ugatuno
2025-11-01 22:52:49
1228文字
Public 二次小説
 

その心臓は世界のかたち 7.5話


 ──朝。
 カーテンの隙間から光が差すジンペイの部屋。
 目覚ましは何度も鳴ったまま。止められた気配がない。
 ベッドの上、ジンペイは布団を抱きしめるようにして丸くなっていた。
 呼吸は浅く、額に浮かぶ汗を手の甲でぬぐう。
 「………………っ」
 胸の奥、深い場所が──また、重く痛む。
 掴まれるような苦しさ。
 呼吸を深くすると、何かに引っ張られるような感覚がある。
 それでも、どうにか起きないといけない。朝は残酷だ。
 ジンペイは、なんとか片目を開いた。
 すると──
 「おはよう、ジンペイ君」
 部屋の中に、ブルポンがいた。
 「……うおっ、まって、お前いつの間に……!?」
 「ちょっと強引に“おじゃま”しちゃったよ。
 でも、入って正解だったみたいだね」
 ブルポンの手には、小さなカップ。
 湯気の立つ白湯が、ほのかに香っていた。
 「これ、飲める?」
 ……体が飲み物を欲していることを、自分が一番よく分かっていた。
 「ありがと。……マジでタイミングいいな」
 「ふふ。僕は君の心に近いから、体調もなんとなく分かるんだ」
 ブルポンは、ふわっと微笑む。
 「ねぇ、ジンペイ君。……僕、変身するとき、君のこと全部感じてるよ」
 「…………
 「さっきみたいに胸の奥が重くなってるときも、変身中は特に分かりやすいんだ。
 だから……無理してるの、バレバレだよ?」
 ジンペイは、目をそらした。
 いつもの茶化しも出てこない。
 「……しょうがないだろ。……誰にも言いたくねーんだよ、こういうの」
 「言いたくないのは、分かるよ。
 でも君を動かしてる力が、君自身を苦しめてるのなら……
 ブルポンは、白湯の入ったカップを、ジンペイの手にそっと押しつけた。
 「……君のヒーローって、そんなに孤独じゃないでしょ?」
 ジンペイは、静かに白湯を口に運ぶ。
 あたたかい。けど、喉を通っていく感触が妙にリアルで──
 胸の中に、ブルポンの声がもう一度響く。
 「……僕たちは、君の武器じゃないよ。
 君がひとりで背負うための力じゃ、ない。」
 「…………
 ジンペイは、ぽつりとつぶやいた。
 「……ありがとな、ブルポン。お前が一番厄介なの、わかるわ」
 「うん。自覚はあるってことだね」
 ブルポンはふっと笑った。
 ジンペイは、ようやく布団を脱いで、上体を起こした。
 「……さて。行くか、Y学園」
 「……えっ、今日休むんじゃないの?」
 「今日、プリント配られる日って言ってたし。
 ……ちゃんと平気な顔で行かなきゃな」
 「…………
 ブルポンは何も言わず、カップを片づけに窓際へ向かった。
 「……ねぇ、ジンペイ君」
 「ん?」
 「……平気な顔も、そろそろ限界かもね」
 その言葉に、ジンペイは小さく笑った。
 「……わかってるよ。……けど、ギリギリまでヒーローでいたいんだ。
 お前らと、一緒にいるためにもさ」