ひがあぎういな
2025-11-13 18:58:36
1692文字
Public トシカイ小説
 

友達とキスくらい

【トシカイ小説08】 あざジャス(付き合ってない)

【友達とキスくらい】


「あのジャスミンさんはキスってした事ありますか?」
「はい?」


助手席で眺めていたスマホに表示された文面に気を取られて、口から滑り出た言葉は配慮に欠けていた。ジャスミンさんの困惑した返事でその事に気付いて、慌てて訂正。


「いやあの違うんです!!変な意味じゃなくてSNSで気になる投稿がありまして!!!」
「声でっか大丈夫だから1から説明して」
「その、調査とは関係ないんですけど友達とキスくらいするって意見があって反応を見た感じ本当に普通みたいに扱われてて、驚いてしまって……


世間知らずだと言われる私ではあるけど、さすがにコレは騙されないよと苦笑してでも反応が気になって返信を確認したら、どうやらまた私の世間知らずさが発覚したみたい。


「はあ〜なるほどね。確かに学生の頃はあったな〜その場のノリでふざけてやったり、やられたり」
「あるんですか!?!?」
「こーゆーのは冗談通じなさそうな子にはやらないから、あざみーが経験ないのは理解出来るわー」
「キスって冗談で済むことなんですね
「そういうトコだわな」


ジャスミンさんは横顔で分かるほどニヤリと笑って言う。
センターの調査員としてだけじゃなく、人生の先輩としても私の知らない事をたくさん知っていて頼りになるジャスミンさんだから、知ってるかもと思って聞いたけど実際に私の知らないジャスミンさんの楽しそうな思い出を聞くと、なんだかモヤモヤして来ちゃうな。

私だってジャスミンさんとの思い出、もっと欲しいもん。


「ジャスミンさん!!私たちってもうお友達だと思ってるんですけど
「ん〜?今それ言うと『キスしてほしい』って意味になるよ?」
「あッ!!?ご、ゴメンナサイ、忘れてください!!」


しまった、羨ましくって焦りすぎた!
ようやく解禁されたお泊まり会みたいに、これからは私とも気が置けない仲になってほしいなって。前のめりになりすぎだよ


「忘れていいの?」
「ふぇ……
「あたし、あざみーならいいよ」


言いながら、ジャスミンさんはウインカーを下げて路肩に車を停めた。

暗くなってきた世界の中、街明かりとスマホの画面が浮かび上がらせた横顔の、唇が持つ淡い艶から視線が外せない。
体をこっちに向けて、しないの?と言いたげに目を細めて首をかしげる仕草はイタズラっぽくて、あぁ多分からかわれてるんだろうなって気付いていたけど。

もうどうにでもなれって、身を乗り出す。


(わ……柔らかい)


ぶつかりに行く勢いで触れ合わせた唇は想像よりあったかくて、ふにふにで、感動を覚える心地よさ。
しっかり感触を確かめたくて唇をはむはむと動かしていたら、肩とおでこにジャスミンさんの手が添えられて、やんわり引き剥がされた。


「さすがに長いって
「スミマセン!気持ち良くて、夢中になってしまって!」
「それにさ、友達とやるなら普通にほっぺとかじゃないの?」
「えっ」


そう言われればそうだ勝手に口だと思い込んでいたけれど、頬や手の甲にするのもキスだった。


「わ、私とんでもない事を!?」
「まぁ煽ったのあたしだし、こうなる気はしてたし」
「ジャスミンさぁん
「だーから、そんな泣きそうな顔しないの」


恋人とするような特別なキスを勘違いで奪ってしまったのに、ジャスミンさんは私の頭を抱き寄せて撫でてくれた。
気にしていない、と言葉より確実に伝えてくれる優しい手。うぅ大好き。

泣きそうになりながら顔を見れば、困り眉のまま笑ってお手本みたいに綺麗なリップ音がおでこで鳴った。


「ひゃ……
「あたしらはまだこれからでしょ。焦んなくていいよ」
「んへへぇはい!これから思い出いっぱい作ります!!」
「よーし、んじゃあご飯行きますか〜」
「行きましょー!」


あぁ、薄暗くて良かったぁ顔が熱すぎて、絶対真っ赤だもん。
お店に着くまでに落ち着きますように、と祈りながら私は頬を両手で包んだ。



(つづけ)