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kibaco
2025-11-03 18:06:30
4408文字
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憲直
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ご忠義ミルク
憲直。途中まで。尊直要素があります。
いつの頃か、直義の背が伸び始めた頃からか。
夜半、直義の足元から衾の中に何かが入り込んでくるのだ。
怪物。
それは直義の足の指から順にしゃぶりつき、その舌は肌を這い上がって身体中を舐め回し気まぐれに歯を立て噛みついてくる。
(食われる
…
)
怪物が来ると、直義は恐怖に固まって声も出せない。とくに脚の間をしつこく吸われ、不浄の部分を執拗に舐め吸われる。へそや乳や脇腹や、皮膚が柔らかいところを吸い咬みついてくる。怖い。怖い。食われる。
怪物はとても力強く、直義が抵抗してもろくに身動きもできない。直義の乳の先をふやけるほど舐め、痛くなるほど吸ってくる。
(兄上。兄上。助けてください)
助けを求めて隣の畳をみると、そこで寝ているはずの兄の姿がない。
(兄上、兄上どこに行ったのですか。ご無事なのですか)
ああでも。怪物が兄上を襲わなくてよかった。
「うう
…
」
それは兄が居ない時を狙ってしばしばやってきて直義を食おうとするが、いつも味見するかのような行いをするだけで肉を裂くようなことはしないのだ。
「これは一体なんなのだろうか」
「うわあ
…
」
相談がある、と先ごろ遅い元服をした従兄弟直義に話を持ちかけれた憲顕は思わず呻いた。
元服の祝い以来、久々に会えた気に入りの従兄弟が神妙な顔で憲顕の袖を引き人気のないところへ導くので、憲顕の期待は大きくふくらんでいた。水干を脱ぎ瑞々しい直垂姿の直義に、(直義様ももうお年頃
…
どんな恥ずかしいご相談も、この憲顕がお聞きしましょう
…
)と心を踊らせていた。
そんな憲顕の予想の真上を通過する、どうにも淫靡な話にへんな汗が吹き出したが、この従兄弟に対して「頼れる身近な親戚のお兄さん」の地位を確保していたい憲顕は動揺を抑えていつもの笑顔を作った。直義の周りには頼れるお兄さんがやたらに多い。尊氏を筆頭に、重能、師直、師泰と上がつかえており、憲顕は今のところ「歳が近く気安い変人の従兄弟」の立場に甘んじていた。だが今回はその近しさが功を奏したようだ。
「それで思ったのだが、いつも此処に執着しているようなのだ」
兄や幼馴染らほどではないが、じゅうぶん豊かに育った胸を憲顕に見せつけるようにむちりと自ら掴み上げた。えっろ。涼やかな色の衣の中で白い肉が形を変えるのが透けて見えるようだ。エルフアイなら透視力。
「ほお」
何を聞かされているのだろう。憲顕の意識はふわりと遠のいた。
「私は男なのにその怪はこれを必死に吸っているのだ。もしかすると、実はこの怪物は赤子のように幼きもので、母の乳を求めているのに、それが充たされなくていつまでもやってくるのかもしれない」
「なるほど」
「母を恋しがってると思うと不憫になってきた。上杉、なにかこの怪を祓う良い方法はないものだろうか」
「ふーん」
(この人はこれを真面目に言ってるのだ)
大真面目な直義に、憲顕はある種の畏敬すらおぼえた。そして同じくらい呆れた。
「直義様は乳を吸われて平気なのですね」
「平気なわけあるか。こまってる。やめてもらいたいのでこうして思案している」
「何故直義様の元に現れるのでしょうな?」
「それはわからぬ。決まって兄上がいない時に出るのでひどく臆病なのかもれない。兄上を畏れているのだろう」
