ortensia
2025-11-02 13:07:15
5376文字
Public 傭リ
 

魔女の後継?ようへいと魔女狩りっぱー

ファンタジー。魔法の力で?傭のが強いので注意。人外リ。リが傭の賞金首?を狙ってる。リが魔女狩り組織に従順?(リにとっては当局が良い子なのかもしれない?)

傭兵(魔女?と呼ばれる存在。)
リッパー(意思があるらしい無機物。魂狩りを好み、目的を同じくする当局の指示に一応従っている。)
納棺師(死なないことは悪の理念に基づき、魂は狩って絶対納棺するマン。)
庭師(原初の魔女。)

 大鎌を振り回しその首を刎ねることを渇望する。否、現実にモノとするのだ、必ず。しかし向こうも黙ってやられてはくれない。
 避けられた先で爪を振り下ろす。しかし掠っただけで血の一滴ですら味わうことは叶わなかった。
 爪の先に引っかかった布が風で飛んでゆく。それにより露わになった相手のかんばせから霧を孕んだ深緑のような双眼が覗く。
 それが喜びに暗く輝くが、朝日が登ったのは男のその後ろだ。
「やっぱり強いね、おまえ。」
 笑う逆光の背後から差す光が雲に影を作り、草原の細い葉一枚一枚を照らす。あゝ、こんな景色にこそ、おまえの亡骸をこさえたかったのに。
 老獪な笑みを乗せた顔はまだ年若い。しかし実際にこの小男は数百年この姿のままだ。それこそが罪。当局に狙われる要因。わたしの狩の獲物だという証。魔女と呼ばれる罪状を貼られた罪人。
 当局が定めた三大罪のいずれかに当て嵌まる者は、そう称される。第三罪に長命、第二罪に不死、そして最も罪が重いとされる第一罪の蘇生。
 この男の罪は長命だが、老いない上、自身の護身力、いわば戦闘力が高いため、実質不死である。魔女の中でも最強と言われるこの相手が、わたしが当局から請け持った獲物だ。
 全てはたった一人の娘が、父親を案山子を媒介に蘇生させてしまったことから始まった。魔女という呼び名も、彼女が女性だったからそう言われているだけで、性別は問わない、有無すらも。
 そして娘に感化された愚か者共はそれに追随し生の理を覆す研究に没頭し始めた。
 くだらない。
 人が美しく在るためにはしぬべきだ。永遠が欲しいのなら死こそそれに違いあるまい。それは芸術なのだから。
 だからこの男は必ず狩るのだ、この、わたしが!
「おまえが会いに来てくれるのは嬉しいけど、なんでかな、いつもこうしてじゃれあうんじゃなしに、たまにはもう少しゆったり過ごさないか?おまえは狩人の者だけど、仕組みは不死じゃないか。」
 仲良くしよう。そう言って浮かべた笑みが気に入らない。
「それは心外ですね。わたしは意思を持っただけの霧、ここに生はありません。」
 そもそも生きていないのだから、魔女には成り得ないのだ。生きたいとおもったことは無い。
 何故なら、目の前にあるそれを狩り獲れば味わえるのだから、充分だ。
「だからおまえをころします。」
 火点けちゃったかな。肩を竦めた男は、柔らかに目を細めて。
「なら、もうちょっと遊ぼうか。」
 その目と同じくらい柔らかい日差しのもと、早く鮮赤を散らした景色が見てみたい!きっとその目の色に映える筈だから。

