こあらん
2024-12-01 10:19:39
6807文字
Public ロベシエ
 

記念日の話について (ロベシエ)

タイトルが思い浮かばない…。2人の恋人同士になった記念日は、絶対に違うだろうなぁ…と思って書いた話

 穏やかで柔らかく、まるで優しく身体を包み込むような春の日差しから、じりじりと肌が焼かれるほどの強さに変わってきている。この空の世界にも本格的な夏が近付いていると感じさせる、ある初夏の日の事だった。シエテは十天衆の仕事を終わらせ、グランサイファーに戻ってきていた。空の世界の為、全空の脅威と言わしめる十天衆として常に多忙のシエテは、長い間は艇には留まっていない。しかし、グランから頼まれた依頼や、約束の手合わせの為、定期的に艇に戻って来ている。まぁ、頻繁にグランサイファーに戻ってきているのは、他にも色々と理由があるのだが

 グランに挨拶をすませ、今後の予定を聞いた後にシエテは自室に戻った。グランは今日、停泊している街で引き受けた依頼があり忙しいようだった。シエテも手伝おうかと思ったが、グランからは帰ってきたばかりだし、シエテはゆっくりしていて、と言われてしまった。グランとの手合わせは明日となり、とりあえずは今日は予定がない今日は何をしようかなぁ、と思いながら十天衆の装備を脱ぎ、薄着のシャツに着替えながらぼんやり考えていると、コンコンとドアを叩く音がした。

「はいはーい、ちょっと待ってねー。今開けるねー。」
「ジュテーム!シエテ!今日という素晴らしい日にキミが戻ってきて嬉しいよ!くはは!キミもオレと一緒に過ごすのを楽しみにしてくれていたんだね!」
「???ろ、ロベリア……

 ドアを開けたら、大きな花束を抱えていたロベリアがそこに立っていた。薔薇や百合など、色とりどりの花を携えていて、ほのかな香りがあたり一面に広がっていく。その花束を持っているロベリアはこれ以上ないくらい上機嫌だ。何故花束を持ってきているのか、久々の再開にしては大袈裟のような気がする。ロベリアが機嫌がいい時は、大体は最高の音に巡り合った時や、シエテを巻き込んで何かをしたい時など‥‥今までの経験上、碌な目にあった試しがないシエテは、なんだか嫌な予感がしつつもロベリアを部屋に受け入れた。そのロベリアも、花束をシエテに渡し、スタスタと部屋の中に入りながら一人で会話を続けていた。

「長い間、キミが艇を抜けていたから、今日ちゃんと戻ってきてくるか心配だったよ。キミも今日、オレと一緒に過ごす為にわざわざ戻ってきてくれたなんてオレと同じ気持ちで、嬉しいよ!くはは!今日という日を本当に楽しみにしていたんだ。シエテ、今日はどうやって二人で過ごそうか。キミと一緒にやりたいことが沢山あるんだがうん、そうだな、まずはオレ達の想い出の軌跡が詰まったクラポティの観賞会とかどうだろう。うーん、それを聞くキミの反応を考ただけでトレッビアン!」

 花束を受け取りながら、ひたすら一人で喋り続けるロベリアに圧倒されたシエテは、呆然とロベリアを見続けることしか出来なかった。そんなロベリアは今も尚、喋り続けている。こんな上機嫌なロベリアは、今まで見たことがあるだろうか。なんで、こんなに嬉しそうなんだろう。花束を持ってくるという行動は珍しい、シエテは不思議に思いながら、受け取った花束をどうしようかと思案する。今、この部屋には花瓶がない、後で花瓶を調達せねばと考えながら、そっと花束をテーブルの上に置く。まずはこの上機嫌なロベリアを何とかせねば
 それにしても、やたらに“今日という日”という言葉を強調するが、今日、何かあったっけ?とシエテは考える。今は夏の初めで、あと少しでグランサイファーの面々はバカンスの為、毎年恒例のアウギュステへ赴く予定だが、今日は特に何もなかったはずだ。それとも、今停泊中の島で何か催し物があっただろうかーー先程まで近くの街にいたが、そのような話は聞いていない。
 というか、今、“オレ達の想い出の軌跡が詰まったクラポティ”って言ってなかったか。散々、音に残すのが嫌だから、自分の事に関しては録音するなと言っていたのに、やっぱりしていたのかと愕然とする。一体、いつ、どのやりとりを録音されたのか確認するのが怖いが、後で追求して何とかしないとそう頭で考えながら、シエテはロベリアに先程から気になっている事を聞くことにした。