「は〜
…
そうでしょうともよ」
「はっ!もしかして妖かしはわたしなら事態を解決できると見込んでいるのでは?」
直義が目をきらきらとさせてそんな事を問うてきたので、憲顕は呆れてキレそうになった。いきなり可愛い事を言わないでほしい。従兄弟はとても賢いのに、どうしてこうなのだろう。やばい。一生ついてく。
哀れな怪物に解決を期待されてる、と勝手に思い込んだ直義に、
「頼む憲顕。何かよい策はないだろうか。賢いお前が頼りなのだ」
と、おねだりされて憲顕の頭蓋の中の灰色は懸命に活動した。ああ直義様の期待に応えなくては。憲顕は必死に己の持てる限りの知恵を絞った。しぼる。その時憲顕の頭脳にぴぃんと天啓が降りた。
「では直義様の乳が出ればいいのですね!」
「えっ」
「怪物が乳を吸って充たされれば気が済んで成仏?するのでしょう?」
「それはわからない」
「やってみましょう!俄然やる気でてきた」
「待ってくれ。私は怪物の出自を調べて母なるものを探そうかと思っていたのだが」
「だっていつの間にか消えてるのでしょう?調べようもありません」
「む」
「諜報は私の得手ではありませぬ。悪霊調伏も専門外です。しかし人体改造でしたら私の本領でございます!」
ここに来て直義は相談相手を間違えたかもしれないと気付きを得た。気恥ずかしくとも重能か師直にすべきだった。だが己の策に酔いしれる憲顕はもう止まらない。
「正体不明の怪物の出どころを調べたところで既に何年にも渡り怪異は起きております。母なるものを突き止めたとて怪異の不満が解けるとも限りません。直義様は退治を望みではない。足利が不吉な怪異に憑かれているとの噂が立つのは避けたい。悪いかたちで怪異を刺激して更なる祟りが起こるのもこまる。可能な限り穏便な解決をしたい。そうでしょう?」
立板に水とばかりに憲顕の舌は滑らかに回る。
「直義様のお胸からたっぷり甘い乳が出ればみんなしあわせ。これで行きましょう」
「出てもこまるんだが」
「お子が授かった時に妻となる方のお助けできますよ」
「わるくない策な気がしてきた」
説得に成功し、憲顕は袖の中でぐっと拳を握った。
*
「う~んなかなか出ませんねえ
…
」
怪異調伏のため、直義に憲顕の策を施し始めてしばらくが経った。
「
…
うう、やっぱりこの策見直すべきではないか?」
つねに毅然とした直義が尻込みするのは珍しいことだった。それだけ憲顕のこの策は奇策であった。
「しかし成果は上がっておりますぞ!直義さま!」
そんな弱気な直義に構わず、憲顕はデカい声で生き生きと報告を始めた。研究に夢中で気分が高まっているのだ。
「直義様の乳はちゃんと大きくなっております!このように白くむちむちと、よい感じに脂が乗ってきました!」
「そうか。しかしそう言われるとなんだか恥ずかしい」
「乳首はまだお小さいですが、これはおいおい育てましょう」
数年に渡り怪物に吸われていながら、ふっくら色付いてる乳輪に比べて直義の乳頭は慎ましい。
「直義様の乳は元々素質のある良き乳でしたが、私がお育てしたことで一層豊かになられました」
「太っただけでは?上杉の薬を摂るようになってから尻も大きくなった気がする」
「それはそうです。雌を育てる成分を投与しております」
「なにっ大丈夫なのか。それは」
さらりと憲顕がとんでもないことを事を言うので、直義は飛び上がって思わず我が身をかき抱いた。
「大丈夫でございますよぉ。そも生物は雄と雌の成分が適当に混ざっておるのです。雄の成分が多ければ男の特徴が顕著になりますが、実際は雄雌どちらの成分も有しているのですよ」
意気揚々と憲顕が囀る。
「ご安心を。今は直義さまの雌の成分をふやして乳をふくらませておりますが、直義様の雄の成分が失われるわけではないのです」
