白殊皎(しらよし こう)
2025-11-09 13:00:00
1902文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

いっとう好きな君に

えふご【歳勇/土近/としいさ/ひじこん】
土方さんに告白された近藤さん。
その答えはいかに?

このタイトルは第2回【白殊にタイトルを投げつけよう】企画にていただいたものです。
ありがとうございます!

 足元がふわふわする。
 こんな思いは初めてだ。

 自分はたった今、土方歳三に告白をされた。
「俺はあんたのことがずっと好きだった。この先この身がある限りずっと一緒にいて欲しい──つまり、あんたと恋仲になりたい」
 狂戦士バーサーカーの霊基とは思えない、穏やかなそれでも真剣な瞳でそう言われた。
 咄嗟に返事は出来なくて、少し待って欲しいと伝えると、土方は頷いた。
 よく考えてくれればいい、と。でもできれば色好い返事を待っている、と。

 考える間誰にも邪魔されたくなくて、個人でもらっている部屋に閉じこもる。
 いつも掛け忘れて土方に注意される電子錠ロックも今回はきちんと掛けた。
 改めて土方の言葉を反芻する。
──ずっと好きだった。
 それは、おそらく知っていた。生前から土方の自分への眼差しは常に優しかったし、時に熱を持って注がれていたから。
 だが視線の照準が敬愛なのか、憧憬なのか、それとも──恋なのか。
 その時の自分は、それをどう受け取っていいのかわからなかったし、土方も言葉に出すことはしなかった。
 故に日々に忙殺される振りをして、まっすぐ向き合ったことがなかった。
 その時点で自分は土方に甘えていたのだろう。
 ちゃんと向き合うべきだった。
──取り返しのつかないことになる前に。
 だから今回はちゃんと向き合って、答えを出したい。
 おそらく土方もそう思って口に出してくれたに違いない。
 そして考える。
 自分は、土方の想いに応えていいのだろうかと。
 本当に土方を想うのなら、生半可な気持ちで応えるのは彼にとって失礼だと思う。
……土方の言葉を考えれば考えるほど、自分の中の気持ちはふわふわと暖かく軽くなっていく。

──あぁ、私は告白をされて嬉しいんだ。

 そう気付くまでに時間は必要なかった。
 嬉しいのなら、はいと答えればよい。
 まっすぐ向き合って言葉にすればよい。
 生前ならいざ知らず、今の生には二人を隔てるものはなにもないのだから。

──愛してる。
 当世風の言葉で言うのならそうなるのだろう。
 図書館で読んだ本の中にも出てきた言葉だ。
 それがどういう感情なのか、自分の生きた時代にはなかった言葉なので、いまいち理解が及んでいなかったが、今ならわかる。

──それは誰よりも相手を大切に想うこと。一緒にいたいと、共に歩みたいと思うこと。

 部屋を出て土方の元へ向かう。
 自分と同じように土方も部屋に籠もっていた。

「歳。入ってもいいかな」
 解除キーは教えてもらっているが、扉前で声をかける。
「入ってくれ」
 向こうから扉が開き、土方が顔を見せた。
「お待たせ。歳」
 招き入れられ、土方が再びロックをするのを確認してから彼に向き直る。
「歳」
「あぁ、返事を聞かせてくれ」
 土方は振り返り、近藤と目を合わせた。
 その瞳は少し、不安げに見える。
「──私もおまえと恋仲になりたいよ」
 返答を聞いて、土方の瞳が僅かに揺らいだ。
「近藤さん──」
「ただ、一つだけ条件があるんだ」
 近藤はにっこりと笑って付け加えた。
「これからは一緒に歩んでいこう。そのために、お互い胸に抱くものは、全て打ち明けよう」
 土方はそれを聞いて近藤を抱きしめた。
「ああ……全部話す、そしてあんたの話も全部聞く。今後一切、遠慮も隠し事もなしだ」
 近藤の髪に頬ずりをしながら土方は答える。
 その表情は近藤には見えなかったが、今までにない安らぎに満ちた顔をしていた。
「ありがとう、歳……。私を求めてくれて……ずっと手を伸ばしてくれて」
「そんなことはなんでもなかったさ。あんたが今ここに……いてくれるから」
 やがて二人はそっと身体を離す。
 そして、ゆっくりと顔を近づけ、長い長い口付けを交わした。



 それからはストームボーダーの至る所で、仲良く並ぶ二人の姿が見られるようになった。

生前まえも近藤さんはアイツに甘かったが、いまは極甘だな」
「まぁ、それはその頃からわかってた事っすから、いいんじゃないっすかね」
「最近はとみにお熱いね。何があったか大体想像はつくけれど」
「ちゃんと話したならいいんじゃないでしょうか! ちょっと妬けますけど!!」
「まー、いいんじゃない? 沖田ちゃんの言う通りならね」
「あの様子見てると、やってられないよ」
 遠巻きに見守る新選組の隊士たちも呆れた様子だったが……

「まぁお互いにいっとう好きなら、構わないか」
──めでたい事に、そう帰結したらしい。

 二人の仲を邪魔するものはもう、いない。