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望月 鏡翠
2025-11-04 00:38:48
952文字
Public
日課
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#1892 今日のお客様
#毎日最低800文字のSSを書く
全ての動作にヒヤヒヤさせられる。
ようやくアルバイトがお客様にちょっかいを出すのをやめて、安心して仕事に集中できるようになった。彼女の性格を考えて、ひとまず今日の間は大丈夫だろう。
この仕事で一番重要なのは注文も間違えない記憶力や、重要な愛嬌などではない。
おおらかであることだ。細かいことを気にしてはいけない。
ただしおおらかすぎると、お客様の機嫌を損ねる可能性がある。彼らは店にいる間は概ねおとなしいが、恐るべき力を持っている。
侘助とて、穏やかな存在だが人間ではない。アルバイトの目からはあの角や耳や蹄は、どのように見えaているのだろう。
龍種を触ろうとしたときは驚いた。最近の若い子は、なんて大胆なことをするんだろう。しかし彼女には、それがトカゲに見えているらしい。トカゲに見えていたとしても、いきなり触ったりするものだろうか。最近の若い子が考えることはわからない。
その竜種も連れているペットではなく、歴としたお客様だ。まだ幼いから、呪いをかけたり何かしら魔法のような力を使ったりすることはなさそうだが、もう少し大きかったらひと齧りで指先くらいは無くなるのではないだろうか。
龍など、一体どこから連れて来たのか。
彼らは大抵、旅人にはならない。
理由は知らない。旅人そのものが、よくわからないものだから、理由などないのだろう。ただ、旅人という概念を持たないものは、旅人にはなり得ないという仮説を立てている。
野生の動物が紛れ込んでくることがないというのは、つまりそういうことだろう。
会話をしている風ではないが、侘助は龍に話しかけながら楽しそうに酒を飲んでいた。
龍も酒を飲むと機嫌が良くなるらしく、肉以外に、侘助が食べている蕎麦にも興味を持っていた。猫が動くものを追いかけるがごとく、箸の先を追いかけている。人が食べているものを見ると自分も試したくなるのは、幼い子供のそれだ。好奇心が旺盛らしい。
龍の口では蕎麦を啜れないようで、不器用に少しずつ食べ勧めている。
侘助は食べやすいそうに一本一本口元に持っていってやりながら、その不器用な動きを見て笑っていた。
孤独な旅人が打ち解ける人を見つけるというのは、喜ばしいことだ。良い客であれば、なおのこと。
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