三毛田
2025-11-02 22:33:24
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64 064. ゆるやかに抱いた胸の中

64日目
君の胸は、すごく落ち着く

「丹恒」
「どうし……ひどい顔だ。三月に見つからない内に、部屋に戻れ」
 それは嫌だと首を振ると、俺の頭にフードを被せ。
 手を引いてから、ラウンジを通り抜ける。
 たどり着いたのは、結局俺の部屋。
「なんで」
 フードを脱ぎながら、不満を隠さず告げると。
「一人が嫌だということだろう? それならば、俺がこちらに来ればいい」
「アーカイブの整理中だったんじゃ」
「今日の作業は、そこまで急ぎではない。それに」
「それに?」
「お前を、一人にできなかった」
 そんな事言われたら、惚れるって。
 普段ならば、元気であれば、そんな軽口を叩いていたのに。
 簡単に頭も心も切り替えられなくて、くしゃっと不細工な笑い方しか出来ない。
「ほら」
 ベッドに座らせられ、目の前に来た丹恒のお腹に抱き着く。
「っふぅ……
 涙が止まらず、でも、声を出さないようにぎゅっと顔を埋める。
……
 一瞬躊躇いがある動き。それから、俺の頭に手を添えて。ゆっくりと上から舌にその手が動く。
「我慢したら、辛くなる。だから、好きなだけ泣け。俺は、気にしない」
 そうやって、こういう時だけ優しくするんだよ。
 文句を言いたいけれど、口から出るのは泣きわめくのを我慢してる、くぐもった声のみ。
……ごめん」
「いや。お前が気持ちを発散できたのであればそれで構わない」
「お風呂入る?」
「温い湯であれば」
「先に入ってて。あ、服はランドリーに入れて置いて。俺が入る時に回すから」
「そうか。それなら、入らせてもらおう」
 丹恒は上着を脱ぎつつ、浴室へと向かう。
 黒いシャツだから、鼻水とか涙で濡れた跡がよくわかる。
 情けないと思ったけれど、彼の胸に緩やかに抱かれていなかったら、近いうちに壊れていたかもしれない。
 そんな予感がする。
「先に湯をもらっている」
「いいよ」
 ランドリーに脱いだ服を投げ入れ、シャワーを浴びて一旦リセット。
「あまり目元を擦るな。赤くなるぞ」
「はーい」
 顔は泡立てた洗顔フォームで、優しく丁寧に。
 泡を荒流してからチラッと丹恒を見ると、ご機嫌そうにお風呂に浸かっている。
 なんでわかるのかって? 正直に言ってしまうと、勘。
 でも、機嫌が悪かったりしたら、あの状態の俺に対して冷たく接しただろう。
 俺の提案だって、一蹴したはず。まあ、いうなれば俺の希望的観測というのが正しい。
「どうした」
 体を反転させ、浴槽の縁に上半身を預けてこちらを見上げ。
 その姿に、ちょっとドキッとした。
 いや、だってさ。
 色っぽいじゃん。