「なるほどわかった。ではこの策は取りやめとする」
直義は即断した。
「なんでですかーーーー!!!???今きちんとご説明したではありませんか!」
「このまま乳と尻がデカくなって雌牛のような体型になるのはいやだ!」
「大丈夫です!誤差です!!!直義様は元々乳と尻がデカい方なので誤差の範囲です!」
「そ、そうなのか
…
知らなかった」
「足利周りの方々はみな体格が良いですからね」
己の自認と異なる事実に衝撃を受ける直義を、取りなしてるようでそうでもない言葉で受け流し憲顕は追従する。何としてもこの実験、ではなく策を続けたい。
「良いではありませんか雌牛。憲顕はぷりぷりプルプルに育った直義様を見とうございます。すごく良いと思いますよ」
「実験台にしてるな。怖くなった。取りやめる」
「残念ながら雌牛にはなれませんよ。この憲顕が薬の調整を誤るわけがございません!体調がわるくなったりしてないでしょう?」
「うむ。調子がよいくらいだ」
「でしょでしょ。順調なのですよ。育乳は成功です。あとは乳を出すだけ。
…
こんなに良い乳になったのになぜ出ないのでしょう」
憲顕はさりげない手付きで直義の胸紐を解き、良い具合に育ってきたそこにそっと両手を差し入れおしいただいた。柔かたく滑らかで温かい。そして美しかった。直義の身体はこんなにもけなげに、憲顕の期待と取り組みに応えてくれている。しかし。憲顕は直義の開いた胸元に寄った。直義の肌からほのあまい匂いを感じる。そう感じるのは直義の肌が瑞々しく、温かく、呼吸をしているからだ。生き物の、生の香り。憲顕はこの匂いを愛している。実験はまだ成功していない。憲顕は切なく白い丘のつれない頂きを恨んだ。
「おい、吸うな」
「私の吸い方がわるいのでしょうか」
直義が尻尾のようにひょろりと束ねた憲顕の後ろ毛を引くが、憲顕は構わず舌を動かした。
「ンッ
……
そうかもしれんな。他の者に試してもらうか」
「いえ、私の搾乳は完璧です。他の者でも同じ結果でしょう。やはり直義様の乳がまだ乳を出す段階に至ってないのですね」
「やはりとは、何か心当たりがあるのか」
「
…
はい」
憲顕は神妙に声音を下げた。その深刻そうな様子に直義も緊張する。
「不都合があるのだな」
「不都合、とは少し違うかもしれません。当然といえば当然なのです」
「もったいぶるな。言え」
「では言います。直義様が孕めば乳が出ます」
「世話になったな。私は足利屋敷へ帰る」
手早く衣の乱れを整え、直義は踵を返した。この実験
…
ではなく策にかかってから、直義は上杉の屋敷に寝泊まりしている。
「言えというから言ったのに!!!」
直義の腰に縋り付いて憲顕は抗議した。
「私は化け物退治を頼んだのだ!私を孕ませろとは言ってない!」
「もう一度言ってください。とは言ってない、の前で区切ってもらえますか」
「私を孕ませろ、とは言ってない」
「ふう
…
ありがとうございます」
「なんだ今の」
「本当に孕む必要はないのです。孕んだと身体に誤認させ、身体に孕んだ時のはたらきを促せば良いのです」
「ずいぶん恐ろしい話をしてないか」
「怖くないですよお。切るも貼るもナシです。種付けするだけでイケます」
「すごく恐ろしい話だった」
直義は真っ青になった。再び己の人選の誤りを思う。今からでも重能に相談するべきかもしれない。憲顕は直義の胎に種を付ける気でいる。そんなこと言えるか。
主君の気も知らず憲顕はニコニコと無邪気にほほえみ、ンフーとうれしそうに直義の腹を撫ぜ回した。直義が乳を吹くまでやめる気がないのだ。
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