Hizuki
2025-11-02 22:03:58
1955文字
Public あんスタ[零薫他]
 

真ん中はどこ?

【あんスタ】零薫。真ん中バースデーについて悩む零の話。真ん中とは言うものの。



「どうしたの零くん?何かトラブル?」

不意にかけられた声に伏せていた目を開ける。座っていたのはESのレスティングルームの端の席、そのテーブルの向かい側に手を突いた薫くんがこちらを覗き込んでいた。

「トラブルではないんじゃけど、少し悩んでいることがあってのう」
「俺でよければ聞こっか?」

仕事とは全く関係のないことで、プライベートのほんの些細なことだ。もし答えが出なかったとしても大した問題にはならないこと。胸の前で組んでいた腕を解き、気遣うように尋ねてくれた薫くんを見上げる。

むしろこれに関しては、薫くんが一番適任かもしれぬ」
「聞かせてくれる?」

これは薫くんに関係することでもある。顎に手を当ててそう零すと、薫くんはそのまま向かいの席に腰を下ろした。

「ありがとう。薫くんは『真ん中バースデー』を知っておるかえ?」
真ん中バースデー?二人の誕生日の真ん中の日ってやつ?」

薫くんが知らないとは思っていなかったけれど、一応の確認をしておく。これが今の悩みの大前提だったからだ。もちろん薫くんは知っていて、その単語の意味をぴったりと言い当てた。

「うむ、それじゃ。二つの日付が開いておるから、真ん中という日付が成立するわけじゃよ」
「うん、そうだね」
「じゃが、我輩と薫くんの場合はどうなるのか、と思ってのう」

悩みの内容を打ち明けると、薫くんも納得したように頷いた。

確かにそうかも。俺達一日違いだもんね」
「じゃろう?」

自身の誕生日は11月2日、そして薫くんの誕生日は11月3日。連続した日付である以上、真ん中の日付が存在しないのだ。

「そうなると、もう時間しかないんじゃない?」
「ふむ」
「2日と3日の間だから、2日のお昼の12時?」
「やはりそうなるかのう」

2日になってからの半日後、そして3日になる半日前の時間。薫くんから導き出された結論も、自分が考えていたものと同じものだった。

「だろうね。でも、いきなりどうしたの?」

その単語が自身から出たことが気になるのか、薫くんは不思議そうに軽く首を傾げてみせた。

「部屋で白鳥くんがそんな話をしておったのじゃよ」
「なるほどね~」

どうということはない、寮の部屋での雑談で白鳥くんから聞いただけの話だった。友人同士や親しい者同士で二人の誕生日の真ん中の日を祝うこともある、と。

「それに、薫くんも3日は仕事じゃろう?少し早くなってしまうが、お祝いがしたいんじゃよ」

そして、真ん中のタイミングが知りたい一番の理由がこれだった。仕事があるのはもちろんありがたいことだと分かってはいる。自分も仕事が入っていて、薫くんの誕生日の当日に祝うことはできそうにない。そこに聞こえてきたのが真ん中バースデーの話だった。

「零くん
「ちゃんとしたお祝いはまた後日にさせておくれ」

もちろん、それだけで終わらせるつもりはない。薫くんの喜んだ顔が見たい。まだどうするかは考えている途中だけれど、しっかりと時間を取ってお祝いをしたいと思っている。薫くんの大切な日なのだから。

「ありがとう、零くん。楽しみにしてる」
「うむ、そうしておくれ」

ふっと薫くんが表情を緩めた。仕事では見せない、きっと自分しか知らない柔らかい笑顔だ。少し年齢よりも幼くも見えるその表情は本当に愛しい。

「零くんこそ自分が誕生日だってこと、忘れないでよね?俺も準備してくるからさ」

びしっと指をこちらに向けて笑う。もし忘れていたとしても周囲が気付かせてくれるだろうし、きっと日付が変わるタイミングに合わせて薫くんが連絡をくれる。どうしたって自分の誕生日を意識から外せることはない。

「ふふ、ありがとう。我輩も楽しみにしておるよ」

薫くんのことだから、自身を喜ばせてくれることは約束されているようなものだ。

「さ~て、零くんの悩みも解決したみたいだし、行こうかな」

嬉しそうにそう言った薫くんがすっと立ち上がる。共有されていたスケジュールでは、確かこの後には打ち合わせが入っていたはずだ。またね、とひらりと手を振った薫くんを見送る。目の前にあった悩みは解決したけれど、今度は別の悩みを抱えることになる。
そう、薫くんのお祝いだ。
ここから先は薫くんには明かせないから、自分一人でどうにかするしかない。とはいえ、今ここで座っていてもいい案が浮かびそうな気配もない。幸いなことに次の仕事までは時間が空いているし、取っ掛かりを探しに少し街中を歩いてみるのもいいかもしれない。そう決めると、自身も席を立ち、レスティングルームを後にした。

今年の11月2日は二人分のお祝いをしよう。
二人の誕生日の真ん中の時に。