「えーーと、ロベリア、久しぶり。元気だった?花束、そのありがとう。でも突然持ってきて今日はどうしたの?あ、もしかして久々に戻ってきたのが嬉しかった?お兄さんに会えなくて寂しかったのかな?なーんて」

 少しの冗談を交えながらのシエテの言葉に対してロベリアは、目を見開いて、キョトンとした顔でシエテの質問に応えた。

「何をいっているんだい、シエテ。今日はキミがオレのモナムールになって一年じゃないか!忘れたとは言わせないぜ」
………そうだったっけ……
「くはは!恥ずかしがっているのかい。君は相変わらず可愛いね、シエテ」

 ウィンクをしながら答えたロベリアに、ぼんやりとしながらシエテは答えた。
 そう、何を隠そう二人は恋人同士であった。監視という形でグランサイファーの団員の一員となったロベリアだが、他の団員に警戒されつつもうまく溶け込んでいた。自身が“全空一の天才魔術士”であるが故に、全空一の最強の武器の使い手が集まる十天衆が同じ団員であることを知り、十天衆に興味を持ち始めたのが事の始まりだ。相手が相手ゆえ、団長ことグランも頭を抱え、柔軟に対応でき、且つ何があっても対処できそうなシエテを紹介した。“監視対象の問題児”というわけなので、初対面時はどうなるのか内心冷や汗をかいていたグランだったが、意外にもシエテはロベリアに対しても表面上はいつもの通りの態度で接していた。しかし、それが逆にロベリアの関心を向けることとなってしまったのだった。表向きは友好的な態度を示しているシエテだが、それは“表面的な顔”で、裏には別の顔があり、そして、その奥には底が見えない果てしない力を抱えている事を感じとったロベリアは、シエテに興味を持ち始めた。その後、二人は徐々に交流を深めていき、ここでは割愛するが、紆余曲折を得て二人は晴れて恋人関係となったのであった。
 恋人関係になってからの二人は、なんだかんだ言いつつもうまくいっている、とシエテは思っている。十天衆の仕事で頻繁に艇を抜けているシエテに、ロベリアは不満をこぼしながらも大人しく待っていてくれている。また、シエテも(認めたくはないが)ロベリアからの受ける好意が心地よく感じ、自分なりにその思いを返そうとはしているつもりだ。

 そんな二人だが、どうやらロベリア曰く今日で二人が恋人になって一年経ったようだった。しかし、残念ながらシエテには頭になく、急に入ってくる情報に呆然とするしかなかった。そんなシエテの様子を見たロベリアも、おかしいと気付いたのかシエテに質問をした。

「まさか、キミ、気付いていなかったのかい?」
「え!!そ、そんなことないよーー!い、いやぁー。ちょっと最近忙しくて日にち感覚がなくてさぁー…………本当に今日だったっけ
「ウィ!今日というこの日を、去年しっかりクラポティに録音しておいたからね!間違えるわけがないさ!」

 ウィンクをしながら、満面の笑みで自信満々に答えるロベリアを見て、自身に身に覚えがなくてもそうかのかなぁ、と思ってしまう。そう考えながら、シエテは一年前の記憶を振り返ってみるーーー去年の今頃、一体二人の関係はどのようなものであったか。確かに、よく二人でいる機会は増えてきていたような気がするが、恋人同士であったか、というのはいささか記憶にない。ロベリアとが関わりだしてから、忙しい日々が更に忙しなくなり、感情面でも振り回され続けられてしまい目まぐるしい毎日に変わっていった。なので、いつ何がどうだったのかわからない、というのが正直の所だ。しかし、自身の幸福についてとことん追求するロベリアだ、このような事をしっかり覚えているのも不思議ではない。おまけに、花束まで用意して今日を迎えているのだ恐らくそうなのかもしれない。

