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望月 鏡翠
2025-11-02 21:23:06
962文字
Public
日課
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#1891 不思議なトカゲ
#毎日最低800文字のSSを書く
器が二つ。同行者がいるんだ。
いつも一人で来て一人で帰る侘助に連れがいる。一体誰なんだろう。侘助に限らず、店に来る旅人はいつも一人だ。待ち合わせをしないというより、できないらしい。
たまに店にいるお客同士で喧嘩をしたり意気投合したりしているけれど、彼はそういう交流もする方じゃない。
一体どんな人と気があうんだろう。
ワクワクしながら冷酒を用意する。そのあと厨房から出てきた生肉も。トカゲちゃんは見かけよりもたくさん食べるらしい。
侘助のお酒に合わせたお通しよりも、量が多かった。
お酒の器を持つ手が、机に向かって伸びている。
その袖から、トカゲが顔を出して、机の縁に前足をかけていた。
「あ、悪いトカゲちゃんだ」
手を伸ばすと威嚇して引っ込む。
「やめてほしい」
「やめなさい。お客さんだよ」
流石にマスターに怒られてしまった。
侘助は怒らないけど、笑いもしない。
温かいものはあまり食べない。お肉も野菜もよく食べるけど、梅雨をあんまりつけない蕎麦が好き。あとはお酒も。
何度か店に来ているけれど、知っていることはそのくらい。
態度が一定なのは怖くないから助かるけど、怒ったり笑ったりすることあるんだろうか。
マスターがお客さんに、と言って小さなクッションを渡してくる。それをそのまま侘助のところに持って行った。
テーブルの上に設置すると、その上にトカゲが座った。というより侘助が片手で鷲掴みにして、そこにぎゅっと押し付けた。
みるからに不満そうだけど、逃げられないから諦めたらしい。
トカゲがクッションの上に大人しく座ると、侘助は二つの器に酒を注ぐと片方をトカゲの方に置いた。
トカゲってお酒飲んでいいんだ。ダメでも動物虐待だなんて言わないけど。
話を聞いてみたい。でも侘助より先にマスターに怒られて減給されそうだから、やめておいた。
肉食で酒を飲むトカゲなんて珍しい!
トカゲは水だと思って間違って口に入れたという風ではなく、味を確かめた上で、ごくごくとそれを飲み干していた。
旅をしていると、ああいう珍しい生き物も見つけられるんだ。名前はなんて言うのか、後で教えてもらおう。
近づくと威嚇されてしまうから、料理とお酒を運んだ後は、遠巻きに観察するしかできなかった。
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