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バラ肉
2025-11-12 13:17:11
4813文字
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ポッキーゲーム(スグ総愛され前提のフェニスグ)
ポッキーの日、大遅刻!!!
スグル総受け前提のフェニスグです。
スグはみんなに愛されてなんぼです。
その輪にフェニが参加しました。そして掻っ攫っていきます。
11月11日。
日本の子どもたちとの交流イベントに参加した正義超人の面々は、打ち上げ代わりに馴染みのキン肉ハウスへと集まっていた。
***
「かんぱーい!!」
賑やかな挨拶で始まった酒宴は、久々の仲間内での開催ということもあり、それはそれは大いに盛り上がっていた。
シャツを脱ぎ捨ててビール瓶をマスクの隙間に突っ込むイギリスの若大将と、それを心配そうに見つめるウォーズマン。自前のアコースティックギターで弾き語りをするバッファローマンと、絶妙なリズムで合いの手を入れるウルフマン。
その傍らで、折角だからとミートを観客に、ブロッケンJr.を相手どって酔拳を披露するラーメンマンに、『テキサス流の飲み方』だと半泣きのジェロニモの肩を組んで絡み酒をするテリーマン。
そんな、無礼講にも程がある彼等に、室内はまさに混沌と化していた。
一方で、いつもは一番に騒ぐ男であり、家主であるスグルはというと
……
机に突っ伏した形でツマミ代わりのポッキーを一本、咥えていた。
ポリポリポリ、と口だけで食べ進める姿はだらしなく。とろんとした目元を見るにすっかり酔いが回っているのが分かる。
しょっぱいのや辛いのに飽きた時に、と気を利かせたウルフマンが買ってきたそれは、『ポッキーの日』にちなんで店頭で山のように陳列されていたものの一つだ。
『もう〜ウルフマンも、メディアに踊らされちゃって!』
と、パッケージを見るなり揶揄っていたスグルだったが、ツマミと酒でごちゃごちゃした口には、昔からある王道菓子はちょうどよかったらしい。
自分以上に騒ぐ友達を眺めながら静かに食べ勧めていれば、あっという間に最後の一本になっていた。
「もう最後か
……
」
指に摘んで、何気なくぼんやり見つめる。
「ポッキー、ポッキーかぁ
……
。うーん、ポッキーねえ」
まるで噛み締めるように商品名を呟くと、スグルはゆっくり体を起こした。
そして、何を思ったか。
「のう、誰か私とポッキーゲームをしてみる奴はおらんかの?」
舌足らずな口調で提案すると、彼はヘラッと笑った。
折角馬鹿騒ぎをしているのだ。男同士でのポッキーゲームなんて悪趣味な真似も一興ではないか。
何より一袋食べてそろそろ味にも飽きてきた。なので締めの一本にスリルという調味料をまぶすのもやぶさかではない。
本人にしてみれば、そんなお気楽な思い付きでしかなかった。
──しかし、彼の言葉を聞いた途端。
あれほど騒がしかった家の中が一瞬にしてシンっと静まり返った。
時が止まったように全員の動きがぴたりと止まる。
「んん? みんな、どうしたんじゃ~?」
突然の静寂の中で、スグルの暢気な声だけが響く。
そんな中、一番に我に返ったのは本人のお目付け役のミートだった。
流石に、キン肉星の大王としてそのお遊びはいただけない。 そう感じた少年は慌てて主人へ進言をしようと身を乗り出した。
「
……
ちょっと、王子! またなにを
……
んぐっ!」
だが、全てを言い切る前に、彼の口を大きな手が塞ぐ。
「んーっ!?」
いきなりのことに目が白黒になる。
何事だ!と後ろを見上げれば、いつの間にか背後を陣取っていたロビンマスクの鋼鉄の鎧がメガネに反射した。
「
……
ミートくん、少し黙っててくれるか?」
そう懇願する声は低く、深く。つい先ほどまで酒瓶をニ本、マスクの隙間に突っ込むという荒事をしていた本人とは思えない。
また、マスクから覗く双眸も、貴公子の名からは程遠い野蛮な光を爛々と放っていた。
