匣舟
2025-11-02 22:46:38
3921文字
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とろとろ溶けゆく

秋のリクエストで頂きました学パロでハロウィンパーティーをする久々乱です。すこしえっちです。

 十月になると街中は一斉にハロウィンカラーに染まり、各所で仮装衣装が販売されていたりお菓子が販売されていたりと様々な展開がされている中、大川大学の大学院でもハロウィンに浮かされている生徒たちがハロウィンにお決まりの言葉を言い合ったり、お菓子を交換したりしていた。
「兵助、とりっくおあとり~と~っ!」
 いつも兵助と一緒にいる五人の中の一人である三郎が席に着いている彼にいきなりハロウィンお決まりの言葉を投げかけた。三郎の隣にいる雷蔵は苦笑して頬を掻いているし、勘右衛門と八左ヱ門に至っては爆笑している。なぜ、こんなにも二人が爆笑しているのかというと彼らに目もくれず講義の準備をしている久々知兵助という人間はある特定のものを愛するがあまりこういう行事ごとに疎いため毎年お菓子を持ってこず、三郎にいつもいたずらをされるというのがお決まりだからだ。
 三郎のニヤニヤした悪い顔を一瞬だけ見つめた兵助は顔色を変えることなく、自分の鞄を机の上に置いて鞄の中にあったあるものを三郎に投げ渡した。
「はい。」
 兵助から投げ渡されたものを手に取った三郎はそれを見ては?と声を出した。兵助が三郎に投げ渡したのはよく冬になる前になると売るようになる四角型のチョコレートだった。冬といえば定番ともいえるチョコレートを見ると三郎は途端に嫌な顔をした。
お前、今年は学んだのか。」
 悔しがる三郎を見た兵助はふっと笑みを零してまあ、今年は乱太郎が教えてくれたからね。と彼らを煽るように笑ってまた講義で使うであろうプリントに目線を戻した。兵助から発された広範囲マウントに三郎のみならず周りにいた三人までもが大ダメージを受けて、各々胸を抑えたり、顔を覆ったりしている。
「うわ~!俺らに対する当てつけがひでぇ。」
「これだから恋人持ちは。」
「あーいいなぁ~!今夜は乱太郎と一緒にあんなことやこんなことをするんでしょ~!」
「まあまあ、落ち着きなって。」
 大ダメージを受けていながらもほかのメンバーを宥める雷蔵だったが抑えられず、三郎以外の勘右衛門、八左ヱ門でさえも兵助に文句を零した。
 でもそれでひるむことがないのが兵助で、そんなキャンキャンと子犬のように吠える三人に兵助はもう講義が始まるから早く席に着いたほうがいいよ。とだけ言ってまた講義の準備をし始めた。兵助の変わらぬ平常運転に雷蔵は苦笑いを零し、他の三人はため息を零しながら兵助に言われるがまま席に着いて講義の準備をし始めたのだった。
 五人の会話の中に出てきた乱太郎というのは大川大学の一年生である兵助の恋人の名前だ。兵助と言えば、豆腐を愛するがあまりほかのことに無頓着でこうした行事ごとにも流行りにもいろんなことに対して疎いため、誰もが兵助に恋人ができるなんて思わず恋人ができたといわれた当初は四人全員が驚いた。まさか、豆腐にしか興味のない人間に恋人ができるなんて。と。
 しかも話を聞いてみれば、兵助の恋人は四人誰もが知っている後輩の猪名寺乱太郎で驚きの連続だったのだ。乱太郎と付き合ってからの兵助はもうそれは毎日浮かれたような顔をしており、同棲をし始めてからはもっと顔が浮かれていて三郎はいつも血涙を流しているという。
 今日だってあの様子だとハロウィン当日に乱太郎と楽しむつもりでいることは丸わかりだった。だってあの顔、もう浮かれているのが丸わかりだ。ああ、俺だって恋人欲しいなあ……。と三人の心の声が共鳴する中、兵助は今日の乱太郎と家でやるハロウィンパーティーに胸を踊らせていた。
「ただいま。」
 あれから講義を受けつつ、三郎たちのやっかみを受けながらも大学を後にして帰宅した兵助はるんるんと胸を躍らせながらドアノブに手をかけドアを開いていた。帰り道にこうなったらお前の家に押しかけてやる!と三郎や勘右衛門たちが突撃してきそうになったのだが、雷蔵の助けもあって上手く躱してこうして何事もなく帰宅したのだ。
 ドアを開けると既に夕食を作っているのか家全体にいい匂いが漂っており、兵助のお腹がぐぅと鳴った。今回のご飯も美味しいんだろうな。と思いながら靴を揃えて上がろうとした兵助の後ろから、スリッパの音を鳴らしながらお、おかえりなさい。と兵助が愛してやまない乱太郎の声が聞こえた。
「ただい…………??」
 兵助がいつものようにただいまのハグをしようとして振り返ると、病院のナース服を着て真っ赤な顔をさせている乱太郎が兵助の前に立っていた。真っ白で膝上くらいのスカート丈を着て、ナースキャップを被り、終いには白いスパッツも履いており、首元には聴診器まで掛けているではないか。
