白殊皎(しらよし こう)
2025-11-14 20:00:00
1703文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

昼想夜夢

FGO【歳勇/土近(としいさ/ひじこん)】
深更、黒の剣士が目を覚ました場所は──だった。

土方さんと近藤さん1臨・黒の剣士。
お付き合いをしている二人。
事後です。
土方さんは寝顔のみ。

 またやったか……
 目を覚ました近藤は自分のいる場所に呆れた。
 そこは土方歳三の部屋、さらに、ベッドの上。
 目の前には彼の寝顔のおまけ付きだ。
 一応、自分と土方は想いを交わし、夜を共にする仲ではあるのだから珍しいことではないのだが。
 問題は、そうなった経緯である。

 最近、機械の電源が落ちるかのように突然意識が失われるときがある。
 その後決まってこの状況で目が覚める。
 しかも、自分の姿はかの特異点で黒の剣士と呼ばれた、生前とは似ても似つかぬ姿で。
 当然、驚いて土方に尋ねた。
 すると、自分はこの姿で虚ろな目のまま土方をおとない、抱いてくれ、と口走ったという。
 別の日には身体を重ねるところまではいかずとも、土方の寝所に勝手に潜り込み、一緒に寝かせてくれと強請ねだることもあったらしい。

──気にしなくていい、いつでも受け止めるから。
 土方はそう言ってくれるが、自分はなんとも寝覚めが悪い。
 意識が落ちている間に土方に迫っているのは本当に自分なのか。
 自分の中に巣食った何者かが自分の姿を借りて土方を利用しているのではないかと。

 最初はそこまで考えたのだが、いまではそれはない、と思うようになった。
 バーサーカーといいつつも、土方は理性で己を律する事の出来る男である。
 そうして訪った自分に他者の気配や思惑を感じたのなら決して自分を抱いたり、寝所に招き入れたりしないだろう。
 この苛烈な男は何者かが化けた偽の自分なら躊躇ためらいもなく斬って捨てるはずだ。
 それが大丈夫だからいつでも来い、と優しく招き入れてくれるということは……この自分は他に操られたりするのではなく、無意識ながら土方を求めているという事なのだろう。

 今回は──と様子をうかがうと、どうやら身体を重ねたらしい。
 普段から土方は後始末をきちんとしてくれるので、深刻な障りが残ったことはない。
 だけど衣服が夜着に変わっていたり、微かに残る身体の感覚が、昨夜確かに何かあったことを示している。

 全くもって、腹立たしい。
 普段自分がしたくてもなかなかできない〝土方に甘える〟ということを、無意識の自分がいとも簡単にやってのけているとは。

 取り立ててこの霊基ではそれが難しいと感じている。
 どうしてもあの特異点での記憶が先行し、自分を曇らせるのだ。
 それを知ってか知らずか、土方は殊更に優しく接してくれる。
 多くは語らないが態度の端々にそれが出ている。
 それでいて腫れ物に触るようではなく、確固たる意思を持って自分を支えようとしてくれている。
 ともすると自己否定に陥る自分を、髪を梳き背を撫で、大丈夫だ、と繰り返す。
──本当は自分こそ土方にそうすべきなのに。
 彼の方が何倍も傷付いて来ているというのに……
 なんて無償の愛だろう。
 なんて深い想いだろう。
 そんな想いをかけてもらう価値が、自分にあるのか。
 言えば、きっと土方は肯定する。
──あんたにだから、俺はこうするのだと。
 報いはいらない、自分の隣に、手の届く場所にいてくれるだけでいいと。

 百五十年……彼の走り続けてきた年月を考える。
 それだけの間、魂を磨り減らし彷徨ってきた。
 魂ごと消滅してもおかしくない中、叶わぬ思いを胸にただひたすらに──逢いたいと。

 ほだされたわけではない。
 同情でもない。
 自分も大概頑固だから、そんなものでは動かない。

 自分も、逢いたかった。
 もう一度、確かめ、想いを通わせたかった。
 彼の孤独な魂に寄り添い、共に歩むために。

 思索を打ち切って、改めて土方の寝顔を眺める。
 きっと、今までとは全く違う心安らかな表情……それが見られるだけでも、無意識の自分には感謝すべきかもしれない。
 まだ、自分では上手く心の留め金を外せない。
 それが自然にできるようになったとき、この記憶のない夜は終わりを告げるだろう。

──だから、もう少し待って。

 口には出さず土方の胸元に潜り込む。
 朝を迎えるその時まで、優しい体温に縋りながら……