白殊皎(しらよし こう)
2025-11-10 20:00:00
2723文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

星の帰する場所

えふご【歳勇/土近/としいさ/ひじこん】
土方さんと近藤さんの1臨黒の剣士。
深夜、無言で土方の元を訪れた黒の剣士の真意はどこにあるのか。

「くすんくすん泣く黒剣ちゃんをよしよしするえちなしの歳勇が書きたい」という欲望の元書き上げましたが、なんか……違うものになってしまいました。
すけべはありません。

 夜半、土方が寝台ベッドで寝転がりうつらうつらしていると、急に上に誰かが乗ってくる感覚があった。
 まさか自分がそれの気配に気付かないはずが、と飛び起きようとしたが相手が結構重かったのと、巧みに押さえつけられて動けなかった。
………………
 目を開けると、何者かが自分の顔を覗き込んでいる。
 頭を睡眠から切り替えて見てみれば、それは近藤勇だった。
──しかも、黒の剣士姿の。
「近藤さん?」
 問いかけに近い声音で呼んでみる。
………………
 何か言いたげではあるが、無言が返ってきた。
 よく見ればいつもの紅を纏った漆黒の外套は身につけておらず、その下の着物は肩まで下がり、胸元まで白磁の肌を晒している。
──それはつまり……
「近藤さん、とりあえずどいてくれ。押さえつけられちゃどうにも出来ん」
 言うと、こくりと頷いて素直に土方を解放した。
 起き上がってベッドにぺたりと座り込んだ近藤と向き合う。
 ここで、どうした、なにがあった? 等と聞いたら間違いなく近藤は怒る。
──ここまでお膳立てしてやっているのだからわかるだろう、と。
「近藤さん。こんな時刻に俺の部屋へそんな格好で来たってことは、わかってんだろうな?」
………………
 近藤は無言で再び頷いた。
「なら望み通りに……と行きたいところだが、俺もそこまでケダモノじゃねぇんだ」
 抱き寄せて、チュッと音だけの軽い口吸いをして顔を覗き込む。
 近藤は目を見開いてぷるぷると身を震わせた。
「わけを話してくれ。思うところがあるんだろう?」
……そんなもの、ない。抱いて欲しい、だけじゃいけないのか」
 やっと洩らしたかと思えば、これだ。
「あぁ、ダメだ。寂しい子供に手を出すほど俺は常識なしじゃないんでね」
「子供じゃない!!」
 その言葉を聞いて近藤は怒鳴るように言うと土方の頬を平手で叩いた。
 それを受けても土方は落ち着いた眼差しで近藤を見つめる。
「もういい! 他の誰かの所に行く!!」
 寝台から飛び出そうとする近藤を土方は抑えた。
「それは、ちょっと許すわけにはいかねぇな」
 当然、そんな相手はいないことはわかってるし、近藤には土方がついていることはカルデアにいる全員が知っているので、手を出す人間もサーヴァントもいないだろうが。
「──なんで……
 腕を掴まれて押しとどめられ、近藤の紅の瞳が激しく揺らぐ。
「なんでおまえは、そんなに優しいんだ……!!」
 そして、わっと叫ぶようにしてその場に座り込み泣き始めた。
「俺が……おまえに報いるのは……もう、この身体くらいしかないのに……!!」
 本当に小さな子供のように大声で泣き続ける近藤を、土方はそっと抱きしめようとしたが、それも嫌だというように振り払い、ついには床に泣き伏した。

「なぁ、近藤さん」
 土方は自分も床に下り、身悶えるように泣く近藤の傍で屈むとその背を撫でた。
「あんた、なんか勘違いしてねぇか?」
 泣いていてもきっと聞いているのだろうとゆっくり語りかける。
「俺は見返りが欲しくてあんたと一緒にいるわけじゃねぇ。どちらかってぇと、俺のわがままだ」
……わが、まま?」
 大声で泣いて少し落ち着いたのか近藤は顔を上げた。
「あぁ。たとえあんたが迷惑でも、俺は地獄の果てまででもついていく」
「だから、それが、なんで……
「なんで、か。俺にもわかんねぇんだよ、近藤さん」
 苦笑しながら土方は続けた。
「あんたの存在は、もう俺の魂の奥の奥に染みついてる。理屈じゃねぇ、もうこれは俺の本能だ」
「でも俺は報いたいんだ、そんなおまえに! どうしても……!!」
 近藤はまた目にいっぱいの涙を溜めて泣く体制に入りつつあった。
「なら──頼みがある」
 泣かないでくれ、とその頭を撫でる。
「なんでもする、なんでも言ってくれ!」
 縋るように言う近藤に慈愛の眼差しをもって見遣る。
「俺のことを、忘れないでくれ」
「え?」
「何十、何百、何千年経っても、あんたのことを想うバカな男がいたって事を覚えておいてくれ」
………………
「そうすれば、俺はどこにいようとも必ず、あんたの元にたどり着ける」
 ぽろり、近藤の紅の瞳から大粒の涙が流れ落ちる。
「あんたは、俺の光だ、唯一無二の輝ける星だ。あんたを俺の北極星ポラリスにさせて欲しい」
……本当に? 本当にそれだけでいいのか!?」
 近藤は土方に縋りついて訴えた。
 その願いは、近藤にとって当たり前な事で、自分の価値にあまりに釣り合わないことだと思ったから。
「あぁ、これだけだ」
 土方はと見れば、言うことが出来た満足感か、うっとりと目を細めている。
「おまえはバカだ……本当に……バカだ……
 そう言って近藤は土方の胸に顔を埋めた。
「忘れてなんかやらない。どんな旅の果て、どんな局面になっても、忘れてなんか……やらない!!」
 そしてドン、と拳で土方の胸を叩く。
 この仮初めの身でそこまで誓っていいのか、そう思わないこともなかったが、運命さえもねじ曲げてみせると近藤は声を大きくした。
「ありがとな、近藤さん。それだけで俺は、あんたの傍らにいることができる」
 土方はいつもの近藤よりも少しだけ小さいその身体を抱き寄せ、はだけた着物を直すとしっかりと抱きしめた。
 そうされて、近藤はその白い頬に微かに赤みを加えた。
──土方を試すようなバカなことをしてしまったと、今更のように悔いた。
 彼が、自分に向ける想いはちっぽけな自分の考えを遥かに凌駕するものだと思い知ったから──。
「歳……
 じんわりと伝わる土方の温度が嬉しくて、すん、と鼻を鳴らしやっとその名を呼んだ。
「ん?」
……ありがとう。この俺をも受け入れてくれて」
「何を今更。──あんたは俺の大事な近藤さんだ」
 ぽんぽん、と母親がするように背を叩かれる。
──子供じゃない。
 そう言いたかったが、そこにこだわるあたり、やっぱり子供なのかもしれないと思い直した。
「大好きだ、歳。これまでも、これからもずっと一緒にいよう」
 子供ならこんなことも言ってしまっても構わないだろう。
「あぁ。俺も一緒にいたい」
 冷えるから、と掛布をかけられ、寝台に引っ張り上げられる。
 初めて一緒に眠るわけではないのに、照れくさいようなくすぐったいような、不思議な感覚を覚えた。
──闇に墜ちた自分の身がやっと安息地にたどり着いたような気がした。
 近藤はそっと目を閉じ、土方の身体に縋り、その体温に身を委ねる。
 まるで、母に甘える幼子のように──。