「サンダルフォン、明日は空いているだろうか?」
珈琲から口を離したルシフェルはそう言ってサンダルフォンに話を切り出した。
ここは俺とルシフェル様の部屋。日課となりつつあるルシフェル様との珈琲タイムを過ごしていた所だった。
「明日は任務が入っていないので特に予定は無いです。もうすぐ古戦場があるから今のうちに休んでおくように言われました」
古戦場
…。思い出すだけで辛くなる。いやいや、今は折角ルシフェル様と過ごしているのだから考えるのはやめよう。
「そうか、ではデートに行かないか?」
「でっ、デート!?、つ、謹んでお受けします!」
「良かった。では明日の朝、支度が整い次第出かけよう」
そう言ってルシフェル様は満足そうに残りの珈琲に手をつけた後、デートプランを考えたいけど君には内緒にしたいからと言って部屋を後にするのだった。
ルシフェル様に想いを伝えて恋人という関係になったのは2週間前。2000年もの間思い焦がれていた人と結ばれた事に浮かれていた俺だったが恋人という関係になってから1週間経ってある事に気付いた。
それは恋人になる前と殆ど状況が変わっていないという事だった。変わったのは同じ部屋に住むようになった事くらいだ。(ちなみにダブルベットで一緒に寝ているが、中庭時代もヒトの真似事として一緒に寝た事がある為、サンダルフォンにとっての恋人らしい行為には含まれていなかった)
ルシフェル様を失っていたあの時と比べれば今の関係性だって自分には有り余るぐらい幸せである。しかし、折角恋人という関係になったのだからもっとルシフェル様と親密になりたい。とかつての俺では考えられないほど贅沢すぎる欲望に囚われていたのだった。
ただ、いざ口にしようとすると本当に受け入れられるか不安になってきて話を切り出せなかった。なにせ「恋人になってください」としか言っていない。愛の形も色々あるし、恋人同士だからと言って必ずしも「そういった行為」をする必要もないのだろう。だか、俺はルシフェル様と「そういった行為」で愛を伝える事ができればと考えてしまうのだった。
どうやって話を切り出すか。そう考えていてあっという間に1週間過ぎてしまったが、まさかルシフェル様からデートに行きたいと誘っていただけるとは思わなかった。この好機を逃すわけには行かなかった。
* * *
「おはよう、サンダルフォン」
「おはようございます、ルシフェル様」
こうして俺たちは街へ出掛けたのである。
雑貨屋で珈琲を飲むのに合いそうなカップを見つけたり、本屋では本のタイトルを見て衝動買いしたりと幸せなデートタイムを過ごした。
本屋から出た後、ルシフェル様が話しかけてきた。
「サンダルフォン、何の本を買ったんだい?」
「す、スイーツの本です。喫茶室で出すメニューの参考になるかと
…」
「そうか。私も是非食べてみたいな」
「ルシフェル様には一番に試食して頂きますね」
衝動買いした本のタイトルは「恋人と親密に過ごせる方法100選」。本の帯に、これを実践したら彼ともっとラブラブになれました!と購入者の感想が書いてあった。後で熟読しよう。ルシフェル様にこの本の存在がバレないようダミーの本を買っておいて良かった
…。(スイーツを作りたいから買ったというのも間違ってはいないが)
一通り話終わるとルシフェル様が手を握ってきた。ルシフェル様曰く、人が多いからはぐれないようにと。デートってなんて素晴らしいんだろう。
そうして手を繋ぎながら暫く街を歩いた。街の中心部から少し外れた所に出ると珈琲の香りが漂ってくる事に気付いた。
「あっ、あれは喫茶店ですか?」
「そうだ。デートには打ってつけの場所だと参考にしたガイドブックに書いてあってね」
「そっ、そうなんですね」
ルシフェル様が俺とデートする為に計画を立ててくださった事実を改めて噛み締める。嬉し過ぎて碌な返事が出来なかった。情けない姿を見せていないか心配になってきた。何とか挽回せねば
…。
* * *
外のテラス席で珈琲を飲む2人。たまたまだが周りには人がいなく、まるで2人だけの空間のようだった。
「凄い
…。とても美味しい」
「ふふっ。気に入ってもらえて良かった。ガイドブックに書いてあった通り、味にコクが出ているな」
ルシフェル様はそう言ってガイドブックに書いてあった内容についてお話しされるのだった。
楽しそうにお話しされるルシフェル様をずっと見ていたい。だけど、俺にはどうしても聞きたいことがあった。
「ルシフェル様、どうして今日はでっ、デートに誘ってくださったのでしょうか?」
「ああ、理由を言っていなかったな。最近君が元気が無さそう見えてね。何とか元気付けられないかと団長に相談したところ、デートに誘うのはどうかと勧められたんだ」
団長
…。たまにはいい事を言うじゃないか、見直した。後日喫茶室でサービスをしてやろう。と、思う一方デートに誘うと言う手段を思いつかなかった事を悔やむサンダルフォンであった。
「そうだったのですね
…。実は貴方との関係に悩んでいて
…」
それを聞いたルシフェル様は驚いた様子だった。普段はあまり表情に出ないルシフェル様がここまで分かりやすい表情をするのは珍しい。サンダルフォンは自分の言い方が誤解を招く表現だったと気付き、慌てて訂正した。
「違うんです!ルシフェル!俺、実は
…!」
言え、言うんだサンダルフォン。と自分を鼓舞する。
* * *
何とか想いを伝えたサンダルフォン。恐る恐る目を開けると、顔を真っ赤にして「分かった、今夜試そう」と答えるルシフェル様が見えたのだった。
終わり
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