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望月 鏡翠
2025-11-08 14:49:30
889文字
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日課
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#1894 次の国
#毎日最低800文字のSSを書く
酒場で一晩越すことはできない。
店の灯りが消える頃には店も消えている。二階に泊まれるんじゃないのかと喚いていた男が以前にいたが、何を言っているのやら侘助には理解できなかった。寝床など、どこにもないではないか。
今日も食事が終わり、酒を飲み終わったら、そそくさと退散する。
雛は酒で機嫌が良くなったらしいが、それでも店員が何度も触れようとするのでずっと怒っていた。これから旅を続けるにはもう少し人に慣れて、それに警戒心を育んでもらわなければならない。
飢餓を剥き出してぎゃんぎゃんと吠える癖に、勘が鈍いのだ。
強い生き物に守られていたが故の鈍さだろう。親龍のような大きな生き物がそばにいれば、物音にも気配にも鈍くなるのだろう。
店を出る。
今日は他の客と行き合わなかった。きっと店員に雛に興味を持つものがいるだろうから、行き合う人がいないのは幸運だった。
店の外に出ると、もう他のものと行き合う心配はない。不思議と、店の中はともかく、外で他の客と出会うことはないのだ。店の前にある道は一本道だ。来た道に戻っても、元の世界に戻ることはない。どこか別の世界にたどり着くだけだ。
腹が膨れた雛は角の間に乗り込んだ。
食べ過ぎているせいで、少し重たい。
道を進めば霧が出てくる。そうして深い霧の中を進めば、いつの間にか次の国に出ているのだ。あまり長い間歩かされることはない。道はまだ穏やかなまま続いている。
旅人の理のことを龍に見せてやりたかったのだが、頭の上に登った途端に寝息を立てている。全く勝手なものだ。子供らしいと言えば、子供らしい。
歩いているうちに、踏みしめる地面の感触が変わった。
別の国についたらしい。思わず頭の上の雛を確かめていた。旅人の道は一方通行だ。逸れたら二度と出会うことはできないと思っていい。
落としたら事だと思ったのだ。それに本当に同道できるのかも、次の国に入るまでは確信が持てなかった。
手のひらで鱗の感触を確かめながら歩き、目の前の霧が晴れたときは心の底から安堵した。
これで次の道に迷い込むまでは共にいられる。
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