白殊皎(しらよし こう)
2025-11-12 20:00:00
1390文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

紅き瞳が映すもの

FGO【歳勇/土近/としいさ/ひじこん】
調査帰りの土方を待っていたのは黒の剣士だった。
彼は何を目的にその姿で立つのか。

 土方が微小特異点の調査から戻り、自分の部屋に入るとそこには近藤がいた。
 解除キーは教えてあるので、それ自体は何の不思議もないのだが今日はちょっと違った。
 ベッドの上で不貞腐ふてくされたように入り口に背を向けて寝ているのは、黒の剣士。
 珍しいこともあるもんだ、と土方は思った。

──近藤はその姿をあまり好んではいない。

 おそらく、特異点での振る舞いに自己嫌悪に陥るからだろうが……
「近藤さん、戻ったぜ」
………………
 近づいて声をかけても返事をしない。
 寝ているわけではなさそうではあるが、少し気になる。
「どうしたんだ。話せることがあるのなら言えよ、なんでも聞くから」
自分もベッドに腰掛けぽんぽん、と肩のあたりを叩く。
「遅い。それに……
 ぽつりとそうもらす。
「また無理をしたのか」
「?」
 無理とは、何だ? 土方は首を傾げる。
「いつもいつもいつも、おまえはあんなことをして」
 呟くくらいだった声は徐々に大きくなる。
 それを聞いて土方はあれか? と思い当たる。
 今回の調査の敵は案外骨があった。
 同行したサーヴァントたちも結構な傷を負い、最終的に自分が宝具で仕留めたが全員が満身創痍だった。
 自分の宝具は己の体力を削れば削るほど、傷を負って血みどろで立ち上がるほど威力が上がる。
 当然、そのあとしばらくは動けないこともある。
 今も傷を癒やすための魔力の供給を受け、バイタルチェックをして戻ってきたところだ。
「どうしたよ。あんたが気を病むことじゃないだろう?」
「ふざけるな! 一体、俺が、どんな気持ちであれを見ていると思う!!」
 近藤は勢いよく起き上がって土方の胸ぐらを摑む。
 土方が同行したということで、特異点での様子をダ・ヴィンチちゃんたちと一緒にモニタリングしていたという。
『俺が新選組だ!!』
 そう叫んで血溜まりの中から立ち上がる土方に胸が苦しくなるのだという。
 自分のせいでああなってしまったのだと、自責の念がわくという。
 聞いて土方は呆れよりも愛おしさが勝った。
 近藤はおそらくその戦い方を続けるのなら、自分は再びこの姿で新選組抹殺を企むぞ、と言いたいらしい。
「近藤さん」
 土方は手を伸ばして近藤の髪に触れる。
 色も相俟あいまってそれは極上の練絹ねりぎぬのような手触りだ。
「ありがとよ、俺を心配してくれて」
 そのまま、くしゃりと頭を撫でる。
「大丈夫だ。俺は必ずあんたのところに戻ってくる」
「──ッ、そういう問題では!!」
 紅の目を見開いて怒りをあらわにする近藤をそのまま抱きしめた。
「ばか……。ばかばかばかばかばか!」
 近藤はその腕の中でぽかぽかと土方の胸を殴った。
「失いたくないのは、俺も同じなんだ! いいか、もしいなくなってみろ、永遠に、おまえを……許さないからな……
 厳しい言葉とは裏腹に、その語尾はにじんでいた。
「それは、困る」
 土方は近藤の背に手を回し、子供をあやすように優しく叩いた。
「なら逝くな! 絶対に……逝くな!!」
「あぁ」
 誰よりも愛しいこの人が、こんなにも自分にも心を傾けてくれている。
 その僥倖ぎょうこうに土方はうっとりと目を細める。
 自分の戦い方は変えられないが、この先、何があっても必ず帰る。

 誠の旗に、集うために──。