 そうか、恋人同士というものは、ある程度の年月が経ったら祝うものなのか。確かに記念日がどうのとか、聞いたことがあるような気がする。今では、グラン主催の季節イベントに積極的に参加しているシエテだが、それらも十天衆の皆やグラン達グランサイファーの面々に出会うまでは無関心であった。おまけに色恋沙汰にも疎かったので、そういう所まで頭が回らなかった。
 そうだとしても、忘れていたことは事実だ。誤魔化していても、勘のいいロベリアの事だからすぐに気付くはずだし、あたかも覚えていたふりはロベリアに対しても誠実ではない。その後のロベリアの反応が非常に厄介な予感がするが、正直に言おう、とシエテは決心する。ロベリアはきちんと覚えていて、花束まで用意してくれていたのだ。自分は何も用意せず、少し申し訳ない、とも思う。

……いやー、あ、あのさ、正直言うと、今日がそういう日だなんて頭になかったよ。何も用意していなくてごめんね」
「オーララ、さっきからキミの態度が変だったからまさか、と思ったが。はぁ、オレはてっきり、今日、キミがこの日の為に戻ってきてくれたのだと思っていたのだが。そう喜んでいたのはでうやらオレだけだったみたいだな。………くっ、くはは!まぁ、それでも偶然キミが今日戻ってこれたのは嬉しいよ」
「ご、ごめんってばー!」

 どのような時も、持ち前のポジティブ思想に持っていくのが得意なロベリアだが、心なしか落ち込んでいるのが態度で見て取れる。悪気があって忘れたわけではないシエテだが、落ち込んでいる恋人の姿を見て、胸が傷んだ。


「キミは、団が主催しているハロウィンとかクリスマスとかの季節のイベントは忘れずに参加しているじゃないか。こういう事は気を使うのだとだ思っていたが、違うのかい?」
「う

 こういう風に言われてしまうと何も返せない。確かに、十天衆の皆やグラン達を喜ばせる為なら何でもしようとしていた。ただ、自分自身に関してはどうしても後回しにしてしまう為、どうにも忘れがちになってしまう。今回に関しては、失敗したな、とシエテは思う。本当に頭になかった。無意識とはいえ、恋人を傷つけてしまって、胸が痛い。
 気まずい雰囲気のなか、チラリとロベリアの様子を伺う。ロベリアは、伏し目がちで、口元に指先を当てて何かを考えている様子だった。何を考えているのかわからないが、やはり、かなり落ち込んでいるのだろう。

「ロベリア

 落ち込んでいるロベリアを、シエテは抱きしめながら彼の頭を撫でた。ふわふわとした、いつも丁寧にセットしてある前髪は、触れると気持ちがいい。やはり好きな人が悲しんでいるのは辛いし、何より今回は全く頭になかった自分に非がある。忘れていた上に、お土産も今回は用意してきていない。埋め合わせをして少しでも元気をだして欲しいのだ。やはり、好きな人には常に笑っていて欲しい、とシエテは思う。 

本当にごめんね。何でもするから許してよ。元気出して、ね?あ!折角だし、これから一緒に出かけいや、デートでも行こうよ!メシでも食べに行ったりさ!お兄さん、何でも奢っちゃうよー」  
…………何でもする、といったかい」

シエテに抱きしめられ、慰められている間は顔を俯いていたので、ロベリアの表情がよく読み取れない。だが、「何でも」という言葉を聞いた時に、ピクっと身体を動かし反応をした気がする。

「う、うん
「そうか!くはは!それなら早速お願いしたいことがあるんだ!!」

 そう言いながら、ロベリアは先ほどの表情とは打って変わって上機嫌な様子で、パチンと指を鳴らし、巻き貝を出した後ベッドサイドにある棚に置いた。その後、シエテの肩を掴み、口を塞ぐ。キスを続けながら、徐々にロベリアのベットの方へ向かっていった。

「え、まさか今からやるの?まだお昼だよ?流石にちょっと早くない?せっかくだし、どこか出かけようよー。今日、グランちゃんから休みをもらったからさ」

 全くそういうムードの欠片もない雰囲気の中、いつの間にかベッドに押し倒されているシエテは、抵抗しながら答えた。

「久々の相瀬だ、当たり前だろう。シエテ、オレはキミがいない間、ずっとキミを想って待っていたんだぜ?それに、何でもするって言ったじゃないか。キミの気が変わる前にキミの可愛らしい声をクラポティに納めたいんだ。今までこれは絶対にやらせてくれなかったからね。くはは!!想像するだけで、興奮するよ!さぁ、お互いの想いをぶつけ合い、最高のアルモニーを奏でようじゃないか!」