それは他の面々も同様だ。
全員が全員、スグルのポッキーゲーム発言に咽喉を鳴らす。
つまり対戦相手は、運が良ければ合法的に彼の唇を奪うチャンスがあるというわけで
……
『その役目を担うのは俺だ』
和気藹々としていた空気が一気に殺伐としたものに変わる。
抜け駆けは許さない 。
実際に言葉はなくとも、互いが互いを牽制しているのは一目瞭然だった。バチバチと飛び散る視線の火花に、いつの間にかバッファローマンの小脇でぬいぐるみのように抱えられていたミートは、思わずぎゅっと目を瞑った。
テンガロンハットの鍔を軽く押さえるテリーと、細い目を片目だけ開眼させたラーメンマンからは静かな闘志が燃え上がり。
ウォーズマンスマイルを浮かべたウォーズマンと、胸の前で腕を組みをしたロビンマスクの師弟が赤い瞳をギラギラと輝かせ。
バッファローマンは準備運動のように首を捻り、ブロッケンJr.は自慢の拳を反対の手で握って小気味いい音を鳴らす。
また、いつもは傍観を決め込む二人
……
腰を落とした姿勢を取るウルフマンと、ぎゅっと唇を引き締めるジェロニモも、今回は珍しく参戦の意思を示していた。
いつ闘争が起こってもおかしくない緊張感は、まさに一触即発。
誰も反応をしない、否、できないまま沈黙が続く。
そんな彼等に対し、普段の倍以上に空気の読めないスグルは不思議そうに頭を傾げた。
「
……
あれ? みんな、ポッキーゲームって知らんのかの?」
「
……
ッ!!」
この空気の中でその発言か!──酔っぱらいの戯言に内心突っ込みたい気持ちをぐっと抑える一同に、更に空気が張り詰めたものになる。
そんな膠着状態が続く中。
ガチャリ。
突如、キン肉ハウスの玄関ドアの開く音がした。
「
……
遅くなった。王家への報告が長引いてな」
低く落ち着いた声は、ここ最近彼らの輪に加わった人物、フェニックスのものだった。
かつてスグルと王位を争ったこの男は、色々と紆余曲折を経た結果、今ではキン肉王家のご意見番としてすっかりスグルの影として活躍していた。
かつて救ってもらった命、ならばお前のために捧げても構わない。
そう微笑んだフェニックスの顔は、曲者ばかりの知性チームをまとめ上げただけあって酷く心強かった。
そうして今回も『スペシャルゲスト』という名目で派遣された彼は、スグルの代理として報告書や各関係者への挨拶等々の雑務を終え、やっとのことで此処まで辿り着いたのだ。
歓迎されるとは思っていないまでも、多少の労いはあるかもしれない。そう足早に来たにも関わらず、部屋に入るなり感じたのは異様な空気で。
思わずギュッと眉根を顰める。
「
……
」
いつもは愛だの友情だのを主張する連中が、こんな殺伐な空気を漂わすとは、一体どういう状況だ。
険しい顔で、十中八九、問題の原因だろうスグルを探せば── 所在なさげに細長いチョコ菓子
――
ポッキーを咥えて上下に揺らしている家主の姿が目に入った。
「
…………
」
11月11日。ポッキー。一人ポツンと座っているスグル。殺気立ったその他の男たち。口を閉ざされたミート。
フェニックスの冴えわたる脳味噌が、瞬時にロジックを組み立て、事のあらましを理解する。
「全く
……
コイツらときたら」
どこまでも面倒な連中だ。頭を押さえる仕草は心底疲労を感じさせた。
そして、敢えて気配を消してスグルに近づくと、彼は机でぐだぐだ座る相手と目線を合わすように膝をついた。
「おい、キン肉マン」
お前はこの事態のどうするつもりなのか。そう問い詰めるつもりで。
だが、ゆっくり振り向いた相手の泣きそうな顔に、それどころではなくなる。
「のう、フェニックス。みんな、私がポッキーゲームを提案したきり、なんも言わんのじゃが
……
」
無言の応酬は、やっている本人たちにとっては苛烈極まりないものの、見ている方には単なる沈黙と受け取れたのだろう。ましてや元々鈍いのに、更に酔いの回った頭だ。到底、彼等の思惑に気付くわけがない。
珍しくか細い声で問いかける様に、無意識に心臓がドキッと跳ねる。
