白殊皎(しらよし こう)
2025-11-05 20:00:00
967文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

月の帰港地

FGO【歳勇/土近/としいさ/ひじこん】
お付き合い済みの2人。
近藤さんの右眼の色の話。
──月が綺麗ですね。

 食堂で二人揃っての昼食時、近藤は土方の手が止まっていることに気づいた。
「歳、どうしたんだい?」
 声をかけても返事がない。
 だが視線はまっすぐ自分に向けられている。
「歳」
「おう」
 もう一度呼びかけると土方は短く答え、視線を外して手を動かし始めた。
「私の顔に何かついているかい?」
 気になって聞いてみる。
「ん、綺麗だなと思って」
「返事になってない!」
 さらりと言われたその言葉に近藤は頬を微かに染めた。
「あんたの右眼、まるで空にかかる月みてぇだ」
 そんな近藤を尻目に土方は尚も続ける。
「あんまり綺麗すぎて、本当に視えてるのか心配になる」
 自分に対してどこからそんな言葉が出てくるのか、他にも人のいるこの場所でそれはやめてほしかった、と思う前に土方の手が伸びてきて頬に触れた。
「ちゃんと視えてるよ?」
 自分の瞳が左右で色の違うことは知っている。
 奇異なのはわかっているが気にすることなく過ごしてきた。
 外つ国ではオッドアイなどと呼ばれ、やはり持つ者は少ないのだとカルデアここに来てから知ったこともある。
 視力に問題はないし、なにより幼少期から見知っているはずの土方がそう言うのが不思議で首を傾げる。
……ならァ、いいんだ」
 ふっと自嘲気味に笑い、土方は食事の残りをかきこむ。
 先に戻るぜ、と声をかけ珍しく一人で食堂を去っていった。



──同じ月に攫われてしまわないか、月を欲しがる子供に取られるのではないか。
 そんなことを考えていたと言うのは流石に恥ずかしかった。
「歳!」
 部屋に戻って少しも経たないうちに近藤も戻ってきて自分の正面に陣取った。
「ゆっくりしてくりゃあよかったのに」
 そう言った自分に、公衆の面前でああされては入るものも入らない、と頬を膨らませた。

──ほんとうに、綺麗だ。
 いつまでもその景色を見ていたい。

「なぁ、歳」
 うっとりと視線を投げる土方の頬に手を添え近藤はその顔をのぞき込む。
……もし私の目が視えなくなったとしても、お前が導いてくれるのだろう?」
「当たり前だろう。他の奴になんか、譲らねぇよ」
 だからもう目の届かない所には行かないでくれ、と囁く土方の唇に、近藤はそっと口吸いをした。
 もうどこへも行かないとの誓いをこめて──。