白殊皎(しらよし こう)
2025-11-09 07:30:00
1818文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

贈り物はなぁに?

えふご【歳勇/土近/としいさ/ひじこん】
近藤さんお誕生日お祝いの話。

お誕生日おめでとうございます!!

 食堂に現れた近藤に、ぽんとクラッカーが鳴らされた。
──近藤さん、お誕生日おめでとう!
 少女マスターがそう言うとぽんぽん、と周囲からも祝砲が鳴る。
「誕生日?」
 当の近藤はきょとんとした顔で紙テープまみれにされていた。
「歳、どういうことなんだ一体?」
 そして同行していた土方に疑問をぶつけた。
「あぁ、今日はふるい暦じゃ十月九日……つまり、あんたが生まれた日だ」
 近藤は更にそれがなんなんだ? という顔をする。
 彼の生きた時代には年齢は正月で数え、生まれた日を祝うという習慣がなかったのだから無理もない。
 そんな近藤に土方は続けた。
「当世じゃ生まれた日っていうのは殊更大事にするもので、家族や友人知人が集まって盛大に祝うものだそうだ」
「そうなのか」
「あぁ」
 実感はわかないが、そういうものなのかと少しだけ納得をする。
 自分がこの星見の船カルデアに召喚されて最初の誕生日だという今日。
 企画したのはマスターかそれとも──。
 場はそのまま祝宴の会場になった。
 贈り物が殺到し、驚くほど巨大なケーキが饗され、様々な山海の珍味でもてなされる。
 なんとまぁ、誕生日とはめまぐるしく大変なものなのかと近藤は驚いてしまった。



「おつかれさん」
 部屋に戻り寝台に腰を下ろすと、荷物持ちだ、と言ってついてきていた土方にそう言われた。
「おまえかい?」
「ん?」
 贈り物を丁寧に置き、振り返った土方に近藤は問いかける。
「この祝宴の首謀者だよ」
 その言葉に土方はふっと口角を上げた。
「なんのことやら」
「間違いなさそうだね」
 バレたか、と土方は微かに首を傾げる。
「私の事を一番よく知ってくれているのは、おまえしかいないからね」
「あぁ。最初はな俺一人で祝うつもりだったんだが……
「だが?」
「自慢したくなった」
「自慢?」
 意外な言葉に近藤は首を傾げた。
「──今日は、俺の誰よりも大事な人が、生を受けた日なんだ。これ以上喜ばしい日はないんだ、素晴らしいだろう。ってな」
 本当はカルデア中を近藤を連れて練り歩きたかったぐらいだと言われ、食堂での祝いの席でよかったと思ったけれど、その言葉に胸の中に暖かい気持ちがわき上がる。
「歳……
 本当は独り占めにしたかったのだと思う。
 だがそれを押さえて、この場所カルデアに、少しでも周囲に馴染めるようにと企画してくれたに違いない。
 自分が召喚されて、明らかに土方は変わったと主は言う。
 それまでは大好物の沢庵を食べていても、誰かと盃を交わしていても、どんな祝いの席であっても孤独な影を漂わせて周囲と距離を取っていたと。
 こちらがどんなに近づこうとしても、一定の距離からは近づかせてくれなかったと──。
 それが今こうして、たった一人の英霊サーヴァントが召喚されただけで驚くほど変わったと。
──土方さんにとって、近藤さんって本当の本当に大事な人なんですね。
 そう、主は締めくくった。
 それを聞いたとき近藤の胸は締め付けられた。
 なんと長く彼を待たせたのか、なんてむごい事をしてきたのか。
 己の死すら忘れて、深淵の底にいた自分に手を伸ばし続けた彼に、なんで応えてやらなかったのだろうと。
……ありがとう、歳」
 近藤は立ち上がりぽん、と土方の胸を叩くとそのままそこに頭を預けた。
「おまえが、私の事を一番に考えてくれて、これ以上嬉しい事はないよ」
 自然と土方の背に腕を回し抱きしめる。
「それなら、よかった」
 土方は目を細めて幸せそうに微笑んだ。
「そういえば──」
 顔を上げて土方を見つめる。
「?」
「誕生日には贈り物をするのが通例と言われたけれど、おまえは何もくれなかったよね」
 いたずらっぽく微笑みかける。
「強欲なお姫様だ。この祝宴パーティがそのつもりだったんだが」
 お姫様、という言葉に頬を赤くしたものの、背に回した腕で土方の身体を揺らして何かおくれ、と強請ねだってみる。
「そうだな、まずは──」
 土方は自分も近藤の背に腕を回し、軽くその唇に口吸いをした。
「夜明けまで二人きりで過ごそう。昔の話でもしながら、な……。俺自身が、あんたへの贈り物だ」
 返品は不可だぜ、と付け足してニヤリと笑う。
「それは、大変だ」
 近藤は華のように笑い、腕の力を更に強めた。


──二人の時間は、まだこれからだ。