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ちよど
2025-11-12 05:22:38
3359文字
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わし様など
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カルナさんの年の離れた弟の話
カルナさんの語る弟は誰だ?名探偵アルジュナは見た(嘘ではない)pixivより再掲
ところで令呪がある以外なんの変哲もない少年。ーー藤丸立香には兄がいる。
血の繋がった兄ではないし、厳密には人間でもない。だけど彼は人理修復の旅を駆け抜ける藤丸を支え、言葉少なに励ましてくれた。
今も、レイシフト先の森で不意に居なくなったかと思うと丸い果実を抱えて戻ってきた兄は、他のサーヴァントの呆れたような視線に構わず。持ってきた果実を身につけた鎧の尖った部分で器用に穴を開けると、それを藤丸に渡してくれる。
「矮小なその身なら、これひとつで満たされるだろう」
「ありがとう、カルナ」
カルナの語彙力に慣れている藤丸は礼を言って果実に唇を当てる。傾けると甘い果汁が喉に流れ込んできた。
甘さが体中に染みるような錯覚。やっと疲労を自覚した藤丸にカルナが言葉を投げた。
「そのまま動くな」
「うん」
頷いて藤丸はその場に座り込んだ。
藤丸が動かないのであれば他のサーヴァントも動く意味はない。いつものカルナの過保護にそれぞれ休憩を取り始めたサーヴァントたちの中で、カルナだけが藤丸の傍から動かなかった。
鮮やかな緑の葉が音を鳴らす。風が木々の間を泳いでいった。
「カルナ、弟さんの話をして」
また藤丸が強請るとカルナは不思議そうに少年を見る。
「もう話すことはない」
「同じ話でいいから」
「ーー俺と弟は親子のように年が離れていた、」
本当に以前話したそのままを語り始めたカルナに藤丸は耳をすませた。
カルナの語る弟さんは明るくて良く笑う、英雄の弟とは思えない普通の子だ。いたずらをしてお父さんに怒られる事はあるが両親にも愛されていて幸せに暮らしている。
サーヴァントたちが語る悲劇で終わる事が多い英雄譚より、藤丸はこんなどこにでもある話の方が好きだった。
少し惜しいと思うのは、カルナと同じマハーバーラタ出身のサーヴァントがひとりもいないため、第三者からの話が聞けない事だろうか。
カルナは語る。
「俺のような男のどこが気に入ったのか分からないが、弟はよく俺の後をついてまわっていた」
「カルナのようなお兄ちゃんがいれば、俺だってついてまわるよ」
「ーーそういうものなのか?俺は長兄なので分からん」
納得がいかないようでカルナは少し考え込んだが、藤丸の眼差しに促されて続けた。
「弟は跡取りだったので厳しく育てられていたが、俺は時間を作っては弟を外に連れ出しては父に怒られたものだ」
英雄の家庭事情は複雑な事が多いので、長兄ではなく次男が家督を継ぐのも理由があるのだろう。
それなのに兄弟仲が良いっていいなぁと藤丸はうっとりと微笑んだ。
兄弟のいない藤丸は、カルナと弟に憧れのようなものを抱いていたのかもしれない。
だから。
アルジュナとビーマが召喚された時。彼らがカルナと異父弟だと知って言ってしまったのだ。
「じゃあ、カルナに懐いていた弟さんってどっち?」
3人しかいないマイルームに沈黙が落ちた。
ビーマとアルジュナが目を見合わせる。
その微妙な空気に藤丸は疑問を投げた。
「カルナさんは弟さんがひとりしかいないように話してたけど俺の聞き間違いかもしれないし。それとも、ふたりともお兄ちゃん子なの?」
純粋に不思議がっている様子の藤丸にアルジュナが向き直った。
「ーーマスター。確認ですが。あの男が私達を、その、自分に懐いている弟だと言ったのですか?」
質問に藤丸はカルナが語った事を正確に思い返した。
「名前は聞いていないけど、親子ぐらいに年の離れた弟がいるって」
英雄の外見は実年齢の当てにはならない。若く見えるサーヴァントがかなり年上だったりするのだ。
だから、藤丸が青年姿のカルナの『親子ほどに年が離れた弟』が青年姿のふたりの異父弟だと思ったのも無理はなかった。
一方、アルジュナは口元に手を当てて考え込んでいた。
