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syanpon
2025-11-03 01:40:35
1598文字
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だって味をしめちゃったから
オトスバ
行商√
人は見た目が何割だろうか。
これについては諸説あるだろうが第一印象から受け取るイメージというものは良い意味でも悪い意味でも残り続けるものだ。だからこそオットーは緑色の服を着て、愛想良く笑い声を張ってできる限りハキハキと話す。下手にですぎてほんの少し猫背気味になってしまったのは仕方がない。
そうしてそういった立ち回りを共同経営者であるスバルにももちろん伝えている。以前自分とおんなじお揃いの外套にしようと提案して「なんとなく嫌」という曖昧でだがしかし強固な固辞をされたこともある。諦めてはいないが。
スバルとオットーのタルタルソース商いは料理屋に卸したりすることもあるが生産数の関係上手売りがほとんどを占めている。そのためスバルはわかりやすい目印として制服を提案し、オットーも乗っかった。
だがしかしスバルが手作りするにしてもどこかに発注をかけるにしても服を一式作るのにはそれなりの時間がかかる。着替え用の替えのことも考えると数枚は欲しい。
タルタルソース商売はもう始まっている。そのため制服を作るまでの“つなぎ”としてでた折衷案がお揃いのエプロンであった。最悪布と紐さえあれば簡単に作れる小学校の家庭科のナップザックと並ぶ鉄板品。
ただここで誤算が一つ。
「あのさぁオットー」
「なんですか?」
「いつもの服の下にエプロンつけたら意味ないんですけど!?」
オットーのエプロンの扱い方が下手くそすぎたのだ。誤算も誤算、大誤算である。
着ようとすれば普段の服を上から着る、特にひどいのが蝶結びだ。縦になったりぐちゃぐちゃになったり固結びになったり。
オットーは毎回、あれれ〜という顔でその度に首を傾げ、眉を下げてスバルを見てくる。
「お前も器用な方なのになんでこれだけ壊滅的な訳?」
「なんでなんでしょうねえ
……
。こう、背中で結ぶじゃないですか。見えないから難しくて」
「お前のだけボタンとかマジックテープみたいなやつにかえようか?」
「ええ、いいですよこのままで」
「なんか譲歩みたいに言ってるけど結ぶの俺ね?? はあ、ほら後ろ向けよ」
ため息を一つつき、オットーに背中を向けるように促すが当の本人はにこにことしたまま一向に振り返らない。スバルの顔が引き攣る。
「オットー?」
「ナツキさん、お願いします」
「もー!」
スバルはオットーの正面に立つとエプロンの紐を取り、抱きつくような形で紐を結ぶ。後ろから結ぶ方がこちらとしてもやりやすいのだが最近になってこの男は真正面からしか結ばせてくれなくなってしまった。結んでもらっている立場なのに生意気だ。
そのまま蝶結びを完成させ、スバルはほんの少しだけ逡巡しオットーの背中にぎゅうと両手を回す。耳元で嬉しそうな声が響いてそのままぎゅうと抱きしめられた。
「へへへ」
「
……
なんかなぁ。お前にいいようにされてる気がする」
「気のせいですよ。ナツキさんハグは嫌いですか?」
「嫌いじゃないけど!!!」
商売開始前のリボン結びとハグが婚約者のネクタイを結んでキスをするベタな儀式の代わりのように思えて落ち着かないだけなんて女々しいしこいつが調子に乗ることも明白なので言ってやらない。
「はぁ、オットーお前一生エプロン着るの下手でいいぞ」
今日も忙しくなるけどあと5秒だけ。そう言って男の胸元に擦り寄ってスバルは目を閉じた。
***
「お兄さん、後ろの紐ほどけかかってるよ」
声をかけられて振り返って見ればたしかに自分のエプロンの紐が緩んでいる。スバルを探して視線を彷徨わせるがどうやら彼も接客対応中のようで声をかけられない。
「ありがとうございます」
オットーは後ろ手でささっと自分の紐を綺麗な蝶結びに結び直す。
そうして指摘してくれた客に礼を言い、歯を見せて笑った。
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