ortensia
2025-11-05 13:12:55
1126文字
Public その他てて
 

謎時空でマリーさまと小説家氏(と記者さん)

scp1792jpギロチン・レモネード、友人価格で25¢

 それはレモネード屋だった。小説のネタにもならない。
 競馬場のお祭り騒ぎに乗じて出店しているようだが、果たして許可を得ているのか。そんなこと自分には関係がないが。
 レモネードの文字の看板を直接ベニヤに書いた板を、両側の二本の支柱で掲げている。学生が学祭で出すような店構えだった。祭りの屋台よりお粗末な、あれだ。ベニヤを鋸で切って、そのまま釘で打ち付けただけの作り。
 しかしそこで店番をしていたのは、学生はとうに卒業しただろう女性で、いでだちも何処か高級な品があった。
「いらっしゃい。」
 しかしその気さくさは学生と並ぶかもしれない。こちらに気付くまで、手作りのカウンターでだらけ気味に暇そうにしていたし。そして、衣類は高級そうだが、髪が短めにざんばらで、質の良さそうな髪は散髪の手入れは入っていないようなのが、妙だった。
「レモネードをどうぞ。」
 とはいえ、メニューがレモネードしかないらしい。学生の出し物でも飲み物のバリエーションは揃えているし、軽食も出すかもしれない。それでも彼女の店はレモネードオンリーだった。それならそれで、レモネード専門店を謳える程、レモネードの種類を増やしている工夫があるわけでもない。
 安っぽいことが丸分かりのレモネードを単体で、ただ安物の使い捨てコップに注ぐ。それだけのサービス。それで料金を徴収しようとしている。
「でも。」
……うん?」
「そうね。親戚の知人価格で、二十五セントにして差し上げます。」
 彼女にすっかりターゲッティングされてしまった。
 二十五セントなら、とそばに寄る。募金よりもお粗末だ、店の造りのように。
 カウンターにコインを置くと、それを受け取った彼女は、レモネードの準備に取り掛かった。
 既製品のレモネードを注ぐだけかと思えば、どうやらきちんとレモンを搾るところから作業を行っている。最初の印象より、感心した。
 それでつい、カウンターの内側へ身を乗り出すようにしてしまった。
 すると看板にしていたベニヤ板が、ギロチン刃のように落ちて来た、レモネードの文字と共に。
 それで客の小説家の頭は断首となり、カウンターの上に転がった。
 彼女が物音にそちらを見ると。
「あら?」
 レモンが一つそこに転がっていた。
 客人の小説家の姿は、頭も体もなくなった。
 彼女は消えた客に、仕方なくレモネード作りを中断し、手に持ったレモンを、他の材料のレモンを置いているストックに混ぜた。
 そして次にそのレモネード屋を通り掛かったのは。
「いらっしゃい。」
 メモを取りながら歩いている記者だった。
「レモネードをどうぞ。」
 親戚の知人価格で、二十五セントにして差し上げますよ。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。