ortensia
2025-11-07 14:55:50
1647文字
Public 傭リ
 

たぶん荘園時空よーり(+さいごちょっとえま)

クリスマスネタフライングして良いですか?しますね?

 煌びやかさを競うように各々色や形で個性を見せるオーナメント、それを筆頭に各所色々な飾り付けで賑わった会場は、準備と参加に勤しむ者達自身が、それらを上回る煌めきで賑やかしていた。
 夜にしては眩しい光景に、細める目を持たない己でも似たような感情になる。リッパーはクリスマスパーティー会場を満足気に眺めていた。だが今一つ身が入らない気持ちがある。不満がある、というのだろうか。
 視線をゆっくり動かす。輝いているのは飾りだけでなく、丹精込めて工夫を凝らして作られた料理達もそうで、眩いのはは食べ物のツヤだけのせいではないだろう。
 賑やかに楽器を奏でたり、歌ったり踊ったりしている者達もいれば、マーケットを開いたりその場で作ったりしている者達もいる。飲み物や食べ物に舌鼓を打っている者達もいるし、それを片手に、歓談またそれが音楽かのようにさざめいていた。
 いつもこうしてそれらを広く浅く、眺めて楽しむのがリッパーの参加方法だったが、今回は小さな滲のような不満が、やはりあった。こうも大勢で賑やかにやっている場は、それはそれで楽しみはあるのだが、特定の一人と過ごしたいとなると、それは不向きだ。
 リッパーは温かい灯りに照らされて、クリスマスディナーを食べ続けている小男を見遣る。傭兵だ。徐々に減って行くあんなにあった料理達の、いったいどれ程が彼の仕業なのか知れない。というか考えないことにする。
 リッパーは食事は大勢で囲むより、各々の食事はこれ、と決まっているもののほうが好ましかった。自分のものが分かり易いからだ。誰のものでもないものを将来誰のものにするか、気遣いとか、そういうことを考えるのは煩わしかった。だが傭兵には、逆の意味で関係ないのかもしれない。
 そっと食卓から目を逸らし、また何処というでもなく視線を巡らせる。自分の参加している自覚を薄めれば、それは絵画を見ているのとなんら変わらない。
 そうして気を逸らしていたから、近寄って来た気配に気付くのが遅れた。
「ん。この辺りがおまえの好きそうな味だったぞ。」
……どうも。」
 傭兵だ。
 リッパーのための料理を見繕って持って来たらしい。その言葉から、全ての料理を味見、どころじゃないだろうが、食べたらしい。
 一枚の大きめの皿に、塊にして分けて載せられた料理を、皿と一緒に受け取ったカトラリーで、料理を口に運ぶ。不満はない、美味しい。
「何か不満か?」
「え?」
「おまえなら、こういうの、もうちょっと楽しめるだろう。」
 リッパーは口から離したカトラリーをくるりと回して、言葉を考える。
「楽しんでますよ、これはこれで。」
 今度は傭兵が、リッパーを見たまま少し考える様子を見せた。
「何がしたい?」
「別に。ここでは手も繋げませんし。」
 思わず口を突いた。
 しかし傭兵は怪訝な顔をした。
「構わんだろ。」
 言うが早いか傭兵はリッパーが左手に持っていた皿を自分の手に戻すと、空いた手でその左手を取った。傭兵はリッパーの、刃の手に平気で手を伸ばす。勿論爪には触れないように器用にその手指を握るのだが、それは彼が自分のナイフを扱う時となんら変わらない。リッパーは、傭兵のこういうところだけ器用、否、慣れているところが、嫌いではなかった。
 そうして繋いだ手を引いて、食卓の端っこまで移動する。そこに皿を置いた傭兵は改めてリッパーに向き合った。リッパーは見詰め合いながら食事を再開することになった。傭兵の目は、自分が食べているわけではないのに満足そうだった。
「仲良しなのね。」
 クリスマスケーキのマジパンサンタを見事ジャンケンで獲得したらしい庭師が、ケーキを載せた皿をフォークでつつきながら、そばに寄って来てそう言った。
 サンタ帽にトナカイツノの飾りを揺らした彼女は、それだけ言って離れて行ってしまうが、リッパーはそれを満足な気持ちで見送った。こちらには、健気に食事と願いを叶えてくれる小さいサンタがいるので。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。