 大きな手で獲物を振り回し、月を斬るようだ。沈んだ太陽から自分だけが光を浴びたそれは天高く有り、決して届きやしないと言うのに。
 月の、その高慢さが好きだった。おれとは違う。
「余所見だなんて、舐められたものですね。」「おれは今楽しい時間を一身に浴びている。それを味わって居るんだ。」
 正しく舐めて居ると言うわけだ。どうやら余計相手を怒らせてしまったようだ。だけど、ひやりとした空気は心地良い。
 おれはいつもこいつを怒らせてしまっているが、おれはいつも楽しませて貰って居る。あゝ、楽しいなぁ。
 がつんと振り下ろされた大鎌に削られた礫が飛び散る。眼前の麗しい役者を魅せるための舞台演出のようだ。次はどの舞台に連れて来よう?どこだってこいつは、おれの首を獲りに来てくれる。
「チ。そんなに余裕綽々なら、魔女として生きるのはさぞ面白可笑しいでしょうね。」
 楽しいですか?ああ、楽しいさ。けれどそれは質問とはまた別の意味だ。いや、おれが魔女だからこいつは追って来てくれるのだから、魔女である自分が楽しいというのは、あながち間違っちゃいないのか。
……どうして、魔女になんか成ったんですか?」太陽の光で生まれる月の光、更にその光で生まれる地上の反射光を受ける目の前の霧が、本当に美しいと思っていた矢先、そんなことを訊かれた。
「月がすきでな。」
「は?」
「月は、何年も何年も在るものだろう?それを見ていたいと思うと、おれも何年も何年も生き続ける必要がある。」
 訊いて来た相手はぽかんとしたような間を開けた後、戸惑うように。
……つまり、繰り返し月見したさに、長命の魔女に成った。と?」
「ああ。」
 途端に混乱が爆発したようにひとりで慌て出す男。魔女の企みに当て嵌まるとは思えないからこそ訊いたのに!?いやだからこそそれが理由だとしっくり来るのか!?だとか盛り上がっている。おいおい、おれが寂しいじゃないか。
「けど冷兵器もすきだな。」
 だから。
「おまえのこともすきだよ。」
 だいすき。
「ハァ?刃物が大きいからって、使い手も一緒に一括りにするのは大雑把過ぎませんか!?」
「獲物も上手く扱えば何年も長持ちするからな。」
「またその理由!」
 相手は間違いなく獲物の扱いが上手い部類入る。魅せ方も上手い。凄く綺麗だ。これからもずっとそう、変わらないだろう。ならば。
「やっぱりずっと見ていたいなぁ。」
 ぼんやりとまた、振り上げられた刃が月を斬り裂くのを目で追う。振り下ろされる拍子に避けるが、綺麗な軌道から目が離せない。
「ったく、」
 それを生み出す男は、何度でもその美しい軌道をこちらに向けてくれる。追いかけてくれる。
 それは天高く在る月が、何処へ行っても照らしてくれるのに似ていて。

 この相手は比較的新しい魔女だ。魔女弾圧の情勢に変わってから、好き好んでその仲間入りを望んだ可笑しな男。
 それから何百年も経って今尚、そこに在る。
「おれが魔女になりたかった理由なんて、伝説の剣を持ってみたいと思うクソガキと一緒だよ。」
 そう言って月夜を見上げ笑う顔はこちらを見ない。その顔は生意気な調子で、どうせクソガキだった頃から変わらないのだろう?だったら。
「それで?魔女になって何か変わりましたか?」
 問えば、相手は漸くこちらを見て、にやりと笑った。
「おまえが追い掛けてくれるようになった。」
 生意気な!
 原初の魔女、かつての娘も、こんな純粋な目を持つ者だったのだろうか。

 月を背に立った男がこちらを見ている。ここは宙空だが。その目はそれでも、月よりも明るく見えた。
「おまえこそ、どうしておれを追いかけてくれるんだ?」
 いつものような薄ら笑いのひょうひょうとした声ではない。しかし逆光の口元が、笑っていたかは分からない。いっそどうでも良いと思った。
「そんなの、魔女だろうとなんだろうと、おまえには間違いなく魂があるからです。」
 大した理由じゃない。当たり前のことだ。
 けれどその目が大きく月のように丸くなり、老獪さが抜けいとけなくなる。それが雫が一つ落ちる間に、笑い声をこだまさせる。
「あはは!そうだ、人を超えたと言われようが、人を外れた覚えはない!」
 魔女になれど、おれはおれのままだ。
 大きな笑い声、大きな叫び声で、高らかにそう言った。
 魔女だ。今宵も魔女の声がする。