「え、ちょっと録音は流石にーーー、ん、んぅ」

 最後まで言い終わる前に、唇を塞がれてしまった。最初は啄むだけの口付けだったのが、徐々に深いものになっていく。ロベリアからのキスを受け入れつつ、シエテもそれに答える。久々の恋人とのキスは気持ちがよく、快感で頭がふわふわしていく。ぼんやりとしていく思考の片隅で、シエテは今までの事を思い出していた。

 一年、一年かぁ。いつの間にか、そんなに経ってしまったのか。まだ数ヶ月程度しか経っていなかったような気がする。月日が経つのが早く感じるのは年齢のせいではないと思いたい。そういえば、ここ最近は十天衆の仕事が忙しかったし、グランサイファーに行くことも少なかった。ロベリアとこういう関係になった時も、確か自分は十天衆の仕事でとある街にいて、たまたまそこでグラン達に会って。その日は確か寒い冬で雪がちらちらと降っていて……ん、雪…………?ん……ちょっと待て


 今の季節は冬でも何でもない、夏の初め初夏である。


「ち、ちょっと待って、ロベリア。さっき俺達がこういう関係になったのって本当に一年前までだっけ?なんかこう、もうちょっと寒かった気がするんだけど

 引き続きキスを続けようとするロベリアの口を抑えて、シエテはロベリアに質問をする。ロベリアは、キスを妨害されて少し不満げな表情をした後、何を今更、といった顔で答えた。

「何を言っているんだい、シエテ。その時はすでにもう俺のモナムールになっていたじゃないか」
「え、えぇー。そ、そうだったけ
「そうさ!あの時、既にオレ達はお互いを想い合っていた!キミの瞳、そして鼓動がオレに伝えてくれた!そして、オレ達は結ばれたんだ。……まぁ、あの冬の日もオレ達は最高のアルモニーを奏でたいい想い出だけど、ね」  
……ん、んん〜〜???」

 なんだか、ロベリアの説明がいまいちわかりにくくてはっきりとわからない。シエテは、必死に一年前の記憶を手繰り寄せ、思い出そうとしていた。

「ち、ちょっと待った!!!そもそもその時は俺はお前に、その、そういう関係は無理だって何度も言ってたでしょ。そりゃー、なんか一夜の過ちみたいな事はあった気がするけど」 

 確かに、その時期からシエテはロベリアに惹かれ、揺らいでいる部分もあった。しかし、まだその時は今と違って自分の気持ちを認めていなかったし(認めたくなかった、という想いも強いが)、その旨を常にロベリアには伝えていたはずだ。それらの言葉は、ロベリアにいつも適当に流されていた気がするが、当時シエテは何度も「俺は誰とでもは恋人にはなるつもりはない」と言っていたと思うのだが

「何を言っているんだい。シエテ。オレはもうあの時からキミはオレのものだって確信していたよ。キミは恥ずかしがり屋さんだから、なかなか言えなかったんだろ?それはわかっていたさ!」
「いやいやいや!!あの時からもうそんな事考えていたの!ち、ちょっと待って、なんかお互い、こ、恋人同士になったと思っている時期ずれてない?い、一回話し合わなっ、んんっ
「シエテ、さっき何でもするって約束したよな」

 再び唇を塞がれた後、ロベリアはにっこり笑いながら、シエテの耳元で囁く。発言内容はともかく、耳元にかかるロベリアの息吹がかかり、ぞくぞくする。ロベリアは行為をやめる気がないようで、シエテの服の隙間から手を入れ、シエテの体を撫で始めた。いつも、そうだ。ロベリアは自身の要求は是が非でも押し通す、これに関してはシエテは何度も身をもって経験している。はぁ、こいつはいつもそうだ、毎回振り回される自分が情けなくなるでも、惚れた弱み、と言ってしまえばそれまでなのかも知れない。度重なるキスで疼く体を抑えながら、シエテは自身の腕をロベリアの背中に回し、抱きしめた。



おわり!