「親子程に年が離れた弟ーーならばカルナを拾った御者の子供たちではない。マスターを謀った?あのカルナが?こんな事で?ありえない」
ぶつぶつと呟く弟にちょっと呆れたような視線を乗せて、ビーマは藤丸に語りかけた。
「俺たちはあいつとは血が半分しか繋がってねぇし、ほとんど他人みてぇなもんだ。懐いているってのはありえねぇな」
ビーマの言葉に藤丸は深い溜息をついた。
「じゃあ今までカルナさんは俺に気を使って嘘をついて
……
」
「違う!!」
突然叫んだアルジュナにふたりは振り返った。
「カルナがそのような事をするはずがない!」
断言したアルジュナは、再び考え込む。
「そうだカルナが偽りを口にするはずがない。私は何かを見落としている。ーーーーはっ、他人、だ!」
天啓を受けたように目を輝かせたアルジュナはマスターを視線で射抜いた。
「マスター。あの男を呼んでもらえますか?」
「う、うん」
気圧された藤丸が思わず令呪で召喚すると、瞬時にカルナがマイルームに現れた。
突然呼び出されたカルナは無表情にあたりを見まわし、そこに異父弟ふたりがいるのに気づいてわずかに眉を動かした。
アルジュナが歩み出る。
「カルナ。貴様、マスターを謀りましたね?」
挨拶も何もないアルジュナの弾劾にカルナは微かに頭を揺らした。
「そのような覚えはない」
「ならば言い直します。ーーマスターを誤解に導きましたね」
「そのような覚えはない」
繰り返すカルナにアルジュナは藤丸を見た。
「マスター。カルナに言われた事を確認してください」
請われて藤丸はカルナが語ってくれた事を繰り返した。
「弟さんは跡取りだった?」
「そうだ」
「
……
兄貴は確かに跡取りだったけどなぁ」
「兄ちゃんは黙って!」
口を挟んだビーマを制して、アルジュナは藤丸に先を促す。
「弟さんはよくカルナの後をついてまわっていた?」
「そうだ」
「
……
それはいつ頃の事です?」
アルジュナの質問にカルナは少し視線を巡らせた。
「お前たちがドゥリーヨダナの骰子賭博で森に追放された頃だ」
追放されたのならカルナの言う弟がビーマとアルジュナであるはずがない。
何か盛大な見落としがあるような気がして藤丸は質問を重ねた。
「弟さんとは親子のように年が離れていた?」
「そうだ」
カルナの返答にアルジュナが顔をしかめた。
「正確に言いなさい。ーー親子よりも年が離れていた、でしょう?」
「
……
そうだ」
問いかけを肯定したカルナに、藤丸はアルジュナを見上げた。
「アルジュナさん。カルナの弟さんを知っているの?」
「アルジュナ、知っているのか?」
ビーマまでが問いかけるのに、アルジュナは自分を落ち着かせるかのように軽く息を吐いた。
「なぜ兄さんまで分からないのですか?簡単な事ですよ。ーーカルナを養子にしたドゥリーヨダナの息子。それがカルナが語る弟です」
「そうだ」
同意するカルナをビーマは気まずそうに見た。しかし藤丸は首をひねる。
「カルナがドゥリーヨダナって人の養子で、親子以上に年が離れている弟??」
アルジュナが黙っているカルナに視線を投げる。
「この男は事情があって御者に育てられました。それをドゥリーヨダナがアンガ王に重用したのです。その時にカルナはクル王家、ドゥリーヨダナの養子になりました。カルナ自身はドゥリーヨダナよりも年上ですよ」
「
……
養子のカルナさんと、実子の弟さん?」
「そうだ。ーー俺の言い方が悪かったようだな」
少しうなだれたカルナをアルジュナは咎めるように見た。
「今頃分かったんですか。もう少しでマスターの中で私達が貴様に懐いている弟になるところだったのだが」
「嫌なのか?」
「嫌に決まっている」
アルジュナの即答にカルナは困ったように眉を下げた。
「そうか。ーー俺はお前たちの事も大切な弟だと思っているが」
「カルナぁああああああ!!!」
アルジュナの絶叫を聞いた藤丸はこっそりカルナに囁いた。こっちの弟さんとも仲がいいんですね、と。
それを聞いたカルナが珍しく微笑んだので藤丸も笑った。
数日後。新しく召喚されたカルナの『父親』に、マハーバーラタを読むように唆された藤丸は3日ほど寝込んだ。
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読んでくださってありがとうございます。
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