 摩天楼もかくやというそこは、塔であった。土に還り天に昇る者達に最も近いと言われるそこは、神の門の意で呼ばれている。
「よ。」
 その重い名が示すように当然決して簡単に立ち入れるわけが無い。しかも最上階だ。
「前に会ったのは10年余り前か?」
 だがその部屋の主は、約束も無く現れ、なんでもないような態度を取る相手に、口当て越しに溜め息しか出せない。
……ここがどこか分かっているの?」
「どこって、お前の城だろう?」
 そうして城主と称された男は、更に大きな溜め息をついて、進入者を見やる。
「貴方を殺すための城だ。」
「なんだ、合ってるじゃないか。」
 進入者、男達が魔女と呼ぶ相手は、あっけらかんとそう言った。男は、魔女狩り組織筆頭は、魔女に言った。
「貴方には霧の者を付けている筈だ。」
「おう。ありがとな。」
……。」
 礼を言われるのは筋違いである。何せ霧の者には、この目の前の魔女を殺させるために、筆頭自ら説得して連れて来たのだから。
「良くがんばってくれてるぞ。」
 あの異形でも、形だけは人だと言える魔女を狩り取るに至っていない。
 経験の差であろう。なんと言ってもこの魔女は、何千もの戦いに身を投じて来たのだから。場数こそ雲泥の差だが、霧の異形には、命を死に至らしめ、芸術という名の救済を施せるだけの実力が、確かに有ったのだ。
 筆頭は眉間に皺を寄せた。見えないところでは口引き結んでいた。そこへ。
「あいつを外すなよ。」
 ぽつりと落ちた言葉。否。
「あいつ以外が来たら、殺しちゃうからな。」
 それは警告だった。
 筆頭は、いつでも男に向けられるように後ろ手に取り出していた剣を、怪しく赤く光るのを無視して、片付けた。
「あいつ相手に手加減してなかった分、どうなるか分からんぞ。」
 歴戦の男がそんなことを言う。嘘にしろ本当にしろ、担当魔女狩りを変える線は、これで無くなった。
 その魔女は争いを好んではいたが、それは純粋な戦闘のみであるに等しく、今迄は無益な殺生は避けていたのだ。それが。
……なぜ?」
 魔女は笑った。
「月夜も変わらないようで、その実同じ空は二度は無い。そういうことだな。」
……?」
 男の言っていることは分からなかったが、魔女が魔女たる執着が、この男に一つ増えた、ということなのだろう。
 ならばなんとしても霧の異形に、この魔女を狩って貰わなければならない。
 全ての命は永遠の死を以ってして、本当の自由へと救済されるのだ。それこそが魔女狩りの意義であり、この神の門が存在する意味である。それを考えると、筆頭は魔女の存在に唸らざるを得ない。そんなものは居なくなれば良い、そもそも居てはならないのだ。
「良いでしょう。」
 去り逝く者がなんのしがらみもなく、ゆくべきところへといけるようにするのも、重要なことだった。
「彼に貴方を送らせます。」
 必ず。満足そうににやりと笑った。そうだ、魔女なんて言う理に逆らった存在は、みんな早く納棺しなければ、ただの人として。
「じゃあそういうことで。」
 今後ともご贔屓に、ってな。そう巫山戯たことを言って男は徐に窓に手をかけた。しかし相手は魔女、心配など湧かない。思った通りそこから飛び降りた男を見送ることもせず扉に向かった筆頭はそれを開け、今度こそまた溜め息をはいた。
 廊下には倒れた組員。男が滞在していた時間は極僅かだ。定期巡回や交代の時間に満たない。筆頭は、男の侵入経路で、自分ではそうと知らぬまま気絶させられたであろう者達のために、医療班に連絡を取った。
 そして今更意味が無いと思いながらも、今は的外れのどこを捜索しているのやら、噂の魔女狩りにも連絡を入れた。
 この者も、負けっ放しで任を外されるなど、幾ら筆頭の立場である者が相手でも、関係なく背くだろう。本来はそういう存在なのだから。会話出来る自然物のようなものだ。負けず嫌いの充分なきっかけになったようなので、今後は放っておいても、それこそなんのしがらみも無く、霧はあの男を追うだろう。
 そして男の話をすると、異形は静謐な霧の印象をそっくり覆すような叫び声を上げた。魔女の笑い声が聞こえた気がした。

 魔女狩り組織なんてもの、当然魔女が生まれる以前は存在しない。ただの魂狩りの一端から、やむを得ず派生したものだ。
 狩った魂を正しく納棺し、正しく死の門を潜らせる。その正しい儀式を遂行するために、いつ迄も死なない魔女の魂は、さっさと狩るに限る。でないと、いつ迄も死なない。当局はそれを、世界の淀みと捉えるのだ。だから大罪なのである。
「だから、あゝだから早く、わたしはあの男を切り裂く感触のまま鮮血を浴びて、その魂を狩らねばならない!」
 そうは言うものの、それが組織ではなく自我を持って欲望へ忠実であると、それはまだ気付かない。抉り取りたいと弧を描く爪を動かすことばかり、意識が向かうから。

「一般の軍勢相手に武力で語り合うのにも飽きた。」
 何十年も明け暮れておいて飽きたって言っちゃったよこの魔女。
「あ、おまえは別な?」
 まあ一般人ではないし、そもそも軍勢は一般人なのだろうか?
「だからおれも一般の魔女のように、何か頭脳派的な研究をしようと思ったんだよ。」
 一般の魔女ってなに?
「それで作ってみたんだ。亜空間。」
「亜空間!?」
 魔女の話など聞きたくもないので、会話をする気がないという意思表示のため黙っていた口が、遂に開いてしまった。それにまんまと気を良くした魔女は、にこにことご機嫌だ。腹立つ。
「そう、亜空間。勿論誰もいない……一緒に入ろ?」
「絶対ヤです!!!」
 一緒にお風呂入ろ?みたいな軽さで言うな!お風呂も一緒に入らないけど!


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。