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らぎ
2025-11-11 19:29:36
2459文字
Public
FF14
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いろめ
踊り子のインタージェクトって『いろめ』だな…と思って書いたやつ
「公開試合?」
簡潔にそう問い返したのは現在、所属する『暁の血盟』の仲間二人と共にこのキャンプ・ドラゴンヘッドに滞在している冒険者。キャンプの主、オルシュファンの盟友でもある。
対するは指揮官の椅子に座するオルシュファンその人と、横に控えるコランティオ。コランティオがひとつ頷き、言を継いだ。
「
…
まあ、兵士たちの士気を高めるためとは言うものの、要はオルシュファン様が、君の滞在中に是非とも手合わせ願いたいということなのだがね。そちらの得物は自由
…
どうだろうか?」
大人しく座ってはいるが、隠しきれない期待をわくわくと湛える天青石の瞳を一瞥して青年は僅かに頬を緩めた。
「ええ、ぜひに」
色良い返答に、天青石が煌めく。それは優しい眼差しと交差したが、青年が視線を逸らしたことによりほんの一瞬で途切れた。
「おお、友よ!私も腕を磨いておかねばな!」
「これ以上強くなられたら私が勝てませんよ、卿」
「何を言う、だからこそだろう。指揮官としては、負けてやるわけにはいかんのでな」
そして来たる試合の日。キャンプ中の兵士達が、珍しい快晴に万年雪が輝く中庭に詰めかけた。中にはアドネール占星台やホワイトブリム前哨地へ出向していたはずの者までおり、当然ながら中庭に入りきらない者たちは石塀の上で滅多に無い日差しに目を細めていた。
ふと、その観衆がざわめく。暁の一行に充てがわれた一室こと「雪の家」の扉が開き、青年が姿を現したのだ。
普段彼が纏うのは鎧にせよローブにせよかなり露出の少ないものが多い。出会い頭に大いなる熱量でその身体を讃美してきたオルシュファンを警戒しているから
…
とキャンプでは専ら噂されている。
しかし今日の彼が纏うのは異国情緒溢れる
…
有体に言えば極寒のクルザスの地では見ている方が凍えそうな、右肩から腕にかけて大胆に開けた胴衣。白い残雪に、深い青紺地と金の装飾のコントラストが映える。腰には一対の円月輪を携えており、その出立ちは見る者が見ればサベネア島の踊り子を想起したであろう。
「フフ、その三角筋
……
実にイイ!」
独特な称賛と共に迎えるは言わずと知れたオルシュファン。此方は普段通りのホーバージョンに、普段通りの剣と盾。しかし指揮官が自ら剣を抜くという局面は、それが模擬戦であっても士気を高めるものである。俄に観衆が活気付いたのを見遣る彼の顔から朗らかな笑みが消え、ゆっくりと戦闘態勢に移行する。向かい合った青年も円月輪を構え、前傾の体勢を取った。騎士を正道進む一角獣とするなら、此方は獲物の隙を窺う妖烏と言った所であろうか。
「膝を付いた時点で勝負有りとします
…
良いですね?」
コランティオの言に同時に頷き、次の瞬間二人は跳んだ。
青年は斜め前に、騎士は盾を構えたまま前に。ここで青年は、騎士の後ろに自ずと位置取る。後ろに距離を取るかと思われたが、近接武器の特性と動きを見切った動きはやはり普段、多方面から闘いをよく見ている者のそれであった。
軽い風切音と共に、背後からの回し蹴りが騎士の側頭に入る
…
寸前で避けられる。勢いのままに青年が一回転。続けて円月輪を横に構えて勢いのまま袈裟掛けに切り上げ。これも長身を捩った騎士が避けた──と思われたが、頬に一筋、赤が奔る。ひとつバックステップを踏んだ青年にふわりと闘気が宿り、軽やかにフィニッシュのターンを決めると同時に立ち昇った闘気が爆ぜた。イシュガルド騎士の剣技や狩人の弓技とはまた違う、踊り子特有の華やかな闘いぶりに観衆が沸く。
「靱やかさに磨きが掛かったと思っていたが
…
見事な舞だな」
喧騒の中、構えた盾を僅かに下ろしたオルシュファンが素直な賛辞を述べる。対する青年は困ったようにほんの僅か、口角を持ち上げた。
「避けておいて
……
よく、言う」
そう言うと共に、青年は今度は右手の円月輪をひとつ、オルシュファンめがけて放つ。続けて左手からもう一つ。オルシュファンが盾で弾くと、それは弧を描いて青年の手元へ。まだまだ、とでも言うように間髪入れず、今度は二つ同時に下から斜め上へ。盾を掠めて耳障りな音と共に二回転し、再び手元へ。そして次の構えに移行する一瞬の隙。三度も逃すほど、このキャンプの司令官は甘くない。盾ごと突進し、横薙ぎ、斜めから突き、そして剣を天へ掲げ落雷の如き光を降らせる。
剣先は凌いだものの神聖魔法の追撃にさしもの青年も頭を抱えてぐらつき、膝を突くかに見えた。実際オルシュファンも勝利をほぼ確信したか、剣を縦に構えて神聖魔法の追い討ち
…
止めの詠唱に入る。狙いを定めるべく青年を視界に捉え──気がつけば囚われていた。
青年が項垂れたかと思われた頭を勢いよく擡げ、妖しく紅色に光る眼光がしなだれ掛かるようにオルシュファンの視線を捉える。
平衡感覚が定まらない。蛇に睨まれた蛙と言うのはこう言う状況であろうか。それともこれはサキュバス網の妖異が使う、魅了の類だろうか。視界が黒く烟り、思考は霞む。頭は重く、握っているはずの剣もその感覚が無い。
永遠にも感じられたその時間は、その実長くなかった。紅が残像を引いて消えたと思うと、周囲の大歓声が耳を刺す。そこで初めてオルシュファンは、聴覚すらも奪われていたことに気がついた。
「そこまで!
……
引き分けと致します!」
コランティオの声が何処か遠い。
…
引き分け。引き分けということはどちらも膝をついたと言うことか。見下ろすと、確かに片膝が接地し、剣は手から離れている。彼方はと面を上げると、武器こそ持ったままだが地面に座り込んでいる。確かに引き分けだ。
しかし英雄とまで呼ばれる青年と曲がりなりにも互角に戦った筈であるのに、胸中の何処かで青年に屈したような気持ちが渦巻き、立ち上がりながらも脳裏には光る紅光が未だ灼き付いていた。
どれほど鍛錬に熱心な者でも、喉と眼だけは鍛えられない。何かの教本に有った文言が蘇る。今更ながらオルシュファンは、その教文を綴った誰かに苛立ちのような感情を抱いた。
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