望月 鏡翠
2025-11-13 11:10:03
909文字
Public 日課
 

#1899 羊飼いの国5

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 意外なことに、星を見つけたのは幼い雛だった。
 侘助は、その幼く小さい生き物にそんな特技があるとは思っていなかった。
 流れ星は見つからなかった。落ちるときには空が青く見えるほど光っていたらしいが、今山肌を見通しても、そのように輝くものは何も見えなかった。羊飼いは視力に自信があると言っていたし、侘助も目はいい。
 しかし、これだけ広い山の中から、星一つ見つけるのは容易なことではない。
 大体昼時になったら、諦めて戻ろうという話になった。
 二人とも時計は持っていなかったので、太陽の位置から判断する概算だ。この世界にも技術的に時間を測る技術は存在しているらしいが、この山奥には届いていない。必要ないのだという。
 羊飼いの仕事は羊を中心にして、彼らが目を覚まし腹を空かせたら牧草地に出し、冬場であれば飼い葉を与える。そうして日が暮れたら狼が出る前に戻ってくる。
 人間が決めた絶対的な時間の経過がいつだろうが、関係がない。
 その頃になったら羊飼いも腹が減るから、戻って共に食事をしようと侘助を誘ってくれたのだった。
 日が徐々に高くなっていく。
「もし本当に未練があるなら、明日私がもう一度探しにくる」
「いや、いいさ。申し訳ないよ。最初から、雲を掴むような話だ」
 口ではそういうが、羊飼いの男は名残惜しそうに星が落ちたという山の方を見ている。あのどこかに空からこぼれ落ちた星の破片が転がっているのだろう。
「ロマンなんだろう? 急ぐ旅をしているわけじゃない。もう数日探してみてもいいさ。あなたには仕事がある。私は、寝る場所を貸してもらえればそれで構わないから」
 雨風を凌げるのなら、それこそ家畜小屋だっていい。遠慮しているわけではなく、本当にその場所でいいのだ。人がいない場所の方が、雛もくつろげるだろう。
「そうかぁ? じゃ、お願いしていいか」
 やはり、羊飼いの男は星を見てみたかったらしい。
 家族に紹介し食事を共にするため、二人は家の方に引き返した。ふと放牧場の方を見ると、白い羊の群れは遠くに移動していて、のんびりと草をはんでいるだけに見える彼らが、意外と活発に動くことに新鮮に驚いた。