ぽふむん
2025-11-15 21:49:44
1554文字
Public ワンドロ
 

有為の奥山

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

氷柱if
「参道」
大人になりなりを潜めましたが、二人は幼なじみのケンカップルだったという設定です

朱色の鳥居が連なる参道をしのぶは風呂敷包みを抱えて進んだ。
少し腹が重い。
お腹がきゅうっと張ってきた。ここは無理をせず休憩をとる事にしよう
参道を少しそれた所にある脇道に入る。
そこにはちょっとした広場のような場所があり、腰掛けるのにお誂え向きな岩があるからだ。
そこに腰かけた。
涼しくなってきたから不要かと思ったが、念の為携帯して正解だった。
腰に下げた水筒のお茶で喉を潤した。

「もう少しで本堂です。そこまで頑張るのですよ」

しのぶはきゅうきゅうと張るお腹をさすった。
この神仏習合の名残のある寺院の参道は勾配がきつい。
それも仕方がない。
戦国の頃の山城の遺構を利用しているそうなのだから。
そこでの戦死者を供養することが目的で建てられたらしい。
遠い昔のことだから確認する術はないが、そう伝え聞いている。

「あらあら、困りましたね。早くに出たはずですが日が暮れてきました」

でも、登り始めた月は見事だ。
広場にぽつんと佇む菩薩像と、風に揺れる色づき始めた木の葉。
そして浮かび上がる上弦の月

ああ、見事だ

「そういえば……ここでしたね。あの男と初めて出会ったのは」

あの男は七歳
しのぶは五歳だった。

「クソ生意気な男の子だったんですよ」

ふふっとしのぶは微笑んだ。

くしゅっ小さくしのぶはくしゃみをした
同時に大きな羽織が肩にかけられた。

「ごめんねぇ、生意気で」
甘ったるい男の声が降ってきた。

「ダメじゃないか、夜風は体に障る」
抱き上げられた。

この腹に宿っている子の父親だ。

麓の里で行われていた葬儀に行った帰りだ。
「身重の女は葬儀の手伝いなどできませんから。実家に行っていたら思ったより帰りに時間がかかりました」
「輿を呼べば良かったのに」
「遊んできたくせに、人の手を煩わせる訳には行きません」
生真面目なしのぶの言葉に男はアハハハと、高らかに笑った。

「それより、あなたも疲れたようですね」
今日は信者の娘の葬儀だった。
なんでも日頃から、なかなかに厄介な不良娘だったらしい。
親も手を焼き、この男の元に度々相談に来ていたそうだ。
そんな矢先、その娘は悪い仲間とつるんだばかりに犯罪に手を染め……

口封じかとかげのしっぽ切りか殺されたらしい。

「ま、色々とねぇ」

嫌な話を聞かせまいとする配慮か なんなのか、男は話を逸らした。
「それより、しのぶちゃんは随分と上機嫌だね」

それはそうだ
「カナヲが……団子を作ってご馳走してくれたんです」
「ええ、それ大丈夫かい!」

童磨は眉間にしわを寄せた

「大丈夫ですよ。アオイの助力もあったそうですから」
しのぶのその言葉に、童磨は安堵の吐息を吐いた。
カナヲと童磨の仲があまりよろしくないことはしのぶも知っていた。
しのぶの手前、できるだけ態度に出さないが

(カナヲ信用ありませんねぇ。でも、このくらいですんでいるのであればそれでもいいんでしょうね)
しのぶは苦笑いした。
この二人を仲良くする事は不可能だろう。
それは、今日葬儀に行ってきた信者の娘の更生が不可能であったことと同じ。
最悪の結果となってしまった、信者の娘の末路を思えばこれでいいのだろう。

それよりも、今は可能な限りで更生のため助言してきていたのに徒労に終わったこの男の悲しみを癒したい。

「あなたに喜びのおすそ分けです。お店でみたらし団子を買ってきました」
しのぶは風呂敷づつみを差し出した。
「だから、あなたのその疲れ。半分いただきます」
そう言うや否や、しのぶは童磨の首筋を軽く甘噛みした。

「はぁああ?ちょ……や、ダメだって。我慢が効かなくなるから……煽らないで」

月夜に童磨の絶叫がこだました。