三毛田
2025-11-10 21:42:29
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72 072. 手に入れたらその先は

72日目
全てが欲しい

 心を手に入れたら、体も手に入れたい。
 一部の生命体は、逆らしい。性別から言うと、特に男。
「それって嫌われないか?」
「嫌われるだろうな」
「体を手に入れてって、どうやって?」
「お前の目の前にある板で、調べればいい」
 最近の丹恒は、こうやって俺を突き放す。
『甘やかしてばかりはよくないと、パムに怒られた。だから、なるべくお前の思考を誘導することを優先する』
 とか言ってたな。俺が考える力をつけるために、大切だとか。
『お前は地頭はいいみたいだから、わからないことを調べるための道筋を示してやれば、自分できちんと納得するまで調べて理解できると俺は信じている』
 なんて、信頼を向けられたら己でどうにかするしかなく。
「はいはい。わかってます」
 そうとなれば、ネット上にあるものからしか情報を得る手段はないのだ。
 そして、先の会話内のことを論文やら体験談やらを調べていく内に得られた不快でしかない結果に、顔をしかめるしかない。
「俺は、不誠実な対応はしないからな」
「何の話だ」
 誤解されてはたまらないと、丹恒の肩を掴んで告げるも、不思議そうに首を傾げるだけ。
「お前が好きだからに決まってるだろ」
 頬を膨らませつつ告げると、彼は目を丸くする。
「ぇ」
「好きだ、丹恒」
 しっかりと目を見つけえると、逃げるようとするかのように視線をさまよわせ。
「俺が、好き」
「そう」
「穹は、俺が……
 俺の言葉を信じられないというように距離を取ろうとするけれど、俺が肩を掴んでいるからそれは叶わず。
 逃げられなかったのが不服なのか、珍しく小さく唸って。
 そういうところも可愛いんだよ。
「俺は、お前の心が欲しい。俺と同じ〝好き〟を持ってくれる、心を」
 肩から手を離し、指先で左胸をつつく。
「その下にあるのは、心臓だ」
「うん。でも、心ってここに宿るものだと思うんだ」
 ドクンドクンと心臓が脈打つのが、指先から伝わってきた。
 丹恒の顔を見ると、じわりじわりと赤く染まっていって。
 お? これは、脈ありか?
「丹恒?」
「いや、その……そう言われのは、初めてだ」
「ふうん。じゃあ、お前は心ってどこに宿ると思う?」
「どこ、なのだろうか」
 俺が触れた左胸に触れ、ちょっとだけ苦しそうな顔。
 そんな顔を見たくないのに。
「丹恒。無理して考える必要はないから」
「だが」
「ゆっくりでいい。ゆっくり考えて、答えを出して。俺は待てるから」
 そう伝えれば、ほっとしたように力を抜く。
 今すぐにでも抱きしめたいのに。