白殊皎(しらよし こう)
2025-11-11 20:00:00
2686文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

蠱惑の盤上

FGO【歳勇/土近/としいさ/ひじこん】
11月11日、ポッキーの日。
付き合っていない二人に進展はあるのか?

n番煎じであろうとも、白殊は白殊の道を行きます!


 近藤は手の内の菓子を見つめながら困惑の表情を浮かべていた。
 それは主にもらったものなのだが、その時の態度が気になった。
──ごめんね、土方さん借りていくけれど、戻ってきたらそれで〝ポッキーゲーム〟でもしてね。
 そう言われて渡されたものには確かにポッキーと書かれている。
『歳とする遊戯で、これを使う?』
 土方はマスターの言葉通り周回に駆り出され、いまは傍にいない。
 マスターの雰囲気からして、他のサーヴァント達に聞くのもはばかられるような気がして(土方の)部屋に戻り卓の上にそれを置いて考える。
 無理もない。
 近藤はまだ召喚されたばかりのピュア(笑)な状態で、余計で下世話な知識は持っていない。
 それに彼の時代の遊びといえば囲碁や将棋、小児であれば隠れ鬼やあやとり、女子のおはじき、お手玉、ままごとなどそういったものが主だから、こんな菓子を使った遊びなど思いつきもしないのだ。
「歳が帰ってきてから聞けばいいか……
 行儀が悪いと思いつつ、伸びをしながら後ろに倒れる。
 やがて訪れた眠気に近藤はゆっくり目を閉じた。



 ぱさ、と気配がして近藤は目を覚ました。
 気付けば自分に掛布がかけられている。
「目が覚めたか、近藤さん」
「歳」
 いつの間に戻ったのか土方が近藤の脇に座って、彼を見つめていた。
「うたた寝はいいが、寝るのならちゃんとベッドにいけよ。何かあったら大変だ」
 まるで子供に諭すように土方は言う。
「人間の子供とは違うのだから、大丈夫だよ」
 サーヴァントなんだから、と答えれば、それでも心配だと襟元を直された。
「そういえば」
 心配性だなぁ、と思いながら近藤は机上の菓子を手に取る。
「主からこれをもらって、歳が戻ってきたらぽっきーげーむ? でもしてくれといわれたんだが」
「なんだって!? ったく、あの小娘は……
 そう聞けば、土方はあからさまに眉をしかめた。
「?」
「気にするな、近藤さん。それはただの菓子だから、遠慮なく食っちまえ」
「せっかく主からのたまわり物だよ? 無碍むげにするわけにはいかないじゃないか」
 機嫌が悪くなったところを見ると、土方はその内容を知っていて、かつ近藤とはしたくないらしい。
 そんな態度を取られると近藤はますます気になった。

 賢明な読者諸氏に申し上げておくと、この二人まだ恋仲でもなんでもない。
 たとえ近藤が土方の部屋に入り浸っていようとも、一緒のベッドで枕を並べて寝ていようとも、マスターにポッキーゲームをする仲だと思われていようとも、ただ単に幼馴染みの距離感そのままで、それが近すぎるだけなのだ。

──閑話休題。

「ねぇ、歳。教えておくれ、ぽっきーげーむとは一体何なんだい?」
………………
 お強請ねだりにこういう近藤はタチが悪いと思った。
 無意識に小首を傾げ、縋るような目で見られては、土方は甘くならざるを得ない。
「しょうがねぇなあ」
 つい、と手を伸ばし近藤の持つ箱を取り上げ、包装をとく。
「いいか、近藤さん。こいつはこういう形の菓子だ」
 内袋から一本取りだして近藤に見せる。
 細い棒状のものに、茶色いものが四分の三くらいかかっている。
「それを、こう」
 先端を近藤に向け、口を開けろ、と促す。
 近藤は素直に口を開け咥えた。
「まだ噛むなよ」
 口中で茶色いそれが少し溶け甘い味が広がる。
 あぁ、これはたしかちょこれいととかいうものの味だ、と近藤が思ったところで、土方が反対側を咥えた。
「とひ!?」
 さくさくさく、と軽い音を立てて土方は菓子を食べ進める。
 そして……近藤の唇に触れるか触れないかのところで、ポキッと折って咀嚼し呑み込んだ。
「と、まぁこんなもんだ」
 残った部分を咥えたまま、真っ赤になってわなわなと震える近藤を尻目にサラッと言ってのける。
「と、とし……これは……
 ぽろっと口から残りの菓子を取り落とす。
「だから言ったろ? 気にせずに食っちまえって」
 意中の相手と口吸いするための口実みたいなもんだ、と土方はぼりぼりと頭をかく。
「じゃあ……主は、歳と私がそういう仲だと……
「思ってんじゃねぇか? 不満ならあとでシメとくが」
「主をシメるなんて、言うもんじゃない!」
 物騒な土方の物言いにちょっとだけ正気に戻りはしたがまた急に恥ずかしくなって口を押さえる。
 しかし、この遊戯の裏の目的を土方が知っているということは、まさかそんな相手がいたのかと思ってみたりもして、すこしだけ胸の痛みを覚えた。
「歳は……したことがあるのか? 誰か別の人と」
 恐る恐る聞いてみる。
「あぁ? あるわけねぇだろう。あんたが初めてだよ」
 悋気りんきはみっともないと思いつつ、土方の返答にかなりほっとした。
「その割には、慣れていたようだけど……
「そりゃあ、まぁ。見せつけてくる連中もいたし、あんたの前だから、格好もつけたくなるさ」
 素面に見えた土方だが、よーく見ると耳の先が微かに赤い。
 これは、相当照れている。
「じゃあ、なんで最後までしなかったんだい?」
 ちょっと意地の悪い自分が顔を覗かせるのがわかった。
「あのなぁ、近藤さん」
 それを聞いて、土方は更に顔を赤くしてそっぽを向いた。
……口吸いなんてのは思いを交わしあった後にするもんだ。あんたと俺はそんな仲じゃねぇし、男となんてごめんだろう?」
 土方の持論らしきものを言われて、近藤はますます聞きたくなった。
「じゃあ、そういう仲になれば、してくれるのか?」
「!?」
 土方は切れ長の目をこれ以上ないほど見開いて近藤の方を向いた。
 近藤は机に置かれた袋から、また一本菓子を取り出すとそれを咥え、反対の先を土方の口に向けた。
「ほりゃ(ほら)」
 促すように顔を前に出す。
「近藤さん……
 かなり赤くなって、机にしばらく伏した土方は、やがて顔を上げると近藤の口から菓子を取り上げる。
 そして、その顎に手を添えて、舌を絡める濃密な口吸いをした。
「──そういうことでいいんだな?」
「うん……
 いきなりの本気の口吸いに戸惑った顔を見せながらも、近藤は合意した。
──それが、カルデア内で新たなカップルが誕生した瞬間だった。
 そのことが公になったとき、元々の距離が異様に近かったので、周囲からは付き合ってなかったのか!? と驚かれたほどではあったが……



 そういうわけで、マスターは土方にシメられずに済んだようである。