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墨色
2025-11-12 18:58:57
1965文字
Public
れめししお題
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トリック or ???
れめししお題企画「仮装、イタズラ、降参」お借りしました。
ハロウィンコスプレで、獅子神さん宅にやって来た叶さん
「トリック オア トリート!!」
珍しくインターホンを鳴らして叶がやって来たかと思えば、ドアを開けるなり声を上げ両手を広げられた。
インターホンのカメラには顔のドアップで分からなかったが(あえてそう映したのだろうが)吸血鬼のコスプレをしていた。
「
……
その格好で家から来たのか?」
「タクシーだから大丈夫!
……
って、その前に言う事あるでしょ?!」
クルリと一回転し、マントを靡かせた叶がニヤリと口角を上げて、牙を覗かせる。
「おー、すげえ。それ付歯なのか?」
「そうそう、マウスピースみたいに被せられる
……
それも違くて!!」
へえへえ、と適当な返事をして、スラリとしたスタイルで吸血鬼を完璧に着こなした叶に一瞬見惚れたことは黙っておく。
しかし、にんまりとした笑みを浮かべる叶の表情から、それはすっかりバレてしまっていることを悟る。悔しいがいつものことだ。
それに満足したのか、叶がご機嫌な声で聞いてきた。
「それで?敬一君はなんのお菓子用意してくれてるんだ?」
「分かってんなら、さっさと入れよ」
人んちの玄関先で怪しい格好で騒ぐんじゃねえ。
「はーい」とイイ返事をする叶と一緒に、リビングへと進みダイニングテーブルに着くように促した。
オレはキッチンに行き、用意していたものを冷蔵庫から取り出し、叶の元へ戻る。
「ほらよ」
皿に並んでいるのはよく冷えたシュークリームだ。カスタードクリームとフルーツが挟まっている。
「おー、スゲエ!さすが敬一君!!ハロウィン前なのによく用意していたな!」
「テメエが昨日連絡してきたんだろーが!何がハロウィンの予行練習だ!!」
昨日叶から届いたメッセージには『ハロウィンにみんなで遊ぶ前に敬一くんにコスプレ見せに行くな!』と、こちらの都合を聞かない宣言だった。
「そこでちゃんとお菓子用意してくれるのが、敬一君だよな」
「用意しねえと文句言うのがオメーだろうが」
「と言いつつ、せっせとコーヒーも用意してくれている敬一君であった」
叶に付け加えられ、カップを引っ込めるか逡巡
……
している間にサッサと叶に奪われた。
だが、今日はこのまま読まれっぱなしのオレじゃねえ。
「さっさと食べろよ」
オレは叶の前の椅子に腰を下ろし、シュークリームを勧めた。一瞬、叶と視線がぶつかる。ヤベエ、気付かれたか?だが、ここで視線を逸らしたら負けだ。それは分かってる。
オレは、ひょいと皿からシュークリームを一つ取る。栗が飾られたそれを、叶の顔の前に差し出す。
「
……
ほらよ」
叶の瞳が輝くのが分かった。
「そこは『あーん♡』だろ、敬一君」
従わないと先に進まないことを悟る。
「
……
あーん
……
」
「サンキュ」
デカい口が広げられ、一口でシュークリームの半分が持っていかれた。
思わず、オレの口角が上がる。
「うん、カスタードクリームも手作りなんだろ?さすが、敬一く
……
ん?!な、なんだっ?!」
「だぁーっ!はっはっは!!引っ掛かったな!」
叶を指さし、笑い声を上げる。
「ほら、こっちは大丈夫だから」
コーヒーを飲む叶に、オレはイチゴが飾られたシュークリームを差し出した。
鋭い視線を向けられたものの、叶は大人しくそのシュークリームを口にした。
「
……
はぁ、敬一君はそういうことしないヤツだと思ってたのに」
「配信のロシアンたこ焼きで、全部にハバネロ入れるヤツに言われたくねえよ」
そう、オレが最初に差し出したシュークリームには辛子が入っていた。と言っても、クリームに混ぜ込んだわけではないし、量だってほんの小さじ一杯程度だ。
「あー、敬一君の手作りに目の眩んだオレの負けだな
……
」
降参と言うように両手を挙げる叶に、オレが満足していると「でも、さ」と言葉が続けられた。
「これじゃ、敬一君は『トリート』出来てないよね?だって『トリック』でしょ?コレは?」
綺麗な顔の吸血鬼が、うっそりと微笑む。イヤな汗が背中を伝う。
「いや、ちゃんとした菓子も食わせただろーが」
「んー、でもさ、イタズラだよね?」
叶が椅子から立ち上がり、オレの横に立つ。
「お菓子をくれなきゃ、イタズラするぞ」
耳元で囁かれる。さすが人気実況者様は声がイイ。ぞくりと肌が粟立った。
「どんなイタズラがイイかな?」
「優しいじゃねえか、決めさせてくれんのかよ?」
叶の人差し指がオレの顎をなぞる。
「敬一君が、口に出せるならな」
その意味を咀嚼し、頭が痛くなる。
「その通り!今夜は寝れないぞ」
「人の思考を読むな!」
文句を言うと、リップ音を立てて叶がキスしてきた。
「みんなで集まるときは、イタズラ禁止だぞ」
「
……
当たり前だろ」
オレの返事に、叶は満足そうに微笑んだ。
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