「そんなに悩むもんか? やっぱり私の顔と近付くのは嫌かのう
……
?」
勝手な勘違いに潤む瞳は、きっと自分で自分の傷を抉ったに違いない。
豚マスクと笑われてきた、と本人も笑い話にするネタは、しかしきっと相当な数の侮辱を受けてきたからこそ、ようやく消化できた問題だ。
実際には絶世の美男子のくせに。
今やキン肉星の大王のくせに。
奥の奥の柔らかい部分はどこまでも繊細な男──だからこそ、冷酷と言われた天才は放っておけなくなる。
本来疎ましいと思うこの状況に彼は首を突っ込まずには居られない。
「本当に、お前は目が離せない男だ」
そう呟くと、フェニックスは乱暴にスグルの襟首を掴んだ。
「ふえっ」
間抜けな反応に、口角を不遜に持ち上げたかと思えば、大きく口を開けて── スグルが咥えていたポッキーを反対側からパクッと咥えた。
「あっ!!!」
そこで、漸くフェニックスの存在に気づいた面々だったが、もう遅い。
我先に止めようと前に出たものの、互いを押しのける腕や足に、誰もうまく前へ進めない。
「おいっ」「どけって!」「私が行く!!」
口々に吐かれる文句は、彼らがスグルをどれだけ想っているのかの現われだ。
よもやここにきて漁夫の利を取られるとは。
怒りやら悔しさやらで凄まじい形相になっている彼らを尻目に、当のフェニックスは淡々とポッキーを食べ進める。
サクッ。 サクッ。 サクッ。
未だ事態を飲み込めない視界の中に、よく似たマスクが近付き、埋め尽くしていく。尊大な金色の瞳が、すぐ傍に寄って来る。
フゥ
……
微かな鼻息を感じて、体が強張った。
まさか、そんな、このままじゃ
…
。
大きくなる瞳は、この結末が一向に見えていない。
残り、3センチ。
2センチ。
1センチ──
「ッ!!??」
全員が固唾を飲んだ。その時、パキッ! ゼロ距離になる直前で、むき出した歯が乱暴にポッキーをへし折った。
途端、いきなり訪れた終わりに、緊張が解けたスグルの体がへなへなと倒れ込む。
「
……
なんちゅー、奴じゃ」
内股で座り込む姿はすっかり酔いが吹き飛んでいた。
「ハッ。
……
お前の豚ヅラを間近で見れるのは、同じ顔の俺ぐらいだろ?」
そんな相手を見下すように、スクッとその場に立ち上がったフェニックスは、呆然とするスグルへ向けて小さく笑った。
口の端についたチョコを指で拭って舐めとる姿は、かつて敵対したとき同様、いやになるくらい不敵だ。
「なっ、なっ
……
」
同じ豚面マスクなのに、その表情はズルいほど様になっていて。
アルコールとは違う意味で、スグルの顔が真っ赤に染まる。見つめ合う二人の視線が、じっとりと絡み合い、何かの意味をなそうとしかけたところで
……
ブチッと何かが切れる音が二人の耳に入った。
「フェニックス
…………
貴様!!」
「ここに来てそれは許さんぞ!!」
「俺達を放って良い度胸だ
…
」
とうとう堪忍袋の緒が切れたのか。
口々に叫ぶ彼らの顔は怒気で満ちていた。リング上でも見せないような殺気が部屋に広がる。
バキッ、ポキッ、パンッ!
ウォーミングアップのごとく、回した肩や首を鳴らし、拳を叩く姿は、今にも飛びかからん勢いだ。
しかし、当のフェニックスは決して涼しい顔を変えない。
「勘違いするな。腹が空いたから、コイツで腹拵えをしたまでだ」
わざとなのか、鼻を鳴らしながら親指でスグルを指す姿は、落ち着かせるどころか焼け石に水でしかない。案の定、更に激昂するアイドル超人達はもはや何を言っているのか分からなかった。
そして、キャパオーバーでテーブルに突っ伏したスグルの頭に手を置くと、彼に聞こえる大きさで囁く。
「俺のいない場所で、こんな低俗な遊びをするな」
先ほどチョコを舐めた指で、そっとその唇を撫でる男は相変わらず神すら恐れぬ傲慢さで。
された本人は、久々に見る彼の“らしい”姿も合わせ、ワナワナと震えることしか出来なかった。
【勝者は誰か、言うまでもなく】
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