ぽふむん
2025-11-08 22:00:00
1586文字
Public ワンドロ
 

夫婦善哉

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「灯影」「襖」
氷柱if


TLに狸のおマヌケエピが流れてくるので触発されました。

しのぶちゃん「毛の生えた動物」が嫌いと言う公式設定がありますが、こう言う嫌いだったら可愛いなと毎回思っています(実際は、鬼を殺す毒の研究をしてるくらいですし違うんでしょうね🥶💦)

こっちに来るな

そう言いたげに、しのぶは庭先に潜入してきた中型野生動物を睨みつけた。
これが猫であったのならば、背を丸め毛を逆立て

「ふぅうううう、うみゃぁあああ」
と威嚇の唸り声を上げていたことだろう。

だが、あいにくしのぶは人間だ。
動物ではない。

無言でその一角を睨みつけた。
日が落ちるのが早くなり、外はもう薄暗くなり始めた。
窓を閉めよう。
そう思った矢先のことだった。

照明にやさしく照らされ、ぼんやりと浮かび上がっている生き物は狸だ。

狸は、しのぶに威嚇されていることがわかっていないのだろうか。
野生の本能と言うやつが皆目存在しないのか。

きょとん

この言葉がぴったり当てはまる表情でしのぶを見つめ返してくる。

───あれぇ、初対面なのに随分刺々しい女の子がいるなぁ。
そうか、なにか辛いことがあったんだね。
もふってごらん。きっと癒されるよ
───


そう言いたげに。
そんなことで癒される訳はない 。
しのぶは、毛の生えた生き物が嫌いだ。
追い払いたいのに、コイツはにげようともしない。
嫌いなくせに、しのぶは石を投げつける真似でもして追い払うことも出来なかった。
とにかくその生き物を睨みつけた。

本当は怖い。
怖いから威嚇する。
悲鳴をあげたいが、喉の内側が張り付いたように声すら出せない。

体が氷ついたようだ。

その時、諦めたのだろう。
狸が背中を向け、ぽてぽてと走り去った。
そしてこちらを振り返る。

(振り返るな)

しのぶがそう思ったその時だった。

振り返りながら走るものだから、狸が転けた。
もうひとつ影が浮かび上がった。

もう一匹狸が顔を出したのだ。

「きゃ……

さすがに悲鳴をあげかけたその時

一匹の姿が突然消えた。

消えたのではない。
戦国時代に建てられた山城の遺構を利用したというこの寺院。
周りは自然の地形を活かしながら築かれた、防衛上の人工斜面がある。

そこに転がり落ちたのだ。

もう一匹が心配げに転倒先を眺め……

この個体も転がり落ちた。

もだもだしながらはい昇って来て、逃去った。

(はぁ~、良かった。どこか行った……それにしても、奴ら本当に野生動物なんでしょうかね。
つがいなんでしょうか。恐ろしかったけど、仲むつましいのは微笑ましいですね)
しのぶは、そのあまりにどんくさい仕草に呆れ果てた。


襖一枚隔てた先から、何やら男二人の話し声が聞こえてきた。
神山と童磨だ。

「教祖様!行儀が悪ぅございます。他のものへの示しがつきませぬ」
「時間が惜しいんだ。
昼餉の間もなかったんだもん。やっと会えるんだ。早くしのぶちゃんの顔が見たい。でも、ほんの少し小腹も満たし……むぐっ!ゴホッゴホッ」

「あぁ!教祖様!」
「ゴホッゴホッ……ゴホッゴホッ。あー、ごほ、ろぐさんの言う通り……行儀悪い事するもんじゃ」

ああ、ガラにもなく何かをつまみながらこちらに駆けてきたのだろう。
そして、喉に詰まりかけたようだ。
朝、行ってらっしゃいと言って送り出したと言うのに、堪え性のない男だ。

あの男も存外にそそっかしい……いや、こんな一面を見せるのは特定の人物にだけ。

しのぶにいち早く会いたくて、柄にもないことをしたから……

いちど叱りつけてやろう。
そう思ったその時だった。

かさっ

草か何かが揺れる音がし

のそのそっと茶色くもふもふした生き物が座敷に上がり込んできた。

先程の狸だろうか

狸が二匹

「き……きゃぁあああああ!!!!!」

さすがにしのぶは悲鳴をあげてしまった。

「しのぶちゃん!?どうしたの?」
すぱーん!

派手にふすまをあけ童磨が駆けつけてきた。
「いやぁああああ。毛玉ぁあああ」
思わずその恵体に飛びついたのは言うまでもない。