、正直いってわからない。下手をすれば一生このまま当て所なく流離うことになるかもしれないと思わなくもない。まぁ、それならそれでいいけども。

……ならお前も。俺様の家族になるか?」

 黄昏れていたタイミングで告げられた言葉に耳を疑う。
「えぇ?」
 唐突に何を言い出すのだろうかこのぐねぐねは。
 胡散臭げに見れば。なにやら意地の悪い笑みを浮かべる真白くんと目が合った。
 見覚えのある顔つき。一体何時の間に復活していたのか。完全に自称神様モードに戻っていた。自身の存在が失われることがないと安堵したからか。戻ったのはまぁいいにしても、ほんとに唐突過ぎて意味がわからないすぎる。
 私の言葉に何かを感じ取ったのか。自分と似たような存在に神様流の憐れみをかけたのか。
 ……ははぁ。
 黙って真白くんを見ていて。その表情からピンとくる。おそらく、私がいつもの調子でのらりくらりとかわすのを前提にして言っているのだと。
 なるほどなるほど。そういうことね。それならば。
「そうですねぇ。それもいいかもしれませんね」
「え。」
「クマっ!?」
 意趣返しが効いたらしくまたもぽかんとする真白くんとぎょっとするベアちゃんに内心で笑いが漏れる。ふふん。この私をだまくらかそうだなんて1万年早いのですよ。
 固まる男2人にただし、と付け加える。
「ただし、貴方が今回の指輪争奪戦でもう一度王者(チャンピオン)になれたら。
 その時は考えてあげますよ」
 にやりと。意地の悪い笑みを返してやった。

 後日。真白くんからお手製の熊手ファミリーコートを吠くん達がいる前で押し付けられてひと騒動起きることになるのだけれども。それはまた別の話です。