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山本
2025-11-15 20:49:15
3290文字
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神よりもなお
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神よりもなお【3】
悪魔の神父🐯×デザイナーズベビーのカントボーイな元人間🕒
王都に着いて教会へ戻った2人
【3】
八日かけて歩き王都に到着したローとサンジ。サンジに与えられたローの唾液
……
もとい、体液とエネルギーは六日でようやく定着し、残り僅かな距離ということで結局全て歩き通した。
王都に着く頃にはサンジも疲労なんて感じない体力が身についており、ローは予想より早く馴染んだと微笑んでいる。王都に入ってからはこの国で一番権力を持つ騎士階級の準貴族に面会し教会本部へ。
教会本部では準貴族の騎士の男から受け取った書状を手に異端審問の件の報告とサンジについての説明をした。異端審問に向かった村ではおよそ人間とは思えない肉塊があり、ローの手に負えない物体だったため討伐を勧める旨の報告。サンジについては準貴族の騎士男性から出発前に依頼されていた人物の保護と庇護のため連れてきたと説明。異端審問に向かった村の肉塊に関しては、国の英雄たる騎士が手を貸してくれるかもと付け加え話した。
この国は元々治水に難があり、春には国の北方にある山からの雪解け水で度々起こる洪水。その割に何年かに一度の頻度で起こる干ばつ。洪水では川から溢れた水により街や村は水浸しになり大勢が流される。干ばつの際は農作物は枯れ果て育たず、それにより食糧不足が発生し多くの者が飢えや渇きに死亡していく。
そんな自然の脅威に苦しんでいたこの国を救ったのが騎士という準貴族の称号を与えられたサー・クロコダイルだ。北の山に棲み洪水や干ばつを起こしていると噂されていたドラゴンを退治してきたと称し、それ以来本当に洪水も干ばつも起こらなくなって上下水道設備も整備した男。若くしてそれらを成したクロコダイルに王も貴族も国民もいたく感謝し、誰一人反対することなく準貴族の騎士という階級を与えられた人物だ。
出身はこの国ではないらしく、二十代そこそこの頃にこの国へ移り住んでいくつもの戦争で手柄も挙げたほどに強い男。その栄光から国中からの信頼が厚く、国王すら敵わないほどに強い権威を持つ教会へも多大な影響力のあるクロコダイルは、教会上層部へ密かに利益を供与することで長らくその圧倒的な発言力と地位を維持し続けている。
まあ、ローに連れられ顔を合わせて悪魔だと一目でわかってしまったが。
「で、おれは今日からローに身柄を預かられて保護される元王族ってワケか」
「そうだ。身内から放逐され国を追われた元王族。その出自から保護の必要があるから、より安全な教会でおれの従僕として身分を隠した状態で庇護する話になってる。まあ、大体そのままだから特に気にする必要はねェ」
面会した際クロコダイルが実に愉しそうな笑顔でサンジに関しては任せろと言った台詞。その代わり教会上層部へは元人間の肉塊の討伐にそれとなくクロコダイルを推すよう命令。それで対価でいいと言いサラサラと一枚の書状を書いて手渡した姿に何かを企んでそうだと思っていたが、あの片手間に書いていそうだった書状がそんなにすごかったのかと言葉を失う。
「あのクロコダイルってのァそんなにすげェのか。確かに強そうだとは思ったが
……
」
「奴はおれたち悪魔の中でも上位の強さの存在だ。おれも一応その一部に数えられちゃいるが、おれより上位とされてる。そういった連中のほとんどは食事の好みとして人間の肉体や感情、生命を喰う。味の好みってだけで強さには関係ねェがな。上位下位ってのはおれたちじゃなく教会サイドの方で勝手に言ってるだけの話だが、強い連中ってのは大体人間の宗教の中でも話に残ってはいるんだ」
「
……
ローそんな有名な悪魔だったのか」
「
……
おれは人間の味は好きじゃねェからわざわざ殺そうとは思わねェが、邪魔なら普通に刻む。バラバラになってなおしゃべる人間に、退治しようとして群れで襲いかかっていったら一塊の生きた肉に変えられたりと。他にも心臓を奪われてなお死なねェだのとされちゃあ人間には恐怖の一言に尽きるんじゃねェのか?」
サラッと言ってのけたローに返す言葉もなく確かにと納得するサンジ。ローがハエでも追い払うかのようにそんなことができるのは目の前で見ているので何も言いようがない。
「人間を取って食って力が強くてなかなか死なねェってだけで脅威でしかねェのに、蚊かハエでも追っ払うみてェにそんなことされちゃあな。ところでクロコダイルってのはどんな力を持ってんだ?アイツも人間をバラバラにすんのか?」
「いや、ミイラだな。奴は砂と渇きの力を持ってる。その力を使って水脈を探したりするのもお手の物だし、砂嵐を起こしたり大地を砂漠化することもできる。死なねェ程度にミイラにしたりとか、奴の操る砂に触れた相手をミイラにしたりとかな。砂嵐に巻き込まれりゃ吹っ飛ばされるのは確定だし、水脈を探し当てる能力を活かして井戸を枯らすことくらい朝飯前だ」
淡々と、サラリと告げるローにサンジがきょとんと目を丸くして少し考え込み、呆れた顔で荷物を整理する手を止めた。
部屋数の関係と庇護の目的のため、従僕という立場ながら一人にさせずに済むようローと同室扱いとして幹部用の広い部屋にローと住むよう言われた。それに際してローの部屋の荷物を移動させる必要があるため、サンジも手伝いローの荷物をまとめている最中だ。
「
……
それってよ、少なくともこの国の長く繰り返した干ばつは奴のせいって可能性が
……
」
「フッ。わかったか?ちなみに春の洪水も奴の仕業だ。雪解け水が流れる川を堰き止めて頃合を見て一気に流す。それで流された人間を食ったり、雨の少ない年に地下水脈を枯らしてわざと水を不足させたりな。負の感情を抱えた人間が美味いらしい。だから人間だったあの村の連中も食うつもりなんだろう。一塊の肉塊にされて意識はあるのに死ねねェなんて負の感情の塊だろうからな」
「趣味悪ッ」
ニヤリと実に楽しそうな笑顔で話したローの言葉にサンジがげんなりしたドン引きの顔で呟く。サンジがドン引きしたのはクロコダイルの食の趣味と、それらを話したローの笑顔に、だ。とんでもなく趣味が悪いと思う。この間まで人間だったサンジには理解不能の趣味である。
「さて、この箱で最後だな。荷物は雑用に運ばせるから廊下に出しておいてくれ」
荷物をまとめ終えるとローがそれだけを言って部屋を出ていく。サンジは言われた通りに廊下へ子供二人くらいなら余裕で隠れられそうな大きさの木箱を数度に分けて運んだ。
木箱を運び終えて少しした頃にローが聖職者ではなさそうな服装の男性二人を引き連れて戻ってくる。何らかの名称ある役職なのだろうが、男性へ興味がないサンジには彼らの役職に興味がない。ただ、仕事を頼むのなら何かしら礼になるちょっとしたものくらい渡したいとポケットを漁りローから指示を受けている二人に近付く。
「なァ、ロー。こいつらにコレやってもいいか?」
「
……
構わねェが」
「良かった。なァ、あんたら。手間をかけるがよろしく頼むよ。これおれももらったモンだが良かったらもらってくれ」
ローに許可を得てポケットから取り出した金属製の小箱を二人へ差し出す。それはボンボニエールと呼ばれるキャンディーボックスで、デザイン性の高い箱の中には大体が高価な砂糖を使った菓子を入れられてある。そういった類はかなりの量が贈答品としてのもので、サンジもクロコダイルから元人間なら食えるだろうと寄越された物だ。
許可を得て中を見るなり、目を丸く見開き驚く二人。かなり着古したような服装の彼らは位の高い役職などではないと見受けられ、高価なお菓子として認識されている砂糖菓子、今回小箱の中にあったシュガードスパイスに驚きが隠せないらしい。
シュガードスパイスはシナモンやジンジャーなどの香辛料に砂糖をまぶしてコーティングしてあるお菓子で、高価な嗜好品として認識されているものだ。
信じられなさそうに驚く二人へ、二人で食べてくれと笑顔で告げ、ローと並んでその場を離れる。ローは少々呆れたように見ていたが、サンジの損得を考えないそういった素振りが気に入っているらしく笑みを浮かべて歩を進めた。
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