モモハナ
2022-02-10 15:53:28
1663文字
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穏やかなティータイム

F蘭ワンドロお題『コーヒー』で書かせて頂きました。
うるーくんとほむらくんがお互いの飲み物を味見しあう話です。

 焦げ茶色の小さな豆を挽いて、焙煎して、抽出する。
 そうして出来上がった濃い茶色の飲み物。それが珈琲。
 人間界に来て、BAR-Fで寶が淹れてくれたソレを初めて飲んだ時、その独特の香りと風味にうるうはひどく驚かされた。
 飲み慣れれば美味しいし嫌いではないのだが、珈琲の独特な苦みがうるうは好きになれずにいた。
 しかし、焔は逆に香ばしい香りと風味がいたく気に入ったらしく、寶が淹れてくれたものや自分でインスタントのものを淹れたりして愛飲している。
 今日も寶に頼まれて焔とうるうの二人で買い物に出掛けたのだが、その帰りに休憩をしようと寄った小さな喫茶店で焔はアイスコーヒーを注文していた。
 うるうも最初はコーヒーにしようかと思ったのだが、メニュー表を眺めていた際に好みの茶葉の紅茶がある事に気が付き、結局其方を注文した。
 程なくして届いたアイスコーヒーと紅茶が二人のテーブルに届けられると、焔はコーヒーと一緒に届いたミルクをそこに注ぎカラカラとストローでかき混ぜ始めた。
「いつもはブラックで飲むのに、今日はミルクを入れるんだな」
 ミルクと混ざり合い、濃い茶色から淡い茶色に変化していくコーヒーを眺めながらうるうが言うと、コーヒーを混ぜる手を止めて焔があぁ、と小さく頷いた。
「まぁ、たまにはな。それよりそっちはまだ淹れなくていいのか?」
 そっち、と焔がうるうの目の前に置かれたティーポットに視線を向けた。
 焔に聞かれ、白いティーポットと共にお盆に載せられてきた砂時計に目を向けたうるうは、半分より減ったソレを見てもう少しだな、と返事を返した。
「紅茶はティーポットにお湯を注いでから三分ほど蒸らしてから飲むのが一般的なんだ。こうする事によって、茶葉から紅茶の持つ味や香りが十分に抽出されて美味しく頂けるんだ」
「あー、だからポットで運ばれてきたのか。紅茶なんてほとんど飲まねぇから知らなかったぜ」
「焔はコーヒー派だものな。だが、紅茶には紅茶の良さがあるんだ。そうだ、折角だし淹れたてを飲んでみると良い」
 特別に味見をさせてやる。
 ふふ、と微笑を浮かべてそう言ったうるうは、そのまま目の前の白いティーポットに視線を向ける。
 横に置かれた砂時計の砂は大分下に落ちていて、もう間もなく全て落ち切りそうな量まで減っていた。
 さらさらと落ちていく水色の砂が全て下に落ち切ったのを見てとると、うるはそっとティーポットの取っ手に手を添えた。
 蓋が外れないように左手を添えて抑えながら、注ぎ口をカップに向けてポットを傾ければ、ふわりとした香りと共に琥珀色の液体が注がれていく。
 半分より少し多いくらいの所まで注いだところで、うるうは傾けていたポッドを起こしてテーブルに戻した。
「ほら、熱いから火傷しない様に気を付けるんだぞ」
 ほこほこと湯気を立てる淹れたてのストレートティーをうるうにそっと差し出され、焔は思わずそれをまじまじと見つめた。
 コーヒーよりも淡い琥珀色のソレ。しかし、ひとたびカップから香ってくるその香りはコーヒーとはまた違った香ばしさがあり、焔は思わず鼻をひくつかせた。
「紅茶ってこんないい匂いするんだな。そうだ、俺だけ味見させてもらうのも悪いし、お前もこれ飲んでみるか?」
 まだ口付けてねぇから、と焔が自身のアイスコーヒーのグラスをうるうに向けて差し出してきた。
お前、まさかその為にミルクを入れたのか?」
「べっ別にそう言うわけじゃっ! ただ今日はミルクを入れて飲みたいって思っただけだ」
「ふ、まぁそういう事にしておいてやるよ」
「何でも良いけど、早く味見しろって。氷が解けたら味が薄くなっちまうだろ」
 照れくさそうに頬を赤く染め、美味いと紅茶を飲む焔が何だか可愛くて、うるうは思わず笑みを零すとそっとストローに口をつける。
 そうして、一口味見をさせてもらったアイスコーヒーは何時もより美味しく感じ、うるうは今までよりも少しだけコーヒーが好きになっていた。