 どこからどう見ても完璧すぎるナース服姿の乱太郎に兵助は目を見開いてぽかんと口を開けたまま硬直してしまった。
「へ……へいすけさん……?あの……部屋に……入らないんですか……?」
 真っ赤な顔で何も言わない兵助を不安に思ったのか、乱太郎は恐る恐る兵助に声をかけてみた。すると硬直していた兵助はやっと動き出すとぎゅうっと抱き締めて乱太郎の肩に頭を乗せた。
 ぎゅうぎゅうと力強く抱き締めてくる兵助に乱太郎は何がなんだかわからずにいきなりどうしたんですかぁ……!?と慌てふためいた。そんな乱太郎の頭にキスを落とし、そのまま髪の毛に顔を埋めた。
 息を吸うと自分と同じ乱太郎が愛用しているシャンプーの匂いが鼻腔を擽る。その匂いを堪能しながら兵助は小さな声で呟いた。
かわいい、かわいいけど、俺の事どうしたいの……
 もう我慢できないんだけど……。と熱の籠った吐息混じりの声を耳元で囁くと兵助の腕の中で乱太郎はビクッと肩を跳ねさせていた。
 だが、そんな兵助の熱に充てられた乱太郎は自分よりも大きな背中に細い腕を回して、照れくさそうにえへへ、兵助さんが喜ぶかなあって思ってどうですか?似合ってます……?とはにかむように笑い、首を傾げながら兵助の身体をギュッと抱き締めた。
 そんな乱太郎の思わぬ不意打ちの攻撃に兵助は固まった。な、なんだこの可愛い生き物は……!?と内心荒ぶりながらも表に出すことなくギュッと抱き締める力を強くすると、もう……兵助さん痛いですよぉ。と乱太郎が声を上げたので慌てて力を緩めた。
「ああ……ごめん……つい……。」
「もう……そんなに私の格好すきなんですか?」
 乱太郎は兵助の腕の中から顔を出すとニコニコしながら尋ねてきた。その顔はとても楽しそうで悪戯好きな猫のような顔だ。普段はそんな顔を見せることはないが、こういう時だけは無意識のうちに兵助を煽るような言葉が出てしまうらしい。
……うん、好き。すごく好きだよ。」
 はやく、お前を食べちゃいたいくらいにね。と兵助は素直に答えると乱太郎の頬に触れるだけのキスをする。すると今度は乱太郎が兵助の唇に触れるだけのキスをした。唇が離れていったあと、乱太郎は兵助を見つめながら口を開く。
「ね、兵助さん。兵助さんにも衣装用意したんですよ。」
お、俺にも……?」
「はい。だから着替えてくださいね。」
 そんなの聞いてないぞ……?と言いたげな兵助の手を引っ張って寝室にやってきた乱太郎はそのまま兵助に紙袋を渡して、着替えたら入るんで言ってください。と違う部屋へと行ってしまった。
 とりあえず紙袋から衣装を取り出して、着て恋人の名前を呼ぶと、寝室のドアが開いてそのまま乱太郎が入ってきた。乱太郎に渡された紙袋に入っていたのは患者服で入ってきた乱太郎にそのままベットへと座らされる。次いで乱太郎は何かを手に持ちながら兵助に近付くとベッドに足をあげてそのまま跨った。
「らんた……んぐ!?」
「はい、おくすりの時間ですよ〜。」
 兵助の上に跨った乱太郎は兵助の唇に指を入れて薬と称して飴を押し込んだ。突然のことに兵助は驚きつつも飴を舌で受け止めると乱太郎はにっこりと笑みを浮かべる。
 兵助の舌が絡みついてくるので乱太郎は指を離さずに彼が飴を舐め切るまで待つことにした。しばらくすると満足したのか兵助は乱太郎の指を離して、口元についた唾液を手の甲で拭うと同時に口内に入っていた飴を噛み砕くとそのままごくりと飲み込んでしまう。それを見届けた乱太郎は兵助の唇にまた触れるだけのキスを落とすと嬉しそうに微笑んだ。
「お薬も飲めたみたいですし、次は……。」
 乱太郎はゆっくりと兵助に体重を預けて倒れ込むようにベッドへと沈んでいく。そして兵助の上に乗ったまま見上げるようにして微笑んだ。その瞳には情欲の色が宿っているように見えて兵助は思わずゴクリと喉を鳴らす。
 目の前にいる存在はまるで自分を早く襲ってくれ。と誘惑する娼婦のようで兵助は耐えきれず乱太郎に手を伸ばした。
我慢の限界だ……。」
 先程まで乱太郎が兵助を見下ろしていた景色は一変し、今度は獣のような瞳をした兵助が乱太郎を見下ろしていた。兵助の顔はまるで獲物を見つけた肉食動物のようでその表情に乱太郎はゾクゾクしながらも嬉しそうに微笑んだ。
診察まだ続いてるのに、せっかちだなぁ。」
乱太郎が煽るから悪いんだよ。」
 乱太郎に覆い被さる兵助に乱太郎は悪戯っぽく笑って言った。乱太郎にいじわるをされた兵助はそんな彼にに負けじと言い返して何も言われないように再び唇を重ねた。
俺のこの昂った熱を収めてくれるんだよね?」
 ね、先生?と兵助に耳元で囁かれた乱太郎は先程のキスでとろとろになった思考のまま、はぁい。と兵助を見つめながら答えたのだった。