のたり
2025-11-06 09:16:28
1093文字
Public hrsz
 

連想記憶

両片思いの手前のはるしず

「これ可愛い!」
そう言ってみのりちゃんが手にしたのはピンクのキャスケット。
「本当、可愛いわね」
「似合うかなぁ」
「ええ、とっても似合うと思うわ」
みのりちゃんがキャスケットを被って、私の方を向く。
「どうかな、雫ちゃん」
「そうね、もう少しツバを上げたほうが可愛いんじゃないかしら」
そう言いながらツバを上げてみのりちゃんのかけていた眼鏡の位置を整える。
「あら、猫の耳ボタンがついているのね」
「うん! 可愛いよね」
「ふふ、ピンクだし愛莉ちゃんを思い出すわね」
「あ、わかる! ピンクも猫も愛莉ちゃん!って感じだもん」
「そうね」
「青とペンギンを見たら遥ちゃん!って感じだし……、雫ちゃんはシマエナガかなぁ? あ、でもチョコミントのアイスを見て雫ちゃんだぁ!って思ったことあるよ!」
花が咲いたみたいに笑うみのりちゃんはとても可愛くて、私もつられて笑顔になった。


……と、いうことがあったの」
遥ちゃんに話すとふふっと可笑しそうに笑った。
「雫がチョコミントかぁ。思ったことなかったけど、言われてみれば確かに雫のイメージカラーだね」
「ええ。遥ちゃんもピンクやオレンジをみたら愛莉ちゃんやみのりちゃんを思い出す?」
「私?」
その表情で、遥ちゃんはそんなことがなさそうなのがわかった。
「あまり考えたことなかったな。どちらかというと私は愛莉と言えば猫かな……。みのりは……、あ、このあいだのハロウィンのおばけカカシを見て、ボーっとしてるときのみのりみたいだって思ったよ」
「まぁ」
たしかによく似ていたかも、と思って、ふふっと笑う。
「遥ちゃんは私を思い出してくれるものはある?」
「そうだね、うどんとか茶碗蒸しとかおみそ汁とか?」
「あら、全部食べ物?」
私ってそんなに食いしん坊に見えているのかしら、なんて考えていたら、遥ちゃんはふふっと笑った。
「うどんや茶碗蒸しを見ると一緒に食べたくなるし、おみそ汁を見ると雫の作ってくれたおみそ汁が飲みたくなるから」
「本当? 嬉しいわ! また作ってくるわね」
「うん。ありがとう」
あとは……、と遥ちゃんはなにかを思い出すように視線を上に向けた。
「雨上がりのキラキラした風景とか和風の落ち着いたカフェとか……、ほっとするような景色を見ると雫と一緒に見たいなって思うから、私、あまりイメージカラーとは関係ないもので雫のことを思い出してるよ」
そう言って笑う遥ちゃんに何故だか胸がきゅうっと締め付けられた。
それは、いつも遥ちゃんにはそんなふうにリラックスして笑っていてほしいと願う、私が見たい表